改竄後決裁文書「原本」提示ではゼロ回答だ
決裁文書を書き換えて、書き換えたものを保管していれば、決裁文書の原本は書き換えられたものになる。
自民党の関口昌一参院国対委員長は3月7日に国会内で民進党の那谷屋正義参院国対委員長と会談し、3月8日朝の参院予算委員会理事会に、財務省に決裁文書の「原本」の写しを提出させると伝えた。
このことについて財務省は、3月7日の野党会合で、近畿財務局から本省が入手した「原本」の写しは、国会議員に開示した文書と「同じもの」だと説明した。
つまり、明日、財務省から提出される「原本」の写しは、国会議員に開示した文書と同一のものになると見られている。
しかし、これは単なる「茶番」ではない。
落とし穴に嵌った犯人が、意図してなのかどうかはともかく、さらに墓穴を広げることになる可能性が高いものである。
現在問題とされていることは、財務省が決裁文書を改竄、あるいは偽造した疑いである。
決裁文書を偽造、あるいは改竄して新しい決裁文書に仕立てたものを保管している可能性が高い。
間違いなくそのようにしているはずだ。
したがって、保管されている決裁文書が改竄後のものであるなら、これと国会議員に開示した文書は同一になる。
しかし、このことだけでは、当初の決裁文書が国会議員に開示した文書と同一であることの証明にはならない。
財務省に保管され、検察に提出したとされる文書が、改竄後の文書ではないことが立証されなければならない。
検察における調書などにおいては、プリントする用紙に日時が刻印されるものがある。
時系列を入れ替えることができないこのような書式システムを用いるのでなければ、調書の改竄や書き換えは容易に可能である。
逆に言えば、警察などでの取り調べ結果である調書においても、このような偽造、ねつ造、改竄は容易に行えるのである。
日付時刻が刻印されない通常の普通紙に記載する調書では、調書の改竄、書き換え、ねつ造を容易に行うことができる。
そのような調書のねつ造によって冤罪が創作されることが実際に行われていると考えられる。
保管したあった原本が議員に開示したものと同一であったとしても、このことは書き換え=改竄がなかったことの証明にはならない。
書き換える前の原本が存在したのかどうかが焦点である。
この点について、決裁に関与した当事者は事実を知っている。
仮に、改竄の事実があった場合、これを覆い隠すことは最終的に不可能であるだろう。
改竄があったにもかかわらず、財務省が国会議員に開示した文書と同一の文書を「原本」だとして提示する場合、財務省の負う傷はさらに拡大することになるだろう。
改竄があったと現時点で断定することはできないが、改竄があった可能性は極めて高いと考えられる。
問題発覚は、財務省内部からの情報リークによるものと考えられる。
真実を知る者で、かつ、隠蔽を許さないと考える人物が存在する限り、あるいは、財務省が何らかの理由により、改竄の事実を表面化させる意思を有している限り、改竄の事実を隠蔽し切ることは不可能と考えられるからだ。
自民党は財務省と協議して原本が国会議員に開示した文書と同じであるとのストーリーで動いているように見えるが、仮に改竄があったとする場合には、この対応が致命傷になる可能性が高い。
危機管理、ダメージコントロールの視点からは、最悪の対応になる。
改竄、偽造の事実がないなら、当然のことながら、国会議員に開示した決裁文書と原本は同一ということになるが、そうなると、別の表記のある文書が偽造物ということになる。
裁量労働制を導入するためのデータがねつ造されたものであったことが発覚し、安倍政権が深刻なダメージを受けていることから、これを挽回するために込み入った芝居を演じているということも一つのストーリーにはなり得る・
しかし、仮に「工作」によって一連の騒動が創作されたということになれば、そのこと自体が新たな不祥事として取り扱われることになるだろう。
2006年の通常国会では小泉政権が窮地に追い込まれていたが、武部勤幹事長による堀江貴文氏へのメール問題の処理を民主党が誤り、攻守が逆転したことがあった。
自民党が大掛かりな工作を仕掛けて、この再現を狙っているとの見方も完全には否定し切れない。
今後の真相解明を待つ必要はあるが、現段階で最も可能性が高いと見られるのは、財務省が改竄の事実を隠蔽して、国会議員に開示した決裁文書と原本は同一であるとの主張を押し通すというものである。
しかし、真実を隠蔽し切れると考えるのは浅はかである。
逆に、財務省が改竄の事実を認めて当初の原本を提示する場合には、政権を吹き飛ばす爆風が吹き抜けることになるだろう。
担当者、前理財局長、財務相の罷免で済むような話にはならない。
安倍政権は確実に消滅することになるだろう。
財務省がこの路線に突き進む場合には、財務省による安倍政権潰しが真の狙いであるとの見立てを否定し切れない。
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