平和の祭典を政争の具にするべきではない
韓国で冬季オリンピックが開催される。
東京オリンピックを控える日本は、メディアがオリンピックムードを高めようとさまざまな演出を強めている。
ところが、このオリンピックの開会式に安倍首相が出席しないことを検討していると伝えられている。
従軍慰安婦少女像をめぐる日米外相発表について、少女像の撤去が実行されないことについて日本が態度を硬化させていることが背景と考えられる。
しかしながら、本ブログ、メルマガで、日米外相発表の瞬間から指摘してきたように、日米外相発表は、従軍慰安婦少女像の撤去を確約したものではない。
2015年12月29日付
ブログ記事「日韓合意、日本政府謝罪明記でも玉虫決着」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-99db.html
メルマガ記事「日韓合意あいまい決着が問題を再燃させる懸念」
http://foomii.com/00050
2017年1月9日付
ブログ記事「問題根源は2015/12の日韓玉虫合意文言にある」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/201512-1af0.html
メルマガ記事「惨憺たる安倍外交現実の根本原因」
2017年1月10日付
ブログ記事「大事なことを曖昧にするから災いが生じる」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-d219.html
メルマガ記事「あいまい公約と裏切る人物が政治をダメにする」
に、重要事実を指摘してきた。
韓国外相は日米外相発表で従軍慰安婦少女像の問題について次のように表明した。
「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、空間の安寧、威厳の維持といった観点から懸念しているという点を認知し、韓国政府としても可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する。」
韓国政府は「可能な対応方法に対し、適切に解決されるよう努力する」と述べただけで、少女像の撤去を確約していない。
したがって、少女像が撤去されなくても、合意違反にはならない。
日本政府が、韓国政府が少女像の撤去を約束したと主張することには無理がある。
日本政府が少女像の撤去を求めるのであるなら、韓国側が確約するまで粘り強く交渉を続ける必要があるだろう。
日韓外相発表は少女像の撤去を確約していないから、少女像の撤去を日本政府が求めずに、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決された」と日本政府が判断するなら、それはそれで一つの解決になるだろう。
しかし、日本政府が少女像の撤去を求め、これが実現しなければ問題の解決にはならないと考えるなら、日本政府は韓国政府とこの問題でさらに協議を続ける必要が出てくると判断できる。
この見解は、日韓のいずれかの側に立つ見解ではない。
日米外相発表を客観的に読む限り、このように判断せざるを得ないと考える。
韓国政府が少女像撤去に責任を持たないことを理由にオリンピック開会式出席をボイコットするのは大人気のない対応と言わざるを得ない。
日本や米国は北朝鮮の核放棄を求めているが、ロシアのプーチン大統領は北朝鮮は草を食べてでも核開発を続けるだろうとコメントした。
北朝鮮の金正恩総書記はイラクの事例を念頭に置いている。
イラクとイランと北朝鮮は米国のブッシュ大統領から「悪の枢軸」と名指しされた。
イラクは「大量破壊兵器を保有している」と疑われ、その事実が確認されぬまま米国による軍事侵攻を受けて滅ぼされた。
サダム・フセイン大統領は処刑された。
北朝鮮の金正恩氏は、明日は我が身と判断したと考えられる。
そのために、軍事侵攻を「抑止」するための「抑止力」としての核保有に突き進んでいると考えられる。
第2次大戦後、核兵器は戦勝5大国の独占保有体制に移行した。
5大国は核兵器を保有できる。しかし、それ以外の国は核兵器の保有が許されない。これが核拡散防止条約=NPTの体制である。
このNPTの体制そのものが究極の不平等条約体制であるとの批判がある。
しかし、現実には、これ以外に核保有国がある。インド、パキスタン、イスラエルが核保有国と見られている。
北朝鮮の核保有は認められないのに、なぜ、インド、パキスタン、イスラエルの核保有は認められるのか。
実は矛盾に満ちているのである。
東京オリンピックを控えている安倍首相が韓国のオリンピック開会式をボイコットすることは避けるべきである。これが、安倍政治によるナショナリズム扇動に煽られない冷静な主権者の声である。
(ブログ、メルマガの表記方法について多くの声をいただいております。改行が多く、画面スクロールの労力が大きいため、改行を減らしてほしいとの声があります一方で、改行によって「行間を読む」ことができるので、従来通り、改行を多くして欲しいとの声があります。どちらのご意見も傾聴させていただいておりますが、筆者としては、行間の間合いを重視して、再度、改行を多くとる方式を採用させていただきます。あしからずご了承賜りますようお願い申し上げます。)
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