« 2019年国政決戦に主権者はどう立ち向かうべきか | トップページ | 世界の株価が下落基調を強めているわけ »

2018年11月20日 (火)

ゴーン会長逮捕が高額報酬見直し契機になる

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕された。


現時点で認否は明らかにされていない。


ゴーン会長の役員報酬は国内の上場企業の中でもトップクラスである。


朝日新聞報道によると、


「東京商工リサーチのまとめでは、役員報酬の開示制度が始まった2009年度に日産から受け取った報酬は8億9100万円で、上場企業でトップ。


その後も毎年10億円前後の報酬を受け取り、16年度まで8年連続でトップ10に名を連ねた。」


ということである。


今回の逮捕容疑は、この間の5年間に届け出た報酬額が虚偽で、実際はその倍近い報酬を日産から受け取っていたというものである。


格差問題が深刻になるなかで、企業経営者の報酬のあり方を考え直す必要がある。


ゴーン氏は2018年の株主総会で、日産の報酬水準について


「優秀な人材をつなぎとめるため、競争力のある報酬が求められている」


と強調した。


世界的な自動車会社のCEOの報酬が20億円近くにのぼることなどを挙げて理解を求めていた。

人気ブログランキングへ

問題は現在経済のなかで、企業トップが高額報酬を受け取ることの是非である。


企業経営者の役割は大きい。


巨額の赤字を計上している企業が、経営者の交代によって巨額の黒字に転換することはある。


企業経営者の手腕によって、企業の業績は激変し得る。


企業経営者が一定の成功報酬を得ることは合理的である。


しかし、企業の業績が大幅赤字に転落したときに、経営者が赤字を自己資金で補填することはない。


赤字に転落しても高額報酬を獲得し続けることがほとんどだ。


赤字に転落しても赤字分の補填を求められない経営者が、黒字が拡大したときだけ、巨額の成功報酬を得ることは正当でない。


巨大な利益を上げることが功績だとされるが、巨大な利益を個人の力で獲得しているわけではない。


企業が利用する「総資本」、あるいは「株主資本」を事業に投下して利益を上げているだけなのだ。


100万円の資金を投下して得られる利益と1000億円の資金を投下して得られる利益を同列に比較することはできない。


比較するとすれば、投下資金に対する利益の比率=総資本利益率・自己資本利益率を比較するべきである。

人気ブログランキングへ

2017年度は、ゴーン氏が日産の社長兼最高経営責任者(CEO)を退いたため、日産からの報酬は7億円超に減少したが、新たに三菱自動車の役員報酬が加わって合計で10億円近くを受け取っている。


1年で総額20億円前後を稼いでいる計算だ。


過去20年間、日本においても企業経営者に巨額報酬を分配する事例が増えている。


欧米の事例に倣うというのが主たる根拠である。


しかし、欧米が先進的で優れているということではない。


末端の労働者に対してはフルタイムで働いても年収が200万円に届かない報酬体系を保持しながら、企業経営者が年収10億円を得ることを正当化する論理は存在しない。


汗水たらして働いている労働者の報酬の500倍の報酬を企業トップが得る状況の放置が格差拡大をもたらしてきたのだ。


共生社会を実現するためには、企業活動が生み出す果実である利益を適正に分配することが必要である。


企業が生み出す利益は労働者と資本に分配される。


資本の利益を極大化させる政策は、労働への分配を削減することである。


第2次安倍内閣が発足してからの日本経済では、経済全体が超低迷を続けるなかで大企業の利益が史上最高を更新し続けた。


資本にとっては夢のような状況だが、労働者は苦しみを強要されるものだった。


資本への分配は株主への配当、内部留保、役員報酬に配分される。


分配のあり方が社会のあり方を決定する。


分配のあり方を見直すことが求められている。

人気ブログランキングへ

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」

http://foomii.com/00050

のご購読もよろしくお願いいたします。

上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。

http://foomii.com/files/information/readfree.html

人気ブログランキングへ

 続きは本日の
メルマガ版
「植草一秀の『知られざる真実』」
第2193号「経済政策最重要テーマは成長でなく分配」
でご購読下さい。

『アベノリスク』(講談社)
動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。

2011101日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。

 創刊月201110-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。

 メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。

人気ブログランキングへ

日本経済を直撃する「複合崩壊」の正体

価格:1,620円 通常配送無料

出版社:発行:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)

