1ミリも動かせなかった安倍外交との巨大落差
米国のトランプ大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩朝鮮労働党委員長による歴史的な会談が実施された。
共同宣言にCVID=
complete, verifiable, and irreversible dismantlement
が盛り込まれなかったことを非難する言説が一部メディアから提示されているが、本質を見誤った議論である。
重要なことは、米朝が交渉のテーブルに着いたことである。
問題は「対話」によってしか解決し得ない。
米国が「力」によって北朝鮮を殲滅することは、国際法上、そして道義上許されない侵略行為である。
拉致被害者の家族はトランプ大統領の行動力を評価しているはずである。
2012年12月の第2次安倍政権発足から5年半の時間が流れるが、拉致被害者の家族が指摘するように、拉致問題は1ミリも動いてこなかった。
安倍首相は「圧力」一転張りで、「最大限の圧力」とだけ繰り返してきた。
韓国で文在寅氏が大統領に就任して、積極的に「対話」を呼び掛け始めたことに対して、安倍首相は
「対話のためのお対話には意味がない」
と批判を展開した。
平昌五輪開会式に出席しないとしていた安倍首相は、出席するべきであるとの主権者の声、自民党内の声に屈服して五輪開会式に出席したが、文在寅大統領との会談では、安倍首相が「米韓軍事演習を実施するべきだ」と述べた。
これに対して、韓国の文在寅大統領は、安倍首相の発言は内政干渉にあたると批判したのである。
米国のトランプ大統領はCVID、すなわち、完全な、検証可能で不可逆的な核廃絶の確約を取らずに、北朝鮮の体制の保証、米韓軍事演習の停止を明示した。
安倍首相のこれまでの主張からすれば、CVIDを確保しない限り、体制の保証を与えるべきではないし、米韓軍事演習は継続するべきとのことになるが、相手がトランプ大統領だと、安倍首相は突然態度を変えて、批判を控えるのだろうか。
5月24日にトランプ大統領が米朝首脳会談中止を金正恩委員長に対する書簡で表明した。
このとき、安倍首相は、すかさず「トランプ大統領の判断を支持する」と表明したが、その直後に、トランプ大統領は6月12日の米朝首脳会談開催の可能性を示唆した。
すると、すかさず、安倍首相は再び「トランプ大統領の判断を支持する」との姿勢を示したのである。
自分の考えなど何もない。
単に、権力者であるトランプ大統領に隷従しているだけの悲しい現実がある。
単なるトランプ大統領の太鼓持ちに成り下がっているのである。
米国の軍産複合体にとって東アジアの平和と安定は一大惨事である。
軍産複合体にとって死活問題であるのは、戦争の火種が消えてしまうことである。
現代の戦争は「必然」によっては生じない。
「必要」によって生じているのである。
「戦争」は戦争産業が存続するために、人為的に創作されているものである。
トランプ大統領が東アジアの平和と安定構築に突き進むことは、戦争産業にとっての悪夢である。
平和と安定が実現しないように、総力を結集する勢力が確実に存在する。
この勢力が和平成立に向けてのプロセスに難癖をつける。
日本のNHKは米国の支配勢力によって支配されてしまっている。
だから、NHKも米朝首脳会談に対して極めてネガティブな伝え方をしているのである。
こうした邪悪な勢力の妨害を排除して、東アジアの平和と安定を確立するべきである。
トランプ大統領は秋の中間選挙に合わせて成果を顕在化させる考えだろう。
トランプ大統領は朝鮮戦争の終結、北朝鮮の核廃棄を含む包括的な合意を、本年9月から10月に成立させるスケジュールを念頭に置いているのだと考えられる。
東アジアに平和と安定がもたらされて、朝鮮半島の統一が実現することは世界がもろ手を挙げて歓喜するべきことである。
昨日の米朝首脳会談は問題解決のための第一歩に過ぎないが、大きな第一歩を踏み出したことを、まずは歓迎するべきである。
大きな第一歩を印したのに、難点ばかりを探し回る姿勢は建設的でない。
圧力一点張りで、問題解決の方向には1ミリも動かなかったこれまでの「実績」と比較して、論評するべきである。
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