金融政策失敗修正できず安倍政権失速へ
日銀の黒田東彦総裁の再任案が国会に提示された。
副総裁候補には現日銀理事の雨宮正佳氏と早稲田大学教授の若田部昌澄氏が提示された。
黒田氏が再任されれば、1964年に退任した山際正道氏以来、半世紀ぶりに在任期間が5年を超える異例の総裁になる。
1969年に日銀総裁に就任した日銀出身の佐々木直氏以来、日銀総裁は日銀出身者と大蔵省(財務省)出身者が5年ごとに交代する人事が長く踏襲された。
これを「たすきがけ人事」と呼んできた。
大蔵省の天下りポストとして日銀総裁は最高位ポストである。
大蔵省の事務次官経験者でも、10年に1人しか日銀総裁には就任できない。
大蔵省にとって最重要ポストが、昔も今も日銀総裁ポストなのである。
主要国による財務相・中央銀行総裁会議の名称が示すように、日銀総裁は財務相と並ぶポストとして位置付けられている。
権力欲にまみれた大蔵省・財務省の職員にとって、日銀総裁ポストは究極の目標でもある。
この日銀・大蔵たすきがけ人事が終焉したのは、1998年に大蔵省出身の松下康雄総裁が大蔵省・日銀接待汚職事件の責任を問われて任期途中で辞任した。
後継の総裁には日銀出身の速水優氏が就任し、これを契機に、福井俊彦氏、白川方明氏と3代続けて日銀出身者が総裁に就任した。
旧大蔵省、財務省にとっては、天下り最高ポストを失った衝撃は大きく、日銀総裁ポストの奪還は最重要課題であり続けた。
私は官僚支配構造を打破するための方策として三つの具体策を提示し続けてきた。
第一は公務員の職名の変更である。「官」と称するから「官尊民卑」の勘違いをしてしまうのだ。
「官」を廃し、「員」に変更すること。
第二は、天下りを根絶すること。
その出発点として、財務省の天下り氷山の一角から手を付ける。
具体的には、日本銀行、日本取引所、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫、日本たばこ、横浜銀行、西日本シティ銀行への天下りを全廃する。
第三は、第一種国家公務員制度の廃止である。
大卒採用を一本化して、少数幹部の採用を廃止する。
入社の段階で幹部登用を約束して採用する企業は極めて少ない。
少数採用が不適正な「特権意識」を生み出す原因になっている。
公務員は与えられた仕事を着実に、正確にこなすことを求められる職務であって、自分がトップと自認するような採用するべきでないのだ。
勘違い官僚を生み出さないために、公務員制度を抜本的に変革することが必要なのだ。
官僚支配の構造を変えること。
「改革」を叫ぶなら、官僚支配の構造を打破することが優先されるべきなのだ。
日銀人事に話を戻す。
黒田氏は事務次官経験者ではない。経済学・金融理論の専門家でもないのである。
その黒田氏が日銀総裁に起用された。
財務省にとっては悲願の日銀総裁ポスト奪還になった。
しかし、過去5年間の実績は最低である。
就任2年以内にインフレ率を2%以上に引き上げることを公約として掲げた。
ところが、5年経過して、この公約はいまだに達成されていない。
皮肉なことは、2013年からの5年間で、労働者の実質賃金が1年だけプラスになった。2016年のことだ。
2016年に実質賃金が唯一プラス転換した主因は、2016年の消費者物価上昇率が前年比0.1%下落したことにある。
物価下落、すなわちデフレに回帰したことで、初めて実質賃金がプラス転換したのだ。
ところが、2017年は消費者物価上昇率が0.5%上昇し、実質賃金は再び減少に転じた。
つまり、黒田氏が掲げた「インフレ誘導」という目標自体が間違っていたのである。
間違った目標を掲げ、その目標を実現できなかった。そして、デフレに回帰した2016年だけ、労働者の実質賃金がプラスに転換した。悲喜劇のような最低の実績を有しているのが日銀の黒田・岩田体制なのだ。
その黒田氏が再任されるという異例は、大いなる驚異と日本の近未来の暗雲の広がりしかもたらしていない。
安倍政権は黒田日銀とともに崩壊してゆくことになるだろう。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
http://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第1972号「金融政策過ちの上塗り人事で安倍政権墜落へ」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)
価格:1,620円 通常配送無料 |
「国富」喪失 (詩想社新書)
価格:994円 通常配送無料 |
反グローバリズム旋風で世界はこうなる~日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ! ~(TRI REPORT CY2017)
価格:1,620円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
泥沼ニッポンの再生
価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016)
価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
米国が隠す日本の真実~戦後日本の知られざる暗部を明かす
価格:1,728円 通常配送無料 出版社:星雲社 |
安保法制の落とし穴
価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の奈落 (TRI REPORT CY2015)
価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章
価格:1,620円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射- 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う! 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:日本文芸社 |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 価格:2,100円 通常配送無料 出版社:早川書房 |
アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:講談社 |
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 出版社:講談社 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 |
« 逃げ回る安倍晋三・安倍昭恵・佐川宣寿の末路 | トップページ | NY株価調整後の経済金融変動のゆくえ »
「アベノリスク」カテゴリの記事
- 企業が耐えられなくなる円安誘導(2022.07.02)
- いざなぎ景気は超えていない(2018.12.13)
- 量的緩和政策に固執する日銀の機能不全(2018.08.01)
- 金融政策失敗修正できず安倍政権失速へ(2018.02.18)
- アベノミクスで99%主権者の生活はズタズタだ(2017.07.17)