社会保障=「権利の支出」押しのける「利権の支出」
日本の財政問題根幹は歳出改革にある。
財政規模は国の一般会計だけで100兆円を突破している。
巨大な財政規模である。
しかし、日本国民が享受する最低保障ラインは極めて低い。
高福祉高負担か低福祉低負担かの選択の問題と言われるが、そうではなく、
低福祉高負担
という現実が存在する。
財務省は消費税負担の拡大を推進するが、社会保障支出の拡充は推進しない。
社会保障支出は支出カットの最重点分野とされている。
米国型財政は低福祉低負担であり、北欧型財政は高福祉高負担である。
しかし、日本が進んでいる道は、
北欧型高負担と米国型低福祉の組み合わせになっている。
最悪の組み合わせだ。
財政論議で話題とされるのは、財政規模や財政赤字ばかりだが、本当に重要な財政問題は財政支出の中身である。
この論議がなく、財政赤字と増税の問題だけが論じられ、消費税増税が推進されてきた。
財政問題を考察する際に、支出内容の点検、精査が欠かせない。
この原点に立ち返る必要がある。
消費税増税を肯定する論者は、高い消費税負担で高いレベルの社会保障支出を実現すると唱える。
しかし、消費税増税を先に認めてしまえば、高いレベルの社会保障支出は実現しない。
この「落とし穴」をまったく理解していない。
この「落とし穴」は財務省が創出しているものだ。
財務省が何を考え、どう行動しているかを知らねばならない。
財務省は二つの目標を保持している。
第一は、消費税を際限なく増税すること。
第二は、社会保障支出を際限なく切り込むこと。
この二つの基準に則って財務省が行動していることを認識しなければ、知らぬ間に財務省の戦術に嵌まってしまう。
消費税増税で社会保障の充実を訴える論者は、この点の認識が不足している。
消費税増税を容認すれば、その部分だけが食い逃げされてしまう。
歳出において財務省が社会保障支出を切ることを目指すのはなぜか。
それは、社会保障支出が権力=利権になりにくいからだ。
社会保障支出は制度が確立されると、その制度にしたがって、支出がいわば「自動的に」決定される。
「自動的に」決定される政府支出に、財政当局が裁量を差し挟む余地は乏しい。
社会保障支出のように、制度が確立されると、政府支出が「自動的に」決定され、支払いが執行される政府支出を「プログラム支出」と呼ぶ。
この政府支出は「プログラム」によって「自動的に」執行される。
財務省はこのために社会保障支出を嫌う。
財務省の権力の源泉は「裁量権」にある。
財務省のさじ加減で政府支出を決定できるから財務省の権力が増大する。
「プログラム支出」の拡大は財務省の権力の低下をもたらす最大の元凶になる。
「プログラム支出」の対義語が「裁量支出」である。
どこに橋を架けるか。
その橋の工事を誰にやらせるか。
これが「裁量支出」の核心である。
財務省は「裁量支出」の際限なき拡大を求める。
「裁量支出」の拡大こそ、財務省の権力拡大の源泉なのである。
利権政治勢力もまったく同じ判断を持つ。
「社会保障支出」は国民の「権利」になる支出で、財務省と利権政治勢力の「利権」に反する支出である。
公共事業予算のような「裁量支出」こそ、財務省と利権政治勢力の「利権」になる支出で、主権者の「権利」になる支出を圧迫するものなのだ。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
https://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第2282号「消費税廃止を目指すべき真の理由」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
|
国家はいつも嘘をつく --日本国民を欺く9のペテン
価格:907円 通常配送無料 出版社:発行:祥伝社 |
|
日本経済を直撃する「複合崩壊」の正体
価格:1,620円 通常配送無料 |
![]() |
あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)
価格:1,620円 通常配送無料 |
|
「国富」喪失 (詩想社新書) 価格:994円 通常配送無料 |
|
反グローバリズム旋風で世界はこうなる~日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ! ~(TRI REPORT CY2017) 価格:1,620円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
泥沼ニッポンの再生 価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016) 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
米国が隠す日本の真実~戦後日本の知られざる暗部を明かす 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:星雲社 |
|
安保法制の落とし穴 価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の奈落 (TRI REPORT CY2015) 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章 価格:1,620円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射- 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う! 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:日本文芸社 |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 価格:2,100円 通常配送無料 出版社:早川書房 |
アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:講談社 |
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
![]() |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 出版社:講談社 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 |
« ゴーン氏事件を考察する四つの視点 | トップページ | 著名人麻薬覚醒剤事案が増える政治の季節 »
「利権の支出VS権利の支出」カテゴリの記事
- 軍事費激増半端ないって(2022.12.02)
- 悪魔の正体むき出しの財務省(2022.08.01)
- 安倍政治を象徴する塚田副大臣発言文字起こし(2019.04.04)
- 社会保障=「権利の支出」押しのける「利権の支出」(2019.03.15)