金融市場にも巻き起こる春の嵐の行く末は
光陰矢の如しというが、2018年も早くも3月を迎えた。
記録的な豪雪、相次ぐ寒波の到来は、地球温暖化仮設への素朴な疑問を投げかけているが、3月もいきなり春の嵐を迎えての幕開けになった。
「2018年の大波乱」の片鱗がすでに表れ始めているのかも知れない
気候だけでなく金融市場にも春の嵐が巻き起こっている。
2月2日にNYダウが前日比666ドルの下落を記録した。
これを起点に春の嵐が巻き起こっているのだが、ハイライトは2月5日のNYダウ1075ドルの下落だった。
節分を超え、立春を株価急落で迎えることになった。
週末で市場は休場だったが2月3日にジャネット・イエレンFRB議長が退任し、新たにFRB理事であったジェローム・パウエル氏が議長に就任した。
人事を差配したのはトランプ大統領である。
トランプ氏はFRB議長候補として最後にノミネートした5名と面談した上でパウエル氏の起用を決めた。
最期までイエレン氏の続投を検討した模様だが最終的にパウエル氏を選択した。
「大統領は人事に自分の印を残したいものだ」
というのがトランプ氏のコメントだった。
純粋な判断ではイエレン氏の続投が望ましいと考えながら、「政治的な判断」でパウエル氏を起用したのだと思われる。
このパウエル氏のFRB議長就任に対して、金融市場が挑戦状を送り付けた。
パウエル議長はこれまでFRB理事の地位にあったが、FOMCで反対票を投じたことがない。
イエレン路線を肯定してきたと言えるが、独自の判断を持ち合わせているのかどうかが気になるところである。
パウエル氏は経済・金融の専門家ではない。FRB議長としては異色の存在だ。
そのパウエル氏が、金融政策がもっとも難しい判断を求められる局面でFRBトップに就任した。
私はFRB議長にはイエレン氏を再任させるのがベストな選択であるとの見解を表明してきた。
2018年版のTRIレポート『あなたの資産が倍になる-金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」-』
では、第1章「2018年の大波乱」、第4章「難局に差し掛かるFRB」において、2018年の最重要事象として米国金融政策についての考察を取り上げた。
FRB議長に就任したパウエル氏が適任でないと断定するわけではない。
問題は実績・実力を兼ね備えている現職のFRB議長を退任させて、力量が未知数である人物をあえてFRBトップに起用した点にある。
日本では政策運営に失敗してきた黒田東彦日銀総裁、岩田規久男副総裁をを退任させるのが順当だが、この日本が総裁を続投させ、続投させるべき米国でFRB議長が差し替えられた。
いずれも中央銀行トップの人事が政治によって歪められたものと言える。
米国のパウエル新FRB議長は2月27日、議会証言を行った。
金融市場が強い関心を注いだ議会証言である。
この証言でパウエル氏は金融引き締め政策を継続する考えを示した。
FRBは3月20-21日にパウエル新体制での初めてのFOMCを開く。
このFOMCでFRBは2015年12月の利上げ着手を含めて6回目になる利上げを決定する可能性が高い。
しかし、2月入り後に株価下落が生じたため、FRBが利上げ姿勢を後退させるのではないかとの期待交じりの観測が生じたが、パウエル議長は、この期待を一蹴した。
この議会証言を受けて内外の株式市場は再び調整色をやや強めている。
こうしたパウエル議長の対応についての評価の詳細はTRIレポート=『金利・為替・株価特報』
www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
に詳述するが、私はパウエル新議長がFRB議長としての最初の関門を適切に乗り越えたと評価している。
TRIレポートでは1月29日号でNYダウの調整局面到来を警告していたから、2月2日以降の内外市場の株価調整は想定した事態であるが、こうした波乱局面でFRB議長がどのようなメッセージを発するのかが極めて重要になる。
中央銀行総裁として最悪なのは、市場の空気に迎合することである。
市場に過度のショックを与えることは回避するべきであるが、市場の「甘い期待」に迎合することはより弊害が大きい。
この意味で、パウエル氏は警戒されていたひとつの懸念を、とりあえずは払拭したと言える。
しかし、油断はまだまだできない。
市場は引き続きパウエル氏を試しにかかる。一連の試練を乗り切って初めてパウエル氏はFRB議長としての金融市場における地位を確立することになるのだ。
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