冷静さと叡智をもった日韓関係考察必要不可欠
日本では日韓問題についての冷静で知的な論考が少ないが、この問題を理解する良書が刊行されているから、多くの人がこうした良書を読んで知識と見識を広げることが重要だ。
情緒的な好き嫌いの感情で重要問題を考えるべきでない。
歴史的な見地に立てば、村山談話が明示した認識を日本人が全体として共有するべきである。
村山談話は次のように記述している。
「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」
「私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」
私たちが中国や韓国と接するときに、この認識を共有しておくべきことは極めて重要である。
村山談話を批判する者は存在するが、安倍首相でさえ、村山談話を否定せず、全体として引き継いでいる。
否定していないということは肯定しているということであり、この認識を共有することは是認されるべきことだ。
日韓問題についての良書とは、
『徴用工裁判と日韓請求権協定
: 韓国大法院判決を読み解く』
(現代人文社、本体価格2000円)
https://amzn.to/2mlGZgf
である。
関係資料も網羅されている。
本ブログ、メルマガでは日韓問題を何度も取り上げてきた。
2019年9月21日付ブログ記事
「米中対立・日韓対立のゆくえ」
https://bit.ly/2DVYPfu
メルマガ第2436号記事
「日韓問題経緯を正確に知ることが先決だ」
https://foomii.com/00050
2019年12月7日付ブログ記事
「徴用工裁判と日韓請求権協定の真実を知る重要性」
https://bit.ly/39AitfA
メルマガ第2499号記事
「日韓問題解決を妨げている反知性主義」
韓国も中国も日本の隣国である。
歴史的にも極めて深い交流関係を有する。
もとより、日本の文化・伝統の淵源は大陸より伝来したものが多い。
当然のことながら、民族的にも重なり合う部分を多く有している。
そのなかで、日本が過去に侵略と植民地支配によってアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことは、疑うべくもない歴史の事実である。
これを否定するというなら、まずは村山談話そのものを否定しなければならない。
在韓国日本大使館前の少女像について、日本政府は「韓国政府は約束を守らない」と主張するが、ここでいう「約束」とは2015年12月の日韓外相による合意のことを指すのだろう。
その合意で韓国側が言明したのは、
「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、空間の安寧、威厳の維持といった観点から懸念しているという点を認知し、韓国政府としても可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する」
ことであって、少女像の撤去ではない。
岸田外相発表文書のなかに
「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」
の表現はあるが、このことが具体的に何を指すのかは明確でない。
徴用工裁判での韓国大法院判決を安倍内閣は「国際法違反だ」と主張するが、これは安倍内閣の主張であって、客観的事実ではない。
韓国大法院が国際法に則って判決を示したとしているからだ。
NHKは報道で、安部内閣の「国際法違反だ」の主張しか伝えないが、この報道は客観性を欠いている。
もとより日本政府も元徴用工の人々の個人請求権を否定していない。
1965年の日韓請求権協定は日韓国交正常化に伴い両国間で締結されたもので、両国とそれぞれの国民間で「請求権」の問題を「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と明記している。
しかし、その後に国際人権法の進展が存在している。
国連憲章(人権関連条項)、世界人権宣言、国際人権規約をはじめとする国際人道法が国際的に承認され、重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方に立った裁判所判断が示される事例が世界で多数存在する。
この点を踏まえれば、韓国の大法院判断を国際法違反とは言い切れない。
2020年は日韓問題について冷静で知的な対応が求められる。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
https://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第2521号「2020年日本外交マイナスからの修復」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.comまでお願い申し上げます。
価格:994円 通常配送無料
出版社:詩想社
amazonで詳細を確認する
価格:907円 通常配送無料
出版社:発行:祥伝社
amazonで詳細を確認する
価格:1,620円 通常配送無料
あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)
価格:1,620円 通常配送無料
価格:994円 通常配送無料
出版社:発行詩想社 発売星雲社
amazonで詳細を確認する
価格:1,620円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
価格:1,512円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016)
価格:1,728円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
価格:1,728円 通常配送無料
出版社:星雲社
amazonで詳細を確認する
価格:1,512円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
価格:1,728円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
価格:1,620円 通常配送無料
出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する
価格:1,680円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
価格:1,680円 通常配送無料
出版社:日本文芸社
amazonで詳細を確認する
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下
価格:2,100円 通常配送無料
出版社:早川書房
amazonで詳細を確認する
価格:1,575円 通常配送無料
出版社:講談社
amazonで詳細を確認する
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ)
価格:1,470円 通常配送無料
出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する
« ゴーン被告海外逃亡行政責任説明しない安倍首相 | トップページ | 深刻な消費不況に移行している日本経済 »
「日韓問題」カテゴリの記事
- 冷静さと叡智をもった日韓関係考察必要不可欠(2020.01.04)
- 米中対立・日韓対立のゆくえ(2019.09.21)
- 相互信頼・相互尊重こそ健全近隣外交の要(2019.09.07)
- 窮地に追い込まれる安倍韓国敵視外交(2019.08.23)
- 平成時代に天皇が示した日韓関係への所見(2019.08.15)