不正日本郵政側に立ちNHK制作現場叩くお門違い
かんぽ生命の保険商品不正販売問題が発覚した。
分かりにくい構図だが、保険商品の不正販売を行ったのは日本郵便株式会社だ。
日本郵便は郵便事業を取り扱うとともに、郵便局事業を受け持っている。
日本郵政グループの金融商品の管理を行っているのがゆうちょ銀行とかんぽ生命だ。
問題は日本郵便が担当している保険商品の販売において、顧客に重大な不利益を与える営業行為が横行していたことだ。
9月30日に行われた日本郵政、日本郵便、かんぽ生命3社トップによる中間報告を兼ねた記者会見で、保険料の二重払い分の返金を求めるなどの不利益解消を希望する顧客が約2万6千人に上ることが明らかにされた。
法令や社内規定に違反する契約は少なくとも約6300件に上り、既に明らかになっていた約4200件から増加した。
かんぽ生命は、顧客に不利益を与えた疑いがあるとして公表した約18万3千件の契約を調査していたが、調査を終えたのは半分にも満たず、法令や社内規定に違反する件数は膨らむ可能性が高い。
この重大問題をいち早く追及したのがNHKである。
NHKは昨年4月に「クローズアップ現代+」でかんぽ問題を報道した。
その後、続編に向けて情報提供を募る動画をツイッターに投稿したが、郵政側の抗議を受けた後に削除した。
続編は問題が広がった後の今年7月まで放送されなかった。
このことについて、高市早苗総務相が10月1日の閣議後会見で
「NHKにおいて適切に説明すべき案件だと思う」
と述べ、NHKに対して国民や視聴者に経緯を説明するよう求めた。
完全にピントがずれている。
NHKの現場の判断、NHK経営委員会の対応、日本郵政サイドの行動のどれが正しく、どれが間違っているのかを適正に判断するべきだ。
その際、核心になるのは、日本郵便が保険商品の不正販売を組織ぐるみと言ってよい程度で実行してきたことである。
これが問題の根源であるときに、その事実を報道し、問題を追及した番組制作担当者を吊し上げるのは完全な筋違いの対応である。
現在のNHKは重大な問題を抱えている。
最大の問題は、政治権力がNHKを不当支配していることにある。
これは放送法の規定がもたらしている構造的な問題だ。
一言で表現すれば、内閣総理大臣が権力を濫用する人物である場合に、内閣総理大臣が権力を濫用することによって生じる問題である。
内閣総理大臣はNHK経営委員会の委員を任命する権限を有している。
放送法第31条は、
「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」
と定めているが、安倍首相はこの規定をまったく守っていない。
極めて偏った人事を行っている。
NHKの最高意思決定機関は経営委員会である。
経営委員会がNHK会長を任命し、NHK会長は経営委員会の同意を得てNHK副会長とNHK理事を任命する。
NHKの理事会は会長、副会長、理事によって構成される。
NHKの業務運営はこの理事会の下に置かれるのだ。
したがって、内閣総理大臣は恣意的な経営委員会委員人事を行うことによって経営委員会を支配し、NHKの会長、副会長、理事の任命を支配することができる。
NHKの業務運営が理事会の指揮下に置かれる以上、NHK職員は経営委員会の意思に逆らうことができない。
それでも番組制作の現場には、正義派が存在した。
この正義派が不正事案に対して斬り込み、巨大不正を暴く報道を行うことがある。
これがNHKに残されたジャーナリズム精神、NHKの良心なのだ。
今回の事例では日本郵政が圧力をかけて、NHK経営委員会がNHK会長を厳重注意した。
NHK会長が正義派の行動を示したわけではない。
形式上、経営委員会はNHK会長を厳重注意しただけだ。
狙いは番組制作現場に対して圧力をかけることだ。
現実に番組制作現場は日本郵政不正問題の情報提供を求める動画を削除し、不正を追及する番組放送を1年以上も自粛した。
総務相が問題提起するべきは、NHK経営委員会が日本郵政からの圧力を背景に番組制作現場に圧力をかけたことであるべきなのだ。
高市総務相の行動はまったく見当はずれの方向を向いている。
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