安田純平さん自己責任論について考える
内戦下のシリアで2015年6月に行方不明になり、3年4ヵ月ぶりに解放されたジャーナリスト安田純平さんが10月24日に一時滞在先のトルコから帰国した。
安田さんは拘束中の状況について「拘束後は虐待としか言えない状況だった。暴力を受けていた」と語った。
また、帰国後に次のコメント発表している。
「大変なお騒がせご心配をおかけしました。おかげさまで、無事帰国することができました。ありがとうございます。可能な限り説明をする責任があると思っています。折を見て対応をさせていただくので、今日のところはご理解ください。」
地球よりも重いとされる人命が救出された。
このことを、私たちはまず喜ぶできである。
日本人が救出されたから喜ぶのではない。
人命が救出されたから喜ぶのだ。
安田さんに対する「自己責任論」が叫ばれているが、この問題を考える際には、2016年6月に発生した辛坊治郎氏の小型ヨット太平洋横断断念時の救出の事例と比較して批評する必要がある。
このとき、救助にあたった自衛隊は生命の危険を冒して辛坊氏らの救出を行った。
金額換算で巨大な救出費用が発生したことも事実である。
政府側に立つ辛坊氏でなければ、日本政府の対応は異なるものであったとも考えられなくはない。
しかし、この事案でも、辛坊氏らが救出されたことは良いことであった。
「自己責任論」を振りかざすなら、辛坊氏の行動も無謀であった。
小型ヨットが悪天候に晒されれば、生命を失う危険に遭遇することは明白だ。
そして、その可能性は現実のものになった。
その、自己責任がある辛坊氏らに対して、自衛隊は生命の危険を冒して救出行動を取った。
その結果として辛坊氏らの生命が救出されたのである。
そもそも、政府とは、主権者が作り上げているものだ。
主権者が主権者のために政府を作る。
これが国民主権の政治体制である。
その政府の第一の役割は、国民の命と暮らしを守ることである。
だから、戦争をしないこと。
国民の生活を保障すること。
そして、国民の命を守ることが最重視される。
国民は上から下に、恩恵を受ける存在ではない。
自分たちで、政府の役割を決めて、政府を動かしている。
国民の命に危険が及ぶ際には、政府は国民の命を守るために行動する。
その行動様式を決めているのは、主権者である国民なのだ。
主権者である国民が決めたルールに政府が従う。
これが国民主権国家における政府の行動のあり方である。
主権者である国民が、国民の生命が危険に晒されているときに、その理由を吟味して救出活動を行うか、行わないかを決めることにしているなら、その都度、吟味して決めなければならないということになるだろう。
しかし、国民の生命が危険に晒されているときは、生命の救出を優先するとの原則を打ち立てているなら、その原則に従うのが正しい。
命を救出することがテロリストの資金源になることを根拠に、救出するべきではないとの意見があるが、その行動を採用するためには、あらかじめ、主権者がそのようなルールを設定しておく必要がある。
主権者がそのルールを明確に定めていないのに、救出への努力をしないという選択はない。
ヨットで危険に遭遇したときに、政府が巨大な費用を投じて、自衛隊が命の危険を冒して救出活動を行うことに対しても、類似した反論は生じ得る。
その自己責任を問わなければ、無謀な冒険行為が助長され、そのたびに、国民に大きな負担がかかってしまうというものである。
両者には共通する部分が多くある。
私は、政府の役割として、人命の救出を優先するというルール設定が、日本の主権者の意思に沿うものであると考える。
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