今国会断念はガス抜きに過ぎないと見抜く
検察庁法改正案の今国会での成立が見送られた。
最大の背景は各社世論調査結果だ。
内閣支持率、不支持率は
朝日新聞調査が支持率33%、不支持率47%、
NHK調査が支持率37%、不支持率45%
検察庁法改正案については、
朝日新聞が賛成15%、反対64%、
NHKが賛成17%、反対62%
だった。
採決を強行して改定案を可決、成立させれば、支持率はさらに急落する。
次の衆院総選挙は来年秋までに実施される。
選挙への影響を考慮せざるを得なくなった。
民意が政治を動かす側面があることは証明された。
このことを銘記することが重要だ。
しかし、これを「ガス抜き」としてはならない。
今回問題の第一の本質は、黒川弘務氏を違法な勤務延長によって強引に検事総長に引き上げようとする安倍内閣の暴走だ。
これが具体的かつ喫緊の最重要問題なのだ
法案審議は先送りされたが、この問題は解消されていない。
安倍内閣は本年1月に黒川弘務氏の勤務延長を閣議決定した。
検察庁法第22条は
検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する
と定めている。
黒川氏は2月8日に63歳になり、定年退官するはずだった。
ところが、安倍内閣は1月に黒川氏の勤務期間を8月7日まで延長した。
安倍内閣は特例による勤務延長を認めている国家公務員法の規定を用いた。
しかし、国家公務員法と検察庁法とは一般法と特別法の関係にある。
「特別法は一般法に優先する」との法理があり、検察官には検察庁法が優先適用される。
1981年4月28日の衆議院内閣委員会において、人事院事務総局斧任用局長が、
「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」
と答弁している。
2月10日の衆議院予算委員会で山尾志桜里議員がこの事実を明らかにした上で、
「検察官に国家公務員法を適用して定年延長を認めるのは違法だ」
と指摘した。
人事院の松尾恵美子給与局長は2月12日の衆院予算委員会で1981年の人事院幹部が示した法解釈を「現在まで引き継いでいる」と答弁した。
ところが、安倍首相は2月13日の衆院本会議で、
「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」
との主旨の答弁を示した。
安倍内閣による勤務延長の閣議決定は1月に行われており、2月12日の松尾局長の答弁と矛盾することになる。
この点について松尾局長は2月19日の衆院予算委員会で、
「1月22日に法務省から相談があるまでは引き継いでいたと解していた。言い間違えた。(法解釈変更を)隠すつもりはなかった。」
と釈明した。
山尾議員は、松尾氏が12日の段階で法解釈の変更を知っていれば「そのように答弁するはずだ」と追及。
「その時点で解釈変更はなかった。無理筋の人事を通すために、後付けの解釈変更をするから、答弁修正になった。」
と指摘した。
実際に解釈変更の決裁文書は存在しない。
安倍内閣は「口頭」で解釈変更を決裁したとしている。
次から次にウソを重ねて、まったく無理な説明を押し通す。
真実は、安倍内閣による黒川氏の勤務延長は違法なものである、ということになるはずだ。
最重要の論点は黒川氏の違法な検事総長就任を認めてはならないということ。
国権の最高機関である国会は、この点について有効な対応を示す責務を負っている。
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