死刑合憲最高裁判決根拠は崩壊している
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」
の言葉があるが、彼も知らず、己も知らなければ、百戦百敗を免れないだろう。
オウム事件の死刑囚7名の死刑同時執行。
世界から非難の声が挙がっている。
オウム事件の犯罪事実を容認するものではないが、死刑という刑罰のあり方が世界の趨勢に完全に逆行している。
「他の刑罰が奪う利益と異なり、死刑は、生命という全ての利益の帰属主体そのものの存在を滅却するのであるから、取り返しがつかず、他の刑罰とは本質的に異なる」(日本弁護士連合会)からである。
日弁連は、
「死刑制度について考察する際には、死刑制度が、基本的人権の核をなす生命に対する権利(国際人権(自由権)規約第6条)を国が剥奪する制度であり、国際人権(自由権)規約委員会や国連人権理事会から廃止を十分考慮するよう求められていることに留意しなければならない」
としている。
死刑は国家による殺人であると同時に、日本国憲法には次の条文が置かれている。
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
死刑が「公務員による拷問及び残虐な刑罰」に該当するとの判断は、極めて正当なものである。
1948年3月12日に最高裁判大法廷が、「日本国憲法の主旨と死刑制度の存在は矛盾せず、合憲である」との判決を示したために、死刑制度が合憲とされてきた。
しかし、この最高裁判決には、
「刑罰としての死刑そのものが、一般に直ちに同条のいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。
ただ死刑といえども、他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから、将来若し死刑について火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそは、まさに憲法第三十六条に違反するものというべきである。」
の一文が盛り込まれている。
さらに、
「ある刑罰が残虐であるかどうかの判断は国民感情によつて定まる問題である。
而して国民感情は、時代とともに変遷することを免かれないのであるから、ある時代に残虐な刑罰でないとされたものが、後の時代に反対に判断されることも在りうることである。
したがつて、国家の文化が高度に発達して正義と秩序を基調とする平和的社会が実現し、公共の福祉のために死刑の威嚇による犯罪の防止を必要と感じない時代に達したならば、死刑もまた残虐な刑罰として国民感情により否定されるにちがいない。
かかる場合には、憲法第31条の解釈もおのずから制限されて、死刑は残虐な刑罰として憲法に違反するものとして、排除されることもあろう。
しかし、今日はまだこのような時期に達したものとはいうことができない。」
との補充意見も付せられている。
上記最高裁判決では、
「すなわち憲法は、現代多数の文化国家におけると同様に、刑罰として死刑の存置を想定し、これを是認したものと解すべきである」
と述べているが、「現代多数の文化国家におけると同様に」の記述は、時代の変遷とともに、その妥当性が完全に失われている。
すなわち、現在においては、法律上死刑を廃止している国と事実上死刑を廃止している国の合計が141か国に達しており、世界の中で3分の2以上を占めている。
また、OECD加盟34ヵ国のなかで、死刑を国家として統一して執行しているのは日本だけなのである。
死刑制度の問題点に関する記述に紙幅を割いてしまったが、国家による殺人である死刑制度は、もはや完全に時代遅れの遺物なのである.
7名もの大量殺人の執行前夜に執行を命令した上川法相と安倍首相が宴に参加して祝杯をあげていたという図式は身の毛のよだつものだ。
そして、この日の午後2時には気象庁が緊急記者会見を東京と大阪で開いて豪雨災害についての最大の警告を発していた。
もはや、存続を許すべきではない政治権力が、いまなお居座っている。
この「敵」に打ち克つ法を私たち主権者国民が備え、実践しなければならない。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
http://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第2085号「「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)
価格:1,620円 通常配送無料 |
「国富」喪失 (詩想社新書)
価格:994円 通常配送無料 |
反グローバリズム旋風で世界はこうなる~日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ! ~(TRI REPORT CY2017)
価格:1,620円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
泥沼ニッポンの再生
価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016)
価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
米国が隠す日本の真実~戦後日本の知られざる暗部を明かす
価格:1,728円 通常配送無料 出版社:星雲社 |
安保法制の落とし穴
価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の奈落 (TRI REPORT CY2015)
価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章
価格:1,620円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射- 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う! 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:日本文芸社 |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 価格:2,100円 通常配送無料 出版社:早川書房 |
アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:講談社 |
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 出版社:講談社 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 |
« 国民の命と暮らしを守る意思がない安倍内閣 | トップページ | 覚えろ・従えの学校教育が日本をダメにしている »
「警察・検察・裁判所制度の近代化」カテゴリの記事
- 無罪確定すべき袴田事件(2024.10.08)
- 袴田事件が示す三つの重大問題(2024.09.30)
- 木原事件と財務公用車ひき逃げ殺人(2024.09.19)
- 深層「悪夢の民主党政権」(2024.05.20)
- 「つばさの党」幹部3名逮捕(2024.05.17)