選挙での民意が埋立承認撤回根拠である
沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が7月27日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画を巡り、那覇市の県庁で記者会見し、前知事による埋め立て承認を撤回することを表明した。
安倍内閣は8月17日にも辺野古沿岸部の埋め立て予定海域に土砂を投入することを県に通知しており、埋め立て承認撤回は、土砂投入の前に工事を止めさせるためのものと見られる。
埋め立て承認の撤回、取り消しは、2014年11月の前回知事選の時点から、辺野古米軍基地建設を阻止するための焦点であった。
知事選に際して、埋め立て承認の取り消しと撤回を直ちに行うことを公約に明記することが求められたが、翁長氏は知事選に際して、これを公約に明記することを拒絶した。
翁長知事が埋め立て承認の取り消しを行ったのは、知事就任から10ヵ月が経過した2015年10月だった。
この10ヵ月の遅れが、辺野古米軍基地建設に決定的な影響を与えた。
翁長知事は埋め立て承認を取り消す前に、辺野古米軍基地建設の本体工事着工に必要な「事前協議書」を受理してしまったからだ。
国は「事前協議書」が受理されたことを背景に本体工事に着手し、現在、猛烈な勢いで米軍基地建設工事を進めている。
そして、ついに、この8月17日に海底への土砂投入を始めることを通告してきているのである。
辺野古米軍基地建設を阻止するためには、知事就任後、直ちに埋め立て承認を取り消し、裁判によって、これが否定され、工事進捗への動きが見られたなら、間髪を空けずに埋め立て承認を撤回する必要があった。
重要なことは、辺野古米軍基地建設の進捗を阻止することである。
沖縄県がこの対応を取っている場合、沖縄県は本体工事着工に必要な「事前協議書」を受理しない。
「事前協議書」が受理されなければ、国は辺野古米軍基地建設の本体工事には着工できていなかったはずだ。
しかし、翁長知事は埋め立て承認取り消しを、「事前協議書」の受理を待ってから行った。
国による本体工事着工の条件を整えることに「協力」したうえで、埋め立て承認取り消しに動いたと解釈できる行動を示したのである。
また、埋め立て承認取り消し後に国が取り消しの取り消しを求めた代執行訴訟で、2016年3月4日に、沖縄県は国と和解した。
和解条項第9項には、「原告および利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文およびそれを導く理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後も同趣旨に従ってお互いに協力し誠実に対応することを確約する」
と記述され、また、法廷で翁長氏は「最高裁判決に従う」との陳述を行い、この言質が政府によって、その後政府によって大々的に活用されることになった。
重要なことは、辺野古米軍基地建設を阻止するために「あらゆる手法を用いて」いれば、工事の進捗を大幅に遅らせることが可能であったと考えられることだ。
2016年12月に取り消し訴訟の最高裁判決が示されたあと、間髪を入れずに埋め立て承認を撤回を行うべきであったが、それが2年近くも遅れたことになる。
そして重要なことは、今回の撤回が、どのような内容を持っているのかである。
この点について、「アリの一言」ブログ主宰者が次のように指摘している。
「辺野古「撤回」は「公益撤回」でなければならない」
https://bit.ly/2uZ6y8k
「ここで留意しなければならないのは、同じ「撤回」という言葉でもその内容は2種類あり、一方の「撤回」はけっして評価できないばかりか、逆に安倍政権の思うつぼになる危険性があることです。
2種類とは、「要件撤回」と「公益撤回」です。
「要件撤回」とは、国が「埋立承認」で確認されている手続きを守っていない、だから「承認」は無効だ、というもの。国の行政手続き上のミスを理由とする、いわば「行政的撤回」です。
これに対し「公益撤回」は、辺野古に新基地を造ること自体が県民の民意(公益)に反している、「埋立承認」は誤りだった、だから撤回する、というもので、いわば「政治的撤回」です。
どちらが本来行うべき「撤回」であるかは明りょうでしょう。そもそも4年前の知事選で翁長氏を当選させたのは、辺野古新基地反対の民意であり、基地建設(埋立承認)自体が誤りだという県民の意思です。「公益撤回」こそ県民が求めた撤回だったことは明らかです。」
沖縄県は、選挙で示された民意を根拠に、辺野古埋め立て承認の撤回を行うべきである。
ただし、秋に知事選を控えており、この時期に問題が訴訟に委ねられると、基地建設推進の自公サイドは、基地問題であいまい戦術を採用し、基地問題については裁判所の判断に委ねるとして、争点外しを展開する可能性が高い。
この時期の撤回が、この戦術をサポートするものになる可能性がある点に警戒が必要である。
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