丸山議員だけでなく河野外相の責任を問うべきだ
河野太郎外相が6月1日、高知県四万十市での自民党会合で、2月の米朝首脳会談の事前交渉に当たった北朝鮮高官らが粛正されたとの韓国紙報道について「おっかねえな、という印象を抱いた」と述べたと報じられた。
この発言のなかで河野外相は、ロシアのラブロフ外相と5月31日に会談した際もこのことが話題となったとして
「われわれは処刑されなくて良かったね(と言い合った)」
と、やりとりしたことを明らかにするとともに、
さらに、粛清があったとすれば金正恩朝鮮労働党委員長の意向だったとみられることを踏まえ、
「交渉に失敗して責任者が処刑されてしまうと、次の人はどうするのか。あいつを処刑したからお前がやれと言われたら、私だったら逃げる」
と発言したと報じられている。
北朝鮮幹部が処刑ならびに処分を受けたとの見方を報じたのは「朝鮮日報」であるが、この情報については朝鮮半島情勢に詳しい辺真一氏が真偽について疑いがあることを指摘していた。
5月31日のロシアのラブロフ外相との会談の際のやり取りに関して河野外相は、米朝協議を担当していた北朝鮮の金赫哲(キムヒョクチョル)・対米特別代表が処刑されたらしいというメモが外務省の事務方から入ったことを明らかにした。
このことに触れて、ロシアのラブロフ氏と「おっかない」「少なくとも我々は処刑されることはないからよかった」などという話をしたとのことだ。
河野氏は5月31日の記者会見で、金氏が処刑されたとの報道についての質問に対して、
「真偽を含め情報をしっかり分析、確認したい。北朝鮮の公式発表でもないので、それ以上のことを申し上げるのはあまり適当ではない」
と述べている。
記者会見での発言は妥当なものであるが、この発言と、他の場における発言とは完全に矛盾する。
市民が井戸端会議で発言することとは異なる。
外相は国の外交の最高責任者である。
その外相が、確認も取れていない情報を鵜呑みにしたような発言を軽々にするべきでないことは基本のなかの基本ではないか。
安倍内閣は拉致問題の解決を内閣の最重要課題に位置付けているとの見解を示している。
それにもかかわらず、拉致問題は安倍内閣の下で
「1ミリも前進していない」
という声が、拉致被害者家族の間からも噴出している。
北朝鮮問題と直接関わる日、米、中、ロ、韓の五か国のなかで、北朝鮮の金正恩委員長と直接の面会を実現できていない唯一の首脳が安倍首相である。
安倍首相は圧力一辺倒の姿勢を示し、そのために、日朝協議は「1ミリも進展していなかった」が、米国のトランプ大統領が北朝鮮と条件を設定せずに対話する方針を示し、2度の米朝首脳会談を実現すると、態度を一変させた。
条件を設定せずに会談する意向を示し始めているが、北朝鮮の側からは応諾する回答を得られていない。
拉致被害者の家族にとっては、一刻も早い問題解決が最優先事項だ。
圧力一辺倒の姿勢では問題解決は遠のくばかりであるとの批判も強かった。
トランプ大統領が対話の路線を鮮明に示したことによって、ようやく北朝鮮との対話が進展し始めたのが現実である。
圧力一辺倒の外交姿勢が問題解決を遅らせた側面を否定できない。
米朝首脳会談が二度開催され、今後の事態進展に大きな期待が生まれ始めている極めて重要な局面である。
日本外交としては、この機会を最大限に活用して、拉致問題の解決を進展させなければならない。
その外交の最高責任者が外務大臣なのだ。
しかし、今回の河野外相の発言は、日朝間の信頼関係構築を、自ら率先して破壊し尽するような暴挙である。
その後の報道で、処分されたとされる北朝鮮幹部が公の場に姿を現したことが報じられている。
処刑についても誤報であった可能性が浮上している。
北朝鮮の極めてデリケートな問題について、外務大臣にある立場にある者が、事実関係を確認しないまま、無責任な発言を示した行為は極めて重大である。
メディアは問題を大きく報じていないが、直ちに罷免が求められる重大問題である。
このような人物が外相として拉致問題に対応するなら、救出できる邦人の救出も不可能になってしまうだろう。
国会においては、丸山議員の責任を問う以前に、河野外相の責任を厳しく問うべきだ。
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