政策対応初期に利下げ余地使い果たしたFRB
米国のFRBが緊急利下げを実施した。
米国の政策金利であるFFレートは、FRB議長にパウエル副議長が就任した2018年1月に1.25~2.50%の水準だった。
2018年初、FRB議長がイエレンからパウエルに交代する際、金融市場は先行きを警戒した。
パウエル新議長がトランプ大統領への配慮から必要な金融引き締めを実行しないのではないかとの不安が広がったのだ。
この懸念を払拭するようにパウエル議長が行動した。
就任直後の2月27日の議会証言で、金融引き締めに積極的なスタンスを明示した。
この方針を実際の政策運営で実証するかのように、パウエル議長率いるFRBが3、6、9、12月に利上げを断行した。
FFレートは2.25~2.50%の水準に引き上げられた。
2018年12月のFOMCでは2019年にさらに2度の利上げを実施する見通しが示された。
FRBの利上げ断行に対して、金融市場は金融引き締めの行き過ぎを警戒して株価急落の反応を示した。
この状況を踏まえてパウエル議長は2019年1月4日に、
「金融政策はリスク管理だ。迅速かつ柔軟に政策を見直す用意がある。」
と発言した。
金融政策の方向を引き締めから緩和に転換することが示唆された。
株式市場はパウエル発言を受けて反発に転じた。
ところが昨年5月、トランプ大統領が米中貿易戦争を拡大させる方針を示して株価が反落した。
この流れを転換させたのもパウエル議長だった。
6月4日にパウエル議長が、
「貿易交渉などの問題が米経済の行方に与える影響を注意深く観察し、これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。」
と発言した。
利下げ実施を示唆したのだが、この発言を契機に株価が反発に転じた。
実際にFRBは7月、9月、10月のFOMCで3回連続の利下げを実施した。
FFレートは1.5~1.75%の水準に低下した。
12月のFOMCでは2020年には利下げが実施されない見通しが示された。
ところが、2020年2月末以降、コロナショックで株価が急落し、FRBの方針が急転換した。
FRBは3月3日に電撃的な緊急利下げを決定した。
利下げ幅は0.5%でFFレートは1.0~1.25%に引き下げられた。
しかし、金融市場の反応は限定的だった。
流れを転換させることに失敗したのである。
NYダウは3月12日に21200ドルにまで下落した。
この株価急変を受けてトランプ大統領が3月13日に国家非常事態宣言を発した。
500億ドルの緊急対策が示されたこともあり、NYダウは前日比1985ドル上昇した。
このタイミングで今回の利下げが決定された。
3月15日の日曜日の決定。
異例のタイミングだった。
トランプ大統領の国家非常事態宣言で株価が過去最大の上昇を示したタイミングで思い切った施策を打つことで株価の流れを完全に転換させることが狙われたと思われる。
FFレートの引き下げ幅は1.0%。
FFレートの誘導目標は0.0~0.25%に引き下げられた。
3月17~18日に次のFOMCが予定されており、利下げが実施されることが予想されていた。
FRBがFFレートをゼロ水準にまで引き下げることもあり得ると考えられていた。
しかし、3月15日の日曜日に決定されたことはサプライズである。
ところが、先物市場ではNYダウが1800ドルも下落している。
3月13日の株価上昇がほぼ消滅する株価反落が広がってしまっている。
パウエル議長はトランプ大統領とあうんの呼吸で1%幅の利下げを誘導したと見られる。
政策を市場がどう評価するのか。
判定には数日の日数が必要だが、十分な効果を発揮できないリスクが浮上している。
最大のリスクは、これ以上金利を下げる余地がなくなってしまったこと。
日銀も3月16日に追加金融緩和政策を決定したが、日経平均株価は前日比429円安で取引を終えた。
極めて深刻な状況が広がり始めている。
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