株価急落原因増税にメディアが触れぬ理由
「’18年に’19年10月の消費税率10%の方針を閣議決定するなら、この瞬間が株価高騰相場の最終局面になる可能性がある。
’18年は日米両市場に金融波乱リスクが潜伏していることに十分な警戒が必要である。」
これは、私が1年前に週刊SPAの連載コラムに、2019年の経済展望として記述したものだ。
週刊SPA!2018年 1月16日・23日合併号
「これが答えだ!お金の新常識」
https://www.fusosha.co.jp/magazines/detail/4910234540189
に掲載されている。
本年10月15日に安倍首相は2019年10月15日の消費税増税を具体的に指示した。
これを契機に日本株価が急落している。
日経平均株価が27年ぶりの高値を更新したのは10月2日のことである。
安倍首相の消費税増税方針指示によって株価高騰相場の最終局面が到来したのである。
私は会員制レポートの『金利・為替・株価特報』(=TRIレポート)
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
の10月15日発行号(10月11日執筆)タイトルを
「長期上昇相場終局=波乱局面への移行可能性」
として、日本株価の下落トレンドへの転換始動を予測した。
私は、株価下落の主因を
1.米中貿易戦争
2.FRB利上げ
3.日本増税政策
であるとしてきた。
安倍首相の増税指示を起点とする株価急落は、1年前からの見通しに沿ったものであり、後付けの評論ではない。
ところが、メディアは株価急落と日本の増税政策明示化との因果関係を一切報道しない。
その背景にあるのが「TPR」だ。
「TPR」とは1985年に大蔵省が発足させた「言論統制プロジェクト」である。
私は発足当初の事務局員の一人である。
最大のターゲットとされているのはマスメディアである。
マスメディアが消費税増税を妨害する情報を発信しないように言論統制をかけるのだ。
このために、メディアは株価暴落を報じても、安倍首相による消費税増税指示との関連に一切言及しない。
一部報道が、株価下落が進行すれば消費税増税路線に変化が生じる可能性や、菅義偉官房長官の「リーマンショックのようなことがない限り増税を実施する」との言葉を紹介しているにすぎない。
株価が下落したら消費税増税の実施可否を検討するのではなく、増税方針が明確に示されたから株価下落が加速しているのだ。
この重要な因果関係を報じるものは皆無である。
NHKニュースウォッチ9のキャスターである有馬嘉男氏は12月22日放送での予算案閣議決定を報じるニュースの末尾を、
「生まれたばかりの赤ちゃんが一人900万円の借金を背負うことになる」
との発言で締め括った。
番組プロデューサーの指示通りの発言なのだと推察するが悪質極まりない「印象操作」である。
内閣府が公表している国民経済計算統計によると、2016年末の日本の一般政府債務残高は1285兆円である。
たしかに政府債務残高が1000兆円を超えている。
しかし、日本政府は同じ2016年末時点で1302兆円の資産を保有している。
両者をネットアウトすると18兆円の資産超過である。
有馬氏は、「赤ちゃんが生まれた時点で一人900万円の借金を背負っている」と発言するなら、同時に、「しかし、赤ちゃんは生まれた時点で一人900万円の資産も背負っている」と言わねばならない。
かつてニュースウォッチ9を担当した大越健介氏もまったく同じだが、NHKで枢要ポストに就くためには「魂を売る」しか方法がないということなのだろう。
こうしたメディアの劣化が日本を破滅へと導くのである。
株価下落の重要な一因が安倍内閣の消費税増税方針にあることは明白である。
しかし、日本のメディアはこの重要事実も指摘できないほど、政治権力に服従してしまっている。
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