本当の真実を隠滅するためのオウム死刑執行
7月26日、松本・地下鉄両サリン事件などで計29人の犠牲者を出した一連のオウム真理教事件をめぐり、死刑が確定していた死刑囚のうち、7月6日に執行されなかった、残りの6名の死刑囚に対する死刑が執行された。
この死刑執行を受けて、駐日欧州連合(EU)代表部、EU加盟国の駐日大使、アイスランド、ノルウェー、スイスの駐日大使が、死刑廃止を訴える共同声明を発表した。
声明文は以下の通り。
「7月26日、6人の死刑が、日本の当局により執行された。刑が執行されたのは1995年に東京の地下鉄で実行された、サリンによるテロ攻撃の犯人であることが判明したオウム真理教のメンバーであった。
われわれの7月6日の声明で示したように、EU、その加盟国、アイスランド、ノルウェーおよびスイスは、同事件が、日本そして日本国民にとってとりわけ辛く特殊な事件であることを認識している。われわれは、心からの同情を表し、犠牲者とその家族の苦悩を共有し、加害者が誰であれ、またいかなる理由であれ、テロ行為を断じて非難する。
しかしながら、本件の重大性にかかわらず、EUとその加盟国、アイスランド、ノルウェーおよびスイスは、いかなる状況下での極刑の使用にも強くまた明白に反対し、その全世界での廃止を目指している。死刑は残忍で冷酷であり、犯罪抑止効果がない。
さらに、どの司法制度でも避けられない、過誤は、極刑の場合は不可逆である。日本において死刑が執行されなかった2012年3月までの20カ月を思い起こし、われわれは、日本政府に対し、死刑を廃止することを視野に入れたモラトリアム(執行停止)の導入を呼びかける。
われわれは、友人であり同じ考えを持ち、価値や原則を共有する日本を含めた、全世界における死刑廃止を引き続き積極的に追い求める。われわれはそれを、建設的な精神を持って、また国連人権理事会の普遍的・定期的レビュー(UPR)の枠組みにおける勧告に則って行う。」
声明が示す、死刑制度廃止を求める論拠は以下の三点だ。
第一に、死刑が残忍で冷酷な刑罰であること。
第二に、死刑に犯罪抑止効果がないこと。
第三に、過誤が避けられず、極刑の場合は不可逆であること。
死刑執行の命令を出した上川陽子法相は、前回の死刑執行の前夜である7月5日に、自民党議員40名程度などが参加した「赤坂自民亭」なる「呑み会」で「女将」を務め、メインゲストとして参加した安倍晋三氏と祝杯を挙げている。
死刑は国家による殺人である。
安倍内閣は、わずか21日間に13名もの殺人を実行した。
その死刑執行の前夜に宴会を催し、祝杯を挙げるという感覚を理解できる国民は少ないだろう。
事件そのものは許すことのできないものであるし、被害者および被害者の家族、関係者の多くが極刑を求める心情は理解できる。
しかし、それでも世界の趨勢は死刑制度廃止の方向に確実に向かっている。
その最大の理由は、死刑そのものが残忍で冷酷であることによる。
刑罰制度が、単純な応報原則によって構築されているなら殺人に対する刑罰を死刑とすることに合理性が認められるのかも知れない。
しかし、現代国家における刑罰は、単なる犯罪への応報であることにとどまらず、社会復帰の達成に資するものであることを求めている。
この考え方が、再犯の防止に役立ち、社会全体の安全に資するものであるからだ。
また、国連自由権規約委員会や国連拷問禁止委員会等の国際機関は、日本における死刑制度ならびに被拘禁者に対する制度について、国際人権(自由権)規約第6条(生命の権利)、第7条(非人道的な刑罰の禁止)、第14条(公正な裁判の保障)等を根拠に、繰り返し改善を勧告してきている。
しかし、その勧告に対する見るべき改善はなされてきていない。
死刑が執行された者の多くが再審請求中であった。
過去の歴史事実は、何度も何度も再審請求を行った結果として、最終的に再審が開始され、司法判断が覆った事例の存在を示している。
「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」
と規定しており、再審請求中の死刑執行は憲法違反である。
私たちは、世界の趨勢が、なぜ死刑制度廃止に向かっているのかを、よく知り、考える必要がある。
そして、日本においても死刑制度を廃止するべきである。
『アンダーグラウンド』(村上春樹、講談社文庫)
https://amzn.to/2u1CoRp
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
http://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第2096号「死刑制度はかけがえのない命を軽視すること」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
![]() |
あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)
価格:1,620円 通常配送無料 |
|
「国富」喪失 (詩想社新書) 価格:994円 通常配送無料 |
|
反グローバリズム旋風で世界はこうなる~日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ! ~(TRI REPORT CY2017) 価格:1,620円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
泥沼ニッポンの再生 価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016) 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
|
米国が隠す日本の真実~戦後日本の知られざる暗部を明かす 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:星雲社 |
|
安保法制の落とし穴 価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の奈落 (TRI REPORT CY2015) 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章 価格:1,620円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射- 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う! 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:日本文芸社 |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 価格:2,100円 通常配送無料 出版社:早川書房 |
アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:講談社 |
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
![]() |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 出版社:講談社 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 |
« 野党党首会談で反自公共闘体制を確立すべきだ | トップページ | 執行前夜上川法相表情が暗かったという偽ニュース »
「警察・検察・裁判所制度の近代化」カテゴリの記事
- 警察検察断罪した大善文男裁判長(2023.03.14)
- 日本も十分に暗黒国家(2022.11.25)
- ロシア並み道警言論封殺に賠償命令(2022.03.25)
- #黒川問題予算委集中審議を求めます(2020.05.25)
- なお主権者をなめ切る安倍内閣を許すのか(2020.05.24)
« 野党党首会談で反自公共闘体制を確立すべきだ | トップページ | 執行前夜上川法相表情が暗かったという偽ニュース »