貴ノ岩番付降格は合理性・相当性がなく無効
巨大な相撲興行収入に群がるハイエナやシロアリが跋扈して不正がまかり通っている。
現役横綱の日馬富士による現役力士貴ノ岩に対する暴行・傷害事件は立件され罰金刑が科せられた
金属製の重量約2キロの凶器によって繰り返し頭部を殴打した暴行・傷害事件は通常の市民であれば殺人未遂事件として取り扱われたと考えられる。
その場合、犯人は逮捕、勾留され、当然のことながら公判請求される。
懲役刑となることが確実な事案である。
被害者の処罰感情は強く、示談も成立していない。
しかしながら、日馬富士は逮捕もされず、勾留もされず、公判請求もされず、略式起訴で罰金刑となった。
こうした警察・検察の裁量こそ、警察・検察利権の源泉である。
企業が警察・検察OBを天下りで受け入れるのは、こうした「裁量」を獲得するためのものである。
後進国で賄賂が横行しているとの批判があるが、日本ではこれが「天下り」などにかたちを変えてまかり通っている。
日本の警察・検察・裁判所制度は前近代の状況に取り残されている。
三つの重大な問題がある。
第一は、上述の裁量権の問題。日本の警察・検察には、
「犯罪が存在するのに犯人を無罪放免にする裁量権」
と
「犯罪が存在しないのに、無実の人間を犯罪者に仕立て上げる裁量権」
が付与されている。これが第一の問題だ。
「重大犯罪であるのに、これを軽微な犯罪として処理する裁量権」もこれに含まれる。
第二の問題は、日本の刑事司法制度において基本的人権が尊重されていないことである。
1789年のフランス人権宣言に刑事司法の鉄則が明記されている。いまから200年以上も前のことだ。日本の江戸時代後期のことだ。
フランス人権宣言は、罪刑法定主義、適法手続き、無罪推定の原則、法の下の平等などを明記したうえで人身の自由を明記している。
しかし、日本では刑事司法において基本的人権が尊重されていない。
適法手続きもほぼ完全に無視されている。
権力とメディアは「無罪推定の原則」も踏みにじっている。
上述した警察・検察の裁量権は、「法の下の平等」を完全に否定するものである。
第三の問題は、裁判所が政治権力によって支配されてしまっていることだ。
内閣総理大臣が権力を濫用する人物であると、裁判所の独立性が破壊される。
内閣は裁判所裁判官の人事権を握っている。この人事権を濫用することによって裁判所は政治権力の完全支配下に入ってしまう。
これらの現実があり、日本の警察・検察・裁判所制度は前近代に取り残されているのである。
現役力士の貴ノ岩は現役横綱日馬富士による暴行・傷害事件の被害者である。
貴ノ岩に落ち度はまったくなく、日馬富士によって一方的に暴行され、傷害を受けた。
その貴ノ岩の番付が降格された。
これを放置することは許されない。
日本相撲協会は公益財団法人である。公益財団法人は税制上の恩恵を受ける。このことは、政府が日本相撲協会に補助金を支給していることと同等の経済効果を持つ。
日本相撲協会の税負担は通常の法人よりも軽減されている。通常の法人が通常の納税を行い、政府から補助金を給付されることと同じことになる。
言い換えれば日本相撲協会には国民の税金が投入されているということになる。
相撲協会の現役横綱による暴行傷害事件の一方的な被害者である貴ノ岩が暴行傷害のために本場所を休場している。
このとき、日本相撲協会が貴ノ岩の番付を降格することは適正でない。
十両に番付を降格させて、十両の最下位の地位を維持させることを「特例措置」などと説明しているが冗談も休み休みにした方がいい。
報道によると、2017年1月の初場所13日夜に白鵬が付き人を使って貴ノ岩に電話を入れたという。電話の着信を、すぐに「八百長の依頼だ」と察知した貴ノ岩は電話に出なかったのだという。
翌日、貴ノ岩は初顔合わせの白鵬と対戦して勝利した。その結果、白鵬は優勝を逃し、稀勢の里が優勝し、稀勢の里が横綱に昇格した。
このことを根に持った白鵬がモンゴル横綱3名と貴ノ岩に対して粛清を行ったというのが、日馬富士暴行傷害事件の基本構図であるとの理解が、恐らく正鵠を射ているのだろう。
日馬富士だけでなく白鵬の責任が厳しく問われる必要がある。
しかし、巨大利権の巣窟である日本相撲協会にとっては、相撲興行の柱の白鵬を失うわけにはいかない。
貴乃花親方を悪者に仕立て上げて、完全なる被害者でしかない貴ノ岩に巨大な損失を与えて平然としている。
このような悪の巣窟を放置することは、納税者の視点から許されることではない。
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