原発放射能汚染マネー還流事件の疑惑拡大一途
日本の原発ビジネス実態の一端が明らかになった。
関西電力の八木誠会長や岩根茂樹社長など役員ら20人が、原発のある福井・高浜町の元助役から、合わせて約3億2000万円もの金品を受け取っていたことが明らかにされた。
これは氷山の一角である。
原発放射能汚染マネーの還流事件は、臨時国会の最重要テーマのひとつになる。
臨時国会には、これ以外にも安倍首相が国会で繰り返し交渉しないと宣言してきた日米FTA承認案が政府から提出される。
「米国とFTA交渉をしない」との公約を破棄していることもさることながら、日本が唯一メリットを得ることができる自動車および自動車部品の対米輸出関税撤廃が消滅した事実は重大である。
茂木敏充氏は日米FTAを取りまとめたことで外務大臣に抜擢されたと伝えられているが、日米FTAは売国のTPPをはるかに上回る国益喪失=超売国協定になっている。
この問題も徹底追及が必要だ。
しかし、この問題が吹き飛んでしまうような重大事案が表面化した。
放射能汚染マネーの還流事件である。
当然のことながら、刑事事件としての立件が視野に入る。
関西電力の末端職員の不正事件ではない。
関西電力の原発事業を取り仕切る最高幹部による巨大不正事件である。
関西電力社長が記者会見を行ったが、大企業トップの会見とは思えぬ、稚拙で締まりのない会見になった。
マスメディアは金品を渡していた高浜町元助役の森山栄治氏が地元で恐れられていた人物であったことを強調するが、事件の本筋とはかかわりのないことがらだ。
10月2日の会見で金品を受け取った20名の個人名と受領金額等が公表された。
受領金額がもっとも多かったのは常務執行役員の鈴木聡氏で1億2367万円、次いで元副社長の豊松秀己氏で1億1057万円。
このほか、森中郁雄副社長が4060万円、八木誠会長が859万円、岩根茂樹社長が150万円であったとされた。
調査委員会は昨年7~9月に調査を実施している。
しかし、これまで一切、事実関係が公表されることはなかった。
金品を受領した者が受領した金品の多くを返却したとされるが、返却したのが問題発覚後であるなら、事案の悪質性は減殺されない。
調査報告書には森山氏について「自身やその家族の身体に危険を及ぼすことを示唆する恫喝」があったなどの記載があるが、金品受領を正当化するための方便でしかない。
この調査結果は取締役会にも報告がなかった。
森山氏は高浜町の助役を辞めた後、地元の建設会社である吉田開発の顧問を務めた。
この会社から森山氏へ、手数料として約3億円が支払われており、建設会社は関西電力から原発関連工事を受注していた。
吉田開発の2013年の売り上げは約3億5000万円だったが、2018年には6倍の約21億8000万円に拡大した。
10月2日の会見で関西電力の岩根茂樹社長は、森山氏と面会して(社長)就任のお祝いを受領した際、お菓子か何かと思っていたら、その下に金貨が入っていて非常にびっくりしたと述べた。
時代劇の悪代官と悪徳政商のやり取りを彷彿させる場面が吐露された。
渡された金品の返却を申し出ようとしたところ、森山氏から
「なぜわしの志であるギフト券を返却しようとするのか」、
「無礼者 わしを軽く見るなよ」
などと激高され、返却を諦めざるを得なかったの状況があったとした。
これが事実であるなら、取締役会で事実関係を精査した上で、企業としての対応を検討し、実行するのが当然である。
企業の中間管理職が私的に悪事に手を染めたのとは次元が異なる。
企業の最高幹部として、こうした状況を重大事案として取締役会で検討、対応するべきことは危機管理の初歩の対応だ。
現実の対応として、関西電力幹部は巨額の金品を受領し、私腹を肥やす行動を取った疑いが濃厚だ。
金品返却の行為が、問題が発覚した以前のものだったのか、問題発覚後のものだったのかが決定的に重要になる。
原発にかかる費用は電力消費者が支払う電力料金から賄われる。
また、原発立地自治体には国家から巨額の交付金が支払われる。
これらの公的資金が原発事業支出の原資である。
その資金が電力会社幹部に還流して、電力会社幹部が私腹を肥やす行動を取っていた。
刑事責任が厳正に問われなければならない。
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