米朝首脳会談成否は米政府の真摯さにかかる
東アジア情勢が大きく動いている。
米国のポンペオ氏が3月のCIA長官時代の北朝鮮訪問に続き、再度、国務長官として北朝鮮を訪問した。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は3月に続いて再度北京を訪問して習近平主席と会談を行った。
さらに、2年半ぶりの日中韓首脳会談が日本で開催された。
中国からは李克強首相が出席した。
6月初旬までに米朝首脳会談が開催される見通しが強まっており、米朝会談に向けて各国が調整を急いでいる。
北朝鮮は拘束していた3名の米国人を解放し、ポンペオ国務長官とともに北朝鮮を離れ米国に帰還を果たす。
日本の拉致問題が解決しないなかで、米国は大きな成果を獲得している。
朝鮮半島の南北首脳会談では、朝鮮半島の完全な非核化の方針が確認された。
停戦状態にあり、いまだに終結していない朝鮮戦争の終結と平和条約の締結も検討課題に挙げられている。
韓国の文在寅大統領が主導した「対話」を基軸にした外交交渉が、驚くべき速度で事態変化を誘導してきた。
「対話のための対話には意味がない」としてきた安倍首相の主張が空しく響いている。
問題の解決には、なお紆余曲折が予想されるが、北朝鮮が本格的な交渉のテーブルに着いた意義は極めて大きい。
日本、韓国、北朝鮮、中国は東アジアの隣国である。
平和で友好的な互恵関係を構築することが、この地域のすべての市民にとっての朗報であることは言うまでもない。
米国は誠意をもって朝鮮半島の平和と繁栄実現のための役割を果たすべきである。
北朝鮮は米国との交渉を適正に進行させるために、中国との関係を緊密化させている。
リビアやイラクの前例があるため、北朝鮮が神経を尖らせるのは当然のことだろう。
米朝首脳会談が成功し、朝鮮戦争の最終的な終結が実現し、日朝間の対話が実現することによって、拉致問題の解決にも展望が開けてくる。
圧力一辺倒では何も動かなかった現実が、「対話」を基軸に置き始めた途端に一気に動き始めたことを、私たちは再確認しておかねばならない。
日本と中国、日本と韓国、日本とロシアとの間の紛争は、領土問題に起因する部分が少なくない。
しかし、その領土問題のすべてに米国が深く関与している。
1972年の沖縄返還に際して、尖閣諸島の施政権は日本に付与されたが、米国は尖閣諸島の領有権については、日本の主張を認めなかった。
尖閣諸島の領有権について、米国は日本側にも中国側にも立たないことを表明し続けてきたのである。
これが尖閣諸島の領有権をめぐる日中対立の大きな背景になっている。
竹島については、日本が独立を回復する直前に韓国の李承晩大統領が独島として韓国領土として認定した。
この措置を米国が黙認したことにより、竹島=独島の領有権問題が日韓間で争われる事態を招いている。
ロシアとの関係では、第2次大戦後、日本は国後、択捉の領有権を放棄しており、歯舞、色丹2島返還による日ソ平和条約締結の寸前まで交渉が進展したが、米国が横やりを入れて平和条約締結が実現しなかった。
この「横やり」を契機に日本は、国後、択捉を含む北方四島が日本固有の領土であると主張を始め、その結果、日ソ間の領土問題が解決せず、平和条約も締結されぬまま現在に至っている。
これも、米国が日ソ間の友好関係確立を妨害してきたものであると評価することができる。
日本は東アジアの一国として、本来は、中国、韓国、そしてロシアと平和で友好的な互恵関係を構築するべきであるが、米国が日中韓の緊密な関係構築を妨害するとともに、日本の対米隷属勢力が意図的に東アジア諸国との関係を冷却化させてきたのだ。
この勢力は北朝鮮の脅威を煽り、戦争リスクを人為的に創作してきたとも言える。
北朝鮮が核開発に執着してきたのは、北朝鮮が米国との交戦状態にあるとともに、米国が敵対視したイラクやリビアが、米国によって殲滅されてきたという歴史の現実を踏まえてのものである。
ものごとは多面的な視点から捉えなければ、全体像を掴むことができない。
国際情勢は複雑で、外交関係は複雑に多面的な利害が絡むから、単純思考で対応するべきでないが、双方の利益を同時に高める方法が「平和と繁栄の確立」であることを認識することが重要だ。
日本はアジアの一国であることを忘れるべきでない。
日中韓、そして、北朝鮮、ロシアと真に平和で友好的な関係を構築することが、すべての日本国民にとっての利益になることを踏まえた対応を取るべきである。
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