欧州に劣る食の安全安心への米日スタンス
英国のメイ政権がジョンソン外相などの辞任で動揺しており、訪英した米国のトランプ大統領がメイ首相に米国との自由貿易協定締結に対する否定的な発言を示し、メイ政権が一段と苦境に立たされていると報道されている。
英国は2016年6月の国民投票でEU離脱(ブレグジット)を決めた。
しかし、その後、どのようなかたちでEU離脱を実現するのかで意思の不統一が顕在化し、そのなかでメイ首相が窮地に立たされている。
意見対立はソフト路線とハード路線の対立で
ソフトブレグジット対ハードブレグジットと表現されている。
ハードとは強硬な離脱。これに対してソフトとは、EUとの協調を優先した穏健な離脱ということだ。
7月6日にメイ首相は英国首相の公的別荘であるチェッカーズで閣僚会合を開き、英内閣はソフトブレグジット路線で進むことを合意、発表した。
この合意を受けて、離脱交渉の責任者であり、ハードブレグジット派のデービEU離脱担当相が辞任を表明した。
さらに、ハードブレグジット派の中心人物であるボリス・ジョンソン外相も辞任を表明した。
この結果、メイ政権が厳しい局面に立たされているわけだ。
この状況下で、訪英した米国のトランプ大統領がメイ首相に対して、「米国との貿易協定は実現しないだろう」と警告を発したのである。
メイ政権にとってはEU離脱後の最優先課題が米国との自由貿易協定(FTA)締結であり、この方向に水を差されたかたちになっている。
TPPにしろ、日欧EPAにしろ、「メガFTA」と呼ばれる自由貿易協定の枠組みは、基本的にグローバルに活動を拡大する巨大資本=多国籍企業の利益極大化を目的とするもので、その弊害は計り知れない。
いま、世界では、こうしたグローバリズムの嵐に対して立ち向かう「反グローバリズムの旋風」が吹き始めている。
英国民のEU離脱決断や、米国におけるクリントン女史の大統領選敗北は、反グローバリズム旋風を象徴する事象である。
しかしながら、その反グローバリズム旋風自体も単純明快なものではない。
トランプ大統領はTPPやNAFTAなどのメガFTAに反対しているが、多国籍企業の利益極大化そのものに反対しているわけではない。
米国の貿易収支の改善、米国内での生産拡大、ひいては米国の輸出伸長を目指しており、グローバル巨大資本の利益極大行動そのものを敵対視しているわけではないのだ。
イタリアで新政権が樹立されたが、連立政権は草の根民主主義勢力の「五つ星運動」と右派政党「同盟」によるものである。
「五つ星運動」は直接民主主義、ローカリズムを重視しているが、「同盟」は排外主義的な色彩を強く有している。
反グローバリズムの旋風と一言で表現しても、対応の基本方向はローカリズムとナショナリズムに分かれているという面もある。
トランプ大統領がメイ首相に厳しい警告を送ったのは、メイ政権が農業製品の安全基準などに関してEUが決めたルールを離脱後も順守する考えを示したためである。
EUの食の安全、安心に対する姿勢は極めて厳格で、人体に与える影響が危険視されるものについては、「予防原則」を基準に厳しい対応を示してきた。
米国では成長ホルモンを使用した牛肉や遺伝子組み換え食品の流通が許されているが、EUはこれらを禁止している。
メイ首相はEU基準の食品安全規制を維持する考え方を示したわけで、トランプ大統領は米国の輸出伸長の視点からメイ首相の行動を批判したというものである。
メディアは自由貿易協定締結が困難になる状況を生み出しているとしてメイ首相を批判する論調を形成しているが、詳細な経緯を踏まえれば、メイ首相の主張を頭ごなしに否定することは妥当でない。
私たちは、問題の本質をしっかりと見極めてメディアが流布する情報に接する必要がある。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
http://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第2087号「日本で乳がんの発症が急増している背景」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
![]() |
あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)
価格:1,620円 通常配送無料 |
|
「国富」喪失 (詩想社新書) 価格:994円 通常配送無料 |
|
反グローバリズム旋風で世界はこうなる~日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ! ~(TRI REPORT CY2017) 価格:1,620円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
泥沼ニッポンの再生 価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016) 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
米国が隠す日本の真実~戦後日本の知られざる暗部を明かす 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:星雲社 |
|
安保法制の落とし穴 価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の奈落 (TRI REPORT CY2015) 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章 価格:1,620円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射- 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う! 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:日本文芸社 |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 価格:2,100円 通常配送無料 出版社:早川書房 |
アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:講談社 |
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
![]() |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 出版社:講談社 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 |
« 覚えろ・従えの学校教育が日本をダメにしている | トップページ | 経済下流域に押し流される圧倒的多数の国民 »
「TPPプラスを許さない」カテゴリの記事
- 強欲資本に支配される日本政府(2024.10.04)
- 正しい食品表示を求める市民の集い(2024.05.24)
- WBC袴田さんから食の権利認定へ(2023.03.22)
- 全国オーガニック給食フォーラム(2022.10.23)
- 国は十分な食料への権利を守れ(2022.10.09)