NHK放送受信料強制徴収のどこに問題があるのか
日本の重大問題の一つは司法が行政権力から独立していないことだ。
日本国憲法は司法の独立を定めている。
第七十六条
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
ところが現実は異なる。
裁判官の人事権を内閣が握っているために、内閣が恣意的な人事を行う場合には、裁判官が行政権力に支配されてしまうのだ。
現に、安倍内閣の下ではこの傾向が極めて顕著になっている。
裁判官が行政権力の意向に沿う判断を示す傾向が極めて強くなっている。
司法の独立は有名無実化している。
5月15日、東京地方裁判所(森田浩美裁判長)は、自宅にテレビを持たない女性が、自家用車に設置しているワンセグ機能付きのカーナビについて受信料契約を結ぶ義務がないことの確認をNHKに求めた訴訟の判決で女性の訴えを退けた。
放送法は受信契約について次のように定めている。
第六十四条
1 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。
放送受信設備を設置した者はNHKと受信契約を締結しなければならないこととしている。
テレビを購入したが、NHKを見ず、受信契約を締結する気がまったくない場合でも、なお契約を締結し、受信料を支払う必要があるのか。
素朴なこの疑問に対して、2017年12月6日、最高裁はその義務を正面から認める判決を示した。
この司法判断も行政権力の意向を村対するものである。
最高裁は名称を「最高忖度裁判所」に変更するべきだ。
この裁判はNHKが受信料の支払いに応じない男性に対して起こした裁判で、被告の男性は、この条項が契約の自由や知る権利、財産権などを侵害していると主張した。
しかし、最高裁は被告の訴えを退けてNHKの主張を認めた。
政治権力の意向を忖度した司法判断である。
政治権力=行政権力はなぜNHKを擁護するのか。
それには理由がある。
行政権力が人事権を通じてNHKを実効支配しており、行政権力にとってNHKが最重要の情報操作機関になっているからなのだ。
ここに最大の問題がある。
そして、この問題は放送法の根幹に関わる重大な問題である。
この重大問題についての考察を行わずに、受信契約の強制を合憲とした最高裁の姿勢は、まさに最高忖度裁判所の名にふさわしいものと言える。
放送法の第一条=目的を把握することが必要不可欠だ。
(目的)
第一条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
キーワードは「放送の不偏不党」、「健全な民主主義の発達に資する」である。
NHKの運営が「放送の不偏不党」、「健全な民主主義の発達に資する」という規定に則っているなら、受信契約の強制が合憲であるとの判断にも一定の合理性がある。
しかし、現実には、NHKの運営が「放送の不偏不党」、「健全な民主主義の発達に資する」という放送法の規定に反していることが重大な問題なのだ。
放送法は第四条に次の規定を置いている。
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
二 政治的に公平であること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
ところが、現実にはこの規定がまったく守られていない。
その原因がどこにあるか。
答えは明白だ。
NHKの人事権を内閣総理大臣が握っており、人事権を濫用する者が内閣総理大臣に就任すると公共放送の担い手であるべきNHKが内閣総理大臣によって私物化されてしまうからだ。
現在の状況がこれにあたる。
NHKは政治権力の御用機関=広報機関に成り下がってしまっており、「放送の不偏不党」、「健全な民主主義の発達に資する」という放送法の目的が実現していない。
この現実についての考察を行わずに、受信契約の強制を合憲とした最高裁判断は誤った判断であると言わざるを得ない。
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