外相交代は日本全面譲歩のメッセージなのか
内閣改造が実施された。
第4次安倍内閣で2度目の内閣改造である。
麻生太郎副総理・財務相、菅義偉官房長官以外が入れ替える大幅改造で、初入閣は2012年12月の第2次安倍内閣発足後で最多の13人。
安倍首相は11日午前に開いた自民党役員会で「新体制のもとでわが党の長年の悲願である憲法改正を党一丸となって力強く進めていく」と述べた。
38歳の小泉進次郎氏の入閣が決定されたのは、メディアが改造を大きく取り上げるように仕向けるための話題提供であると見られる。
安倍内閣は韓国敵視政策を推進しているが韓国問題に関わる主要閣僚には安倍首相の韓国敵視姿勢に従順に従う人物が配置された。
韓国に対して「無礼である」との無礼な発言を示した河野太郎氏は外相から防衛相に横滑りになった。
韓国海軍によるレーダー照射問題を日本政府がことさら大きな問題として取り扱っているが、軍事情報に詳しい田母神俊雄元航空幕僚長は、軍事演習におけるレーダー照射は日常的に行われているもので、危険性も低く、取り立てて大きく騒ぎ立てるような問題ではないとの見解を示している
しかし、日本政府があたかも韓国が日本に軍事挑発したかのように騒ぎ立ててきたが、その防衛問題の担当に安倍首相に取り入るために行動する河野太郎氏が起用された。
河野氏はかつて原発に否定的な発言を示していたが、その発言を完全に消滅させている。
自分の出世のためには信念も思想も捨てるという行動様式が示されている。
韓国との友好関係構築に努めるべき外相として、対韓国関係の改善ではなく、韓国に対する敵対的対応を強めたのは安倍首相に対する阿(おもね)りであると判断される。
経済財政担当相の茂木敏充氏が主要閣僚の外相に起用された。
日米FTA交渉を早期に妥結させたことが評価されたと報道されているが、この報道自体が日本のメディアの堕落を意味している。
TPPや日米通商交渉で、日本が唯一得ることができる可能性がある分野が日本の自動車輸出の関税撤廃だった。
ところが安倍内閣は2013年3月に、TPP交渉への参加を米国政府に認めてもらうための交渉で、この権利を放棄した。
日本の対米自動車輸出には売れ筋のSUVなどで25%、普通自動車で2.5%の関税が課せられている。
関税撤廃のTPPを謳うなら、この関税撤廃を確定することが必要不可欠だ。
日本の農産品輸入関税を一気に引き下げる譲歩を示すなら、少なくとも自動車関税の撤廃を決定しなければ明白な片務条約、片務協定ということになる。
ところが、安倍内閣はTPP交渉に参加させてもらう条件交渉の場となった日米事前協議で、普通自動車は14年間、SUV等は29年間、関税をまったく引き下げないことを受け入れてしまった。
この時点でTPPは完全な売国条約となることが確定したのである。
それでも、このときの交渉では普通自動車は25年目に、SUV等は30年目に関税を撤廃することが取り決められた。
30年後には自動車の技術環境が激変し、日本の自動車輸出が存在するかどうかわからない。
その環境下で、遠い未来の関税撤廃が曲がりなりにも盛り込まれた。
ところが、今回の日米FTA交渉では米国の自動車輸入関税引き下げ、撤廃が完全消去された。
米国が日本からの自動車輸入の関税率を一切引き下げないことが決定されたのだ。
それだけでなく、トランプ大統領は日本からの自動車輸入に対して追加的な制裁関税を発動する可能性があることを明言した。
これが茂木経財相が妥結させたという日米通商交渉の実態である。
日米FTAは1858年に締結された日米修好通商条約以来の不平等条約であると言わざるを得ない。
茂木敏充氏は時代が時代なら、外相に抜擢されるどころか桜田門あたりを歩いているときに斬殺されてもおかしくないような実績を示したと言える。
外相を「無礼である」発言の河野太郎氏から、屈辱協定妥結を実現させた茂木敏充氏に交代させたことは、日本が今後、外交において徹底的な譲歩を示すというメッセージを示したものであるかも知れない。
日本は韓国に対する敵視政策を撤回して、韓国との相互理解、相互尊重の方向に舵を切るべきである。
安倍害交は、米国に対しては「ひれ伏す屈辱害交」を展開する一方、韓国に対しては無礼な傲慢害交を展開しているから、対米交渉で示したひれ伏し害交の姿勢が対韓国害交で示されるかどうかには疑義が残るから、今後の対応姿勢の変化の有無を注視する必要がある。
文科相、法相に安倍首相の側用人が起用された。安倍首相の歴史修正主義が補強される可能性が高い。当面は新入閣閣僚の各種スキャンダルが探索されることになるだろう。日本が道を誤らぬために必要なことは内閣改造でなく政権交代である。
次の衆院総選挙に向けた戦術確立を急がねばならない。
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