日本株価が節分天井彼岸底になった背景とは
2018年の金融市場は年初来、波乱含みの展開になっている。
TRIでは毎年の政治経済金融の見通しを年次版TRIレポートしてビジネス社から発行してきた。
2013年版から2018年版までシリーズ6巻を発行してきた。
2017年版は
『反グローバリズム旋風で世界はこうなる』(ビジネス社)
https://goo.gl/CxeiSg
で、米国大統領選直後に刊行したものである。
副タイトルを「日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ!」
とした。
米国大統領選挙でトランプが当選すればドルとNYダウは暴落すると言われたなかで、本書は2017年の内外株価急騰を予測したものである。
現実に、2017年に日経平均株価は2万3000円に到達、NYダウも2万ドルを大きく突破した。
2018年版TRIレポートは、
『あなたの資産が倍になる
金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」』(ビジネス社)
で、2018年の政治経済金融情勢を展望している。
その第1章タイトルは「2018年の大波乱」である。
順風満帆に推移した2017年とは打って変わって、2018年の金融市場は波乱含みの展開になることを予測した。
波乱が生じる中心的な要因として掲げた第一がFRB問題である。
完全雇用状態に達するなかでトランプ政権が積極的な成長推進政策を実施する。
FRBの政策対応が困難さを増すなかでFRB議長をはじめ、金融政策のかじ取りを担うメンバーが大きく入れ替わる。
この問題を取り上げたのである。
実際、2018年の金融市場は1月末以降、波乱含みの展開を続けてきた。
TRIでは会員制レポートを月2回発行している。
TRIレポート『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
であるが、このレポートでは1月29日発行号第1節に「株価高値波乱局面への移行」のタイトルを付して、内外株式市場が調整局面を迎える可能性が高いとの見通しを示した。
「NYダウが急騰を続けている。今後、NYダウが調整局面を迎える可能性が高まるため、今後の変化に細心の注意が求められる」
と記述したのである。
実際に、NYダウは1月下旬から急落して、12%の下落を演じた。
株価急落のきっかけは株価上昇の過熱であったが、下落幅が大きくなった背景はFRBのパウエル新体制への不安だった。
私が2018年版TRIレポートに記述した重要リスクは、FRBのパウエル新体制に対する不安心理が生じることだった。
実際に、1月末から2月末にかけて、金融市場のインフレ心理が急速に高まったのである。
このなかで注目されたのが、2月27日のパウエルFRB議長議会証言だった。
『金利・為替・株価特報』では、2月26日発行号に次のように記述した。
「FRBがインフレ圧力に毅然と対応することは、むしろ望ましい。一時的に株価は調整しても、FRBのインフレ警戒姿勢が確認されれば、相場は回復に転じる可能性が高い。」
「2月初旬以降の株価急落局面で、パウエルFRB議長が利上げ抑制スタンスを示すのが望ましいとの市場関係者の声が聞かれたが、この見解は間違いだ。」
「冷静に考えれば、FRBの毅然とした姿勢が「インフレなき成長持続」に不可欠であり、市場は反応を再逆転させる可能性が高い。重要なことはパウエル新議長がポピュリズムに走らないことである。」
私の見解が届いたのかどうかは不明だが、パウエルFRB新議長は2月27日の議会証言で「タカ派色」に染め抜いた発言を示した。
この結果、3月9日雇用統計が雇用者30万人増を発表したが金融市場は動揺しなかったのである。
『金利・為替・株価特報』は3月12日発行号タイトルを「節分天井彼岸底推移でも年央警戒感堅持を」として3月下旬に株価が底入れするとの見通しを示したが、その後に米中貿易戦争が勃発する気配を強めて株価が一段下押しする局面があった。
それでも『金利・為替・株価特報』4月16日発行号は、「彼岸底シナリオの維持」と題して「トランプ大統領の狙いは破滅的結末ではなくディールによる成果獲得である」と記述し、この時点で米中貿易戦争が際限のない拡大を示す可能性は低く、株価反発を妨げないとの見通しを示したのである。
実際に、内外株価は3月下旬を転換点に反発地合いを維持して現在に至っている。
金融市場変動の先行きを的確に見定めるために必須の条件のひとつは、優れた水先案内人を保持することである。
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