大勢判明中間選挙後の米国政治情勢
11月6日に米国中間選挙が実施された。
現在、開票作業が進展しているが、トランプ大統領の共和党は上院で過半数議席を維持する一方、下院では過半数議席を失う見通しである。
また、全米50州の知事選では、共和党が約30州で勝利を収める可能性が高い。
上院議席数はこれまでの共和51対民主49から、共和56対民主44に近い水準に変化する見通しである。
下院議席は、これまでの共和235対民主193が、共和214対民主221に近い水準に変化する見通しである。
概ね事前の予測に近い結果になると見込まれている。
選挙結果はトランプ大統領に試練を与えるものであるが、トランプ大統領としては、2020年大統領再選に向けて、とりあえずは最大のハードルをクリアしたかたちの決着になったと言える。
下院過半数を民主党に奪回されたことで、今後の政権運営の困難は飛躍的に高まる。
大統領提案を議会で決定することが極めて難しくなる。
また、下院がトランプ大統領に対する弾劾裁判の開始を決定するリスクが高まる。
他方において、共和党は上院議席数を増やす見通しである。
大統領弾劾は上院の3分の2以上の賛成がなければ成立しない。
したがって、大統領弾劾裁判の始動が下院によって決議される可能性はあるが、大統領弾劾が成立する可能性は極めて低いと言える。
大統領指名人事の承認権は上院にあるため、トランプ大統領がとりわけ重視したのは上院における共和党過半数維持であった。
この点に関しては、期待以上の結果を得たということになる。
トランプ大統領はこの中間選挙を起点に、2020年11月3日の大統領選まで、現在の「米国分断路線」を貫く可能性が高い。
メディアの総攻撃を受け続けてきたトランプ大統領であるが、政策路線に対する賛否両論があることを脇に置けば、トランプ大統領が極めて強靱でしたたかな戦略の持ち主であることが改めて証明されたと言える。
米国はトランプ大統領の登場によって、完全に分断されたと言ってよい。
トランプ大統領は全米のすべての主権者からまんべんなく支持を得ることを目指していない。
トランプ大統領の施策を強く支持する者の結束を図る戦術を明確に保持し、その戦術を確実に実行している。
トランプ大統領が支持を獲得しようとしている中核は米国内陸部に居住する、キリスト教福音派の信者を軸とする白人層である。
トランプ大統領は、思想・哲学としては明確にリバタリアンの系譜に沿う主張を展開しており、福祉国家ではなく自助・自立=小さな政府、自己防衛権尊重を重視する立場を鮮明にしている。
米国を征服、占領した渡来勢力の利益を重んじるスタンスを鮮明にしているのだ。
同時に、ワシントンを拠点とするエスタブリッシュメント、職業政治家の手から米国政治を取り戻すことを主張し、この主張に多くの白人系米国人が賛同している。
多様性の尊重、移民との融和、社会保障の拡充を主張する民主党リベラルとは全面的に対峙している。
また、貿易政策においては、自由主義至上主義から米国利益第一主義への転換を明確にしており、従来の共和党の貿易政策からは明確に一線を画している。
経済・軍事・発言力における米国の覇権維持を重視し、その結果としての中国警戒姿勢が鮮明に浮かび上がっている。
大統領当選後の2年間は、経済成長の持続、株価の大幅上昇、失業率の大幅低下の実績を上げてきた。
この実績を踏まえれば、大統領支持率が既往最高水準に上昇してもおかしくはないし、中間選挙に大勝してもおかしくないと言えるが、支持率は低迷し、中間選挙で下院過半数を失うことになった。
その背景にあるのが、トランプ大統領の「米国分断路線」である。
米国を「トランプを支持する米国」と「トランプを支持しない米国」とに分断し、「トランプを支持しない米国」からの支持を積極的に得ようとはしない点に、トランプ大統領の行動の特徴がある。
この基本スタンスは、今後も維持されることになるだろう。
現在の基本路線を維持する場合、2020年の大統領選でトランプ氏が再選を果たすことは十分に考えられる。
民主党が米国民を引きつける大統領候補を擁立できるかどうかが大きな焦点になるだろう。
しかし、トランプ大統領に死角がないわけではない。
弾劾手続き進捗によるイメージダウン以外に、大きな問題として浮上するのが、今後の経済政策運営なのだ。
ここに、最大のリスクがあると言ってよいだろう。
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