価格:1,620円 通常配送無料

出版社:発行:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

「国富」喪失 (詩想社新書)

価格:994円 通常配送無料

出版社:発行詩想社 発売星雲社
amazonで詳細を確認する

 

 

反グローバリズム旋風で世界はこうなる~日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ! ~(TRI REPORT CY2017)

価格:1,620円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

泥沼ニッポンの再生

価格:1,512円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016)

価格:1,728円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

米国が隠す日本の真実~戦後日本の知られざる暗部を明かす

価格:1,728円 通常配送無料

出版社:星雲社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

安保法制の落とし穴

価格:1,512円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日本の奈落 (TRI REPORT CY2015)

価格:1,728円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章

価格:1,620円 通常配送無料

出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射-

価格:1,680円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う!

価格:1,680円 通常配送無料

出版社:日本文芸社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下

価格:2,100円 通常配送無料

出版社:早川書房
amazonで詳細を確認する

 

 

 

アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:講談社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ)

価格:1,470円 通常配送無料

出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く

価格:1,785円 通常配送無料

出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

消費税増税 「乱」は終わらない 消費税増税 「乱」は終わらない

価格:1,470円 通常配送無料

出版社:同時代社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る

価格:1,470円 通常配送無料

出版社:祥伝社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す!

価格:1,000円 通常配送無料

出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:青志社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日本の独立 日本の独立

価格:1,800円 通常配送無料

出版社:飛鳥新社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

売国者たちの末路 売国者たちの末路

価格:1,680円 通常配送無料

出版社:祥伝社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

知られざる真実―勾留地にて― 知られざる真実―勾留地にて―

価格:1,890円 通常配送無料

出版社:イプシロン出版企画
amazonで詳細を確認する

 

 

 

消費税のカラクリ 消費税のカラクリ

価格:756円 通常配送無料

出版社:講談社

 

amazonで詳細を確認する

 

 

 

戦後史の正体 戦後史の正体

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:創元社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土

価格:798円 通常配送無料

出版社:筑摩書房
amazonで詳細を確認する

 

 

 

日米同盟の正体~迷走する安全保障

価格:798円 通常配送無料

出版社:講談社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

検察崩壊 失われた正義 検察崩壊 失われた正義

価格:1,365円 通常配送無料

出版社:毎日新聞社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

検察の罠 検察の罠

価格:1,575円 通常配送無料

出版社:日本文芸社
amazonで詳細を確認する

 

 

 

「主権者」は誰か――原発事故から考える

価格:525円 通常配送無料

出版社:岩波書店
amazonで詳細を確認する

 

 

 

原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体

価格:1,680円 通常配送無料

« 2019年国政決戦に主権者はどう立ち向かうべきか | トップページ | 世界の株価が下落基調を強めているわけ »

働かせ方改悪」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ゴーン会長逮捕が高額報酬見直し契機になる:

« 2019年国政決戦に主権者はどう立ち向かうべきか | トップページ | 世界の株価が下落基調を強めているわけ »

有料メルマガご登録をお願い申し上げます

  • 2011年10月より、有料メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」の配信を開始いたします。なにとぞご購読手続きを賜りますようお願い申し上げます。 foomii 携帯電話での登録は、こちらからQRコードを読み込んでアクセスしてください。

    人気ブログランキング
    1記事ごとに1クリックお願いいたします。

    ★阿修羅♪掲示板

主権者は私たち国民レジスタンス戦線

  • 主権者は私たち国民レジスタンスバナー

    主権者は私たち国民レジスタンスバナー

著書紹介

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

関連LINKS(順不同)

LINKS1(順不同)

LINKS2(順不同)

カテゴリー

ブックマーク

  • ブックマークの登録をお願いいたします
無料ブログはココログ