日米FTA交渉をやらないという安倍内閣大ウソ
臨時国会で承認された日米貿易協定は日米FTAの一部である。
安倍内閣は日米通商交渉が日米FTA交渉ではないと言い張っているがウソだ。
日米通商協議は2018年9月26日に米国ニューヨークで行われたトランプ大統領と安倍首相による日米首脳会談で実施が合意された。
日米共同声明には次のように表記された。
https://www.mofa.go.jp/files/000402972.pdf
3 日米両国は,所要の国内調整を経た後に,日米物品貿易協定 (TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても,交渉を開始する。
4 日米両国はまた,上記の協定の議論の完了の後に,他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。
安倍首相は、日米交渉はTAGであってFTAでないと言い張ってきたが、TAGは日米FTA交渉の一分野に過ぎない。
TAGは”trade agreement on goods”の略称である。
「日米物品貿易協定」だ。
日米共同声明では、
「日米物品貿易協定(TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても,交渉を開始する」
とされており、ここに出てくるのがTAGである。
「他の重要分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する」
とされたが、このなかで
「デジタルの物品貿易及びサービス、越境データ移転」が「物品貿易」と併せて先行的に協議された。
しかし、日米共同声明には、
「上記の協定の議論の完了の後に,他の貿易・投資の事項についても交渉を行う」
と明記された。
このことについて、USTRはどのような国内手続きを採ったのか。
米国では、交渉開始の30日前までに交渉目的を公開することが政府に義務づけられている。
この義務に基づき、米国でパブリックコメントや公聴会が実施され、その結果をUSTRが「交渉の目的」として公開した。
USTRは「交渉の目的」として以下の22分野を明示した。
①物品貿易、②衛生植物検疫、③税関、貿易円滑化、原産地規則、④貿易の技術的障害、⑤良い規制の慣行、⑥透明性・公告・管理、⑦サービス貿易(電子通信及び金融サービスを含む)、⑧デジタルの物品貿易及びサービス、越境データ移転、⑨投資、⑩知的財産権、⑪医薬品及び医療機器における手続きの公正、⑫国有企業及び政府管理企業、⑬競争政策、⑭労働、⑮環境、⑯腐敗防止、⑰貿易救済、⑱政府調達、⑲中小企業、⑳紛争解決、㉑一般規定、㉒為替
この交渉分野はTPPとほぼ重なる。
先行して協議したのは、①物品貿易、と⑧デジタルの物品貿易及びサービス、越境データ移転、だが、これらの
「協定の議論の完了の後に,他の貿易・投資の事項についても交渉を行う」
ことが日米共同声明に明記されたのだ。
このことは、全体として、米国と日本がFTA交渉を始動させることで合意したことを意味している。
実際、米国のペンス副大統領は2018年10月4日の講演で、
“we will soon begin historic negotiations for a bilateral Free Trade Agreement with Japan.”
と明言している。
はっきりと、「日本とFTA交渉をやる」と明言しているのだ。
本年12月5日に、日本の国会は日米物品貿易協定と日米デジタル貿易協定を批准した。
米国はこれを日米FTA交渉の第一弾とし、2020年春から他の分野の交渉を開始する予定である。
米国は2020年末までに日米FTA全体の決着をつける腹積もりであると考えられる。
安倍内閣は国会でやらないと明言してきた日米FTA交渉を行っているのであり、国会はその第一弾としての日米物品貿易協定と日米デジタル貿易協定を承認してしまった。
臨時国会の最重要議題が日米FTA協定の一部であり、安倍内閣が国会での過去の説明に反する行動を実行したのだ。
このような暴挙を阻止するのが野党の責務であるはずだ。
日米交渉がFTA交渉であることを明らかにし、国会での説明に反する日米FTA交渉そのものを糾弾するのが野党の責務だ。
ところが、野党が政府に対して追及らしい追及もせず、二つの協定の国会承認を容認した。
このような野党では到底信頼することができない。
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