「働かせ方改悪」推進する安倍政権基本姿勢が元凶
安倍政権が提案している「働かせ方改悪」に対する風圧が強まっているのは、データに不備があったという技術的な要因に原因があるのではなく、この提案の目的、安倍政権の基本姿勢に問題があるからだ。
「働かせ方改悪」は労働者=主権者の利益を増大させる提案ではない。
逆に労働者=国民の利益を著しく悪化させるものである。
労働者のための制度改定ではなく、労働者を雇う資本のための制度改定であることが、風圧が拡大している主因なのである。
安倍政権が提示している「働かせ方改悪」の柱は以下の4点である。
1.長時間残業の合法化
2.正規労働と非正規労働の格差の維持
3.年収1075万円以上の労働者を対象とする残業代ゼロ制度の創設
4.残業代ゼロの裁量労働制度の範囲拡大
残業時間に上限を設定し、違反に対する処罰規定を設けることは正しい。
しかし、その上限が労働者の酷使を容認するものであるなら制度改定は「改正」ではなく「改悪」になる。
労働者を守る規制を強化し、違反を厳正に取り締まるのでなければ、制度を改変する意味がない。
今回の改定では月次の残業時間が100時間未満まで容認される。
「過労死」の被害者遺族が「改悪」であると批判するのは当然のことである。実際に、月次残業時間80時間未満で過労死した労働者が労災認定されており、月次100時間未満の残業容認は「過労死」合法化に他ならない。
安倍政権は「過労死」を防止する意思を有していないということになる。
過労死を防ぐには最低限必要な休息が必要である。
EUではEU加盟国がEU労働時間指令の内容を国内法として規定する義務を負っており、これがEU諸国における共通の基準になっている。
EU労働時間指令では、休息時間について24時間につき最低連続11時間の休息時間を求めている。
休憩時間を含めた1日の拘束時間の上限を13時間としているのである。
深夜12時に退社した場合には、午前11時より前に出社することが許されない。
この「インターバル規制」こそ、労働者の生命と健康を守る重要な基本ルールになっている。
月100時間の残業時間は平日週5日勤務の場合、午前9時から休息1時間をはさんで午後6時までの所定内労働を終えたのち、休息1時間をはさんで深夜12時までの勤務を毎日続けることを意味する。
12時に退社して、翌朝9時には出社していなければならない。
この生活が1ヵ月連続する状況であり、安倍政権はこうした勤務実態を合法化しようとしている。
これでは、労働者の心身の健康、生命を守ることができない。
このような勤務を望むのは、労働者を単なる消耗品としか考えない冷酷な資本だけである。
つまり、安倍政権は主権者=労働者=生活者の側に立って政策を立案しているのではなく、労働者=主権者を、利潤を拡大するための「道具」としか考えない、資本の側に立って政策を立案しているのだ。
この基本姿勢、基本スタンスに問題があるのだ。
高度プロフェッショナル制度や裁量労働制は、労働の生産物に縛りをかけて、労働の仕方を労働者に委ねる制度である。
勤務時間などを労働者が柔軟に選べる制度だとするが、この制度の普及によって、長時間労働が強制されることが懸念されている。
資本の側がこの制度の拡大を求める理由は、この制度の拡大によって、労働コストを削減できると期待するからである。
過大な成果を上げることを労働者に押し付ければ、労働者は望まない長時間労働を強いられることになる。
資本の側は、労働者が長時間労働に従事しても、割増賃金を払う必要がない。
実質的に労働コストを削減できるのだ。
裁量労働制下の労働実態を調べれば、一般労働者の残業時間よりも裁量労働制下の労働者の残業時間が長くなることは容易に想像できる。
そうでなければ、資本の側が裁量労働制を導入しようとは考えないことも容易に想像がつく。
ところが、安倍首相は国会答弁で、裁量労働制下の労働者の残業時間が一般労働者の残業時間よりも短いというデータがあると述べた。
しかし、これは虚偽答弁だった。
その虚偽答弁の拠りどころになったデータが、極めて疑わしいデータであることが判明した。
厚生労働省が「働かせ方改悪」法案を押し通すために、虚偽の情報をねつ造した疑いが浮上しているのだ。
真相を明らかにして、法案の提出を断念することが必要な事態が生じていると言える。
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