米日株価急落とトランプ経済政策の盲点
波乱の立春になった。
沖縄県名護市長選挙では現職の稲嶺進氏が、自公維が推薦する新人候補の渡具知武豊氏に敗北した。
渡具知氏は普天間飛行場の県内移設に反対の意思を表明していたから、辺野古米軍基地建設推進が民意を得たわけではないが、辺野古米軍基地建設反対を鮮明に示していた稲嶺氏敗北の衝撃は大きい。
「辺野古に基地を造らせない」との公約を掲げながら、実際には国による辺野古米軍基地建設の進捗を阻止できてこなかったことの影響が大きいと考えられる。
翁長雄志氏の辺野古米軍基地建設阻止に向けての対応のあいまいさが名護市民の一種の諦めを生み出してきたことを否定できない。
他方、立春を挟んで内外株式市場が高値波乱商状を示している。
2月2日、NYダウは前日比666ドルの下落を記録した。「666」はキリスト教社会では不吉な数字の代表である。
1996年6月26日に日経平均株価がバブル崩壊後のピークをつけて暴落に嘆じた際の株価が22666円だった。
日経平均株価は1989年10月9日の12879円へと2年3ヵ月で約1万円の暴落を演じたのである。
この過程で三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の破たんが生じていった。
NYダウは立春明けの2月5日に前日比1175ドルの急落を演じ、24345ドルで引けた。
トランプ政権が発足して最初の1年間は記録的な株価暴騰が生じたが、就任2年目を迎えて大きな試練に直面し始めている。
NYダウの上昇スピードが極めて速かったから、株価は一定の調整を迎える可能性を高めていた。
スピードに対する調整が入るのは相場の常であり、この意味では株価急落は順当とも言える。
ただし、株価下落の幅は大きく、トランプ政権に与える心理的な影響は小さくないと考えられる。
日経平均株価も2月6日はザラ場で前日比1000円以上の大幅安を演じている。
日経平均株価の変動要因を私は[1+3]と表現してきた。
企業収益動向が最大の株価決定要因であり、これに加えて重要な変動要因がNYダウ、ドル円、上海総合指数だとしてきた。
『金利・為替・株価特報』では1月29日号で「高値波乱局面が接近していることに警戒する必要がある」ことを明記したが、想定された波乱商状が現実化している。
www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
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では、「2018年の大波乱」として2018年は2017年と金融市場変動が様相を一変させる可能性を指摘した。
相場の転換点がいつ、どの水準で現実化するのかを特定することは困難だが、2018年が大きな波乱に直面する可能性は高いとの見立てを示してきている。
「好事魔多し」というが、トランプ大統領の就任1年目の株価推移は特筆に値するものであった。
株価を押し上げた最大の要因はトランプ新政権が発動すると予想される成長政策に対する期待であり、現実にトランプ大統領は大型減税と大型インフラ投資政策を具体化させつつある。
ただし、株価上昇をもたらした、もうひとつの重要な要因があったことを見落とせない。
FRBの金融政策が極めて安定的な推移を示したことである。
2017年前半は3ヵ月おきに利上げが実施されて、金融引き締め政策が加速するのではないかとの警戒感が広がったが、7月12日の議会証言でFRBのイエレン議長が、低インフレ率が長期間持続する可能性を示唆したために、その後の金融引き締め政策は大幅にスローダウンした。
インフレなき成長が持続し、しかも、FRBの政策対応がゆとりを持っているとの状況が株価上昇を後押ししたのだと言える。
こうした米国経済の順調な推移におけるイエレン議長の役割は極めて大きかった。
このイエレン議長がこの2月3日に任期満了を迎えた。
私はイエレン氏を続投させるべきだとの見解を提示し続けた。
しかし、トランプ大統領はイエレン議長を退任させてパウエル理事をFRB議長に昇格させた。
トランプ大統領はこの人事について、「大統領は人事で自分の印を残したいものだ」と語った。
イエレン氏はFRB議長の最終候補の一人だったが、トランプ大統領は民主党色の強いイエレン氏を退任させて、共和党色の強いパウエル氏を抜擢したのである。
ベストではなく次善の人事であると表現できるが、本来、経済政策運営においては、次善ではなくベストが求められる。
とりわけ2018年は金融政策運営が最も難しい局面を迎えるタイミングに差し掛かる。
株価急落はパウエル新議長に対する市場の挑戦状であるとも言える。
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