徴用工裁判と日韓請求権協定の真実を知る重要性
9月21日付ブログ記事
「米中対立・日韓対立のゆくえ」
https://bit.ly/2DVYPfu
メルマガ第2436号記事
「日韓問題経緯を正確に知ることが先決だ」
https://foomii.com/00050
に記述したが、日韓問題の経緯を分かりやすく解説する良書が刊行されている。
『徴用工裁判と日韓請求権協定
: 韓国大法院判決を読み解く』
(現代人文社、本体価格2000円)
https://amzn.to/2mlGZgf
多くの者が提示する疑問をQ&A方式で分かりやすく解説している。
日本では、いささか知性を欠く韓国批判の主張が流布されているが、真実に真摯に向き合い、過去の経緯を正確に把握して対応することが重要だ。
こうした良書に接し、知性に基づく対応を示すべきだ。
主権者の多数は偏向したマスメディアというフィルターを通した情報しか得ておらず、政治権力によるメディアコントロールの餌食になってしまっている。
安倍首相は韓国に対して敵対的姿勢を示し続けている。
安倍内閣は徴用工問題での韓国大法院判断に対する報復措置として対韓国貿易政策を変更した。
徴用工問題と貿易政策のリンクを安倍内閣は懸命に否定しているが、両者の因果関係を強調してきたのは安倍内閣自身である。
この安倍内閣の行動が韓国によるGSOMIA破棄や韓国による日本のホワイト国除外措置を招いた。
韓国政府はGSOMIA執行寸前に破棄延期を決定したが、決して日本外交が勝利したということではない。
日本が適正な対応を示すための時間的猶予を与えたものに過ぎない。
日本は徴用工問題について韓国と対話によって相互理解を深めたうえで問題解決に当たるべきだ。
同時に、韓国に対する通商上の嫌がらせ措置を中止するべきである。
韓国大法院が昨年11月29日、三菱重工に対して、元徴用工に対する損害賠償を命じる判決を示した。
10月30日には日本製鐵に対して損害賠償を命じる判決を示した。
日本政府はこの大法院判決が1965年の日韓請求権協定に反するものであるとして韓国政府に対して強く抗議している。
この判決がその後の通商政策における日本の対韓国敵対政策の原因になったことは、日本政府関係者のこれまでの発言経過から明らかである。
日韓請求権協定には「完全かつ最終的に解決」の文言が記されているが、日本政府はこの文言について、2000年頃までは、国家の権利である外交保護権の放棄を意味するだけで、個人の請求権を消滅させるものではないとしてきた。
法廷においても、日本政府は個人の請求権について日韓請求権協定で解決済みと主張することがなかった。
ところが、下級審で日本政府に不利な判断が相次いで示されると、日本政府は解釈を突然変更し、請求権協定で解決済みとの判断を示すようになった。
強制連行された中国人労働者が原告になった西松建設強制労働事件の2007年最高裁判決で、日本の最高裁は政府の変質した主張を受け入れて、訴訟によって損害賠償を請求することができなくなったのがサンフランシスコ講和条約の枠組みであるとの判断を示した。
しかし、この最高裁判断が世界人権宣言や国際人権規約に反するものであることを踏まえる必要がある。
最高裁は2007年判決で、日本においては訴訟による損害賠償請求ができないとの判断を示したものの、個人の請求権は消滅していないことを認め、当事者間での解決を勧めた。
その結果として、西松建設は原告との和解に応じている。
この2007年最高裁判決後は、個人が損害賠償を請求することができないというのが日本の判例法となっている。
韓国でも、かつては裁判所が消滅時効や日本政府の既判力等を理由に被害者の訴えを認めない判断を示していた。
しかしながら、こうした状況下で2010年、韓国併合100年を期して日本弁護士連合会と大韓弁護士協会が共同宣言を発表した。
共同宣言は、日本政府に対して強制動員被害の真相究明と謝罪と賠償を目的とした措置をとることを求め、強制動員にかかわった企業に自発的な補償のための努力を訴えた。
こうした状況変化等を背景に、韓国の司法判断も変化した。
2012年の日本製鐵徴用工事件大法院判決は、日本の植民地支配は大韓民国憲法の根本原理に反する不法な強制的占領であり、植民地支配と直結した不法行為に対する損害賠償請求権は日韓請求権協定の対象外であるとの判断を示した。
大法院は事件を高等法院に差し戻し、高等法院は日本製鐵に賠償を命じた。
この事件の上告審判決が昨年10月末に大法院によって示され、日本製鐵が賠償を命じられた。
こうした司法判断変化の背景には、日本が1979年に批准した国際人権規約がある。
1965年の日韓協定を金科玉条として振りかざし、「国際法違反」だけを繰り返し叫ぶ姿勢は「反知性主義」の象徴であると言わざるを得ない。
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