安倍壊憲案核心は緊急事態条項にあり
安倍政権与党が10月の衆院選で3分の2議席を維持したため、安倍政権が憲法改定に進む可能性が高まっている。憲法改正は国会が発議し、国民投票で過半数の賛成があれば成立することになる。国会議席数の上では自公の与党勢力が圧倒的多数を占めているが、主権者である国民の多数が憲法改定に賛成しているかどうかは明らかでない。主権者国民は国会の議席数に左右されずに問題を十分に理解して対応することが必要である。
憲法改定の内容として浮上しているのは
1自衛隊の憲法への明記
2教育無償化の憲法への明記
3参院選地方区の合区解消
4緊急事態条項の創設
であるが、1~3をわざわざ実行する必要性は乏しい。いずれも現行憲法下で対応可能なことである。最大の問題は4番の緊急事態条項である。
緊急事態条項の創設は、内閣総理大臣に独裁権限を付与することを目的とするものである。天変地異、戦乱、あるいは内乱などの事態に際して内閣総理大臣が緊急事態を宣言できることとする。緊急事態が宣言されると、内閣総理大臣はオールマイティの権限を獲得することになる。
法律と同等の効力を持つ政令を制定できる
予算措置を取ることができる
基本的人権を制限できる
議会議員の任期を延長できる。
このような権限が与えられる。
1933年にドイツで全権委任法が制定されてナチスの暴走が加速した。この全権委任法と同等の内容を持つ緊急事態条項が創設される危険は計り知れない。四つの憲法改定具体案を列記したが、もっとも危険なものがこの緊急事態条項である。他の三つの改定案はあってもなくても本質に影響しないが、緊急事態条項だけは違う。
安倍首相はこの緊急事態条項の創設を目論んでいると考えられる。他の三つの改定案は本当の狙いである緊急事態条項創設をカムフラージュするための提案であるとも言える。緊急事態の宣言に客観的な基準は設けられない。内閣総理大臣の腹ひとつで宣言されてしまう代物だ。「内乱等」という表現があるが、たとえば国会を包囲する10万人のデモが実施されるようなときに、これを「内乱等」と拡大解釈して緊急事態を宣言してしまうようなことも否定できない。
重大なことは、緊急事態を宣言すると基本的人権をも制限できることになっていることだ。政治の暴走を牽制するための「表現の自由」、「集会・結社の自由」に制限がかけられることが予想される。国民の意思表示の機会を奪い、政権が法律と同等の効力を持つ政令を次から次に定めてしまえば、国家のあり方が根底から変えられてしまう可能性すら生じる。
このような危険な憲法改定が目論まれている可能性があるのだ。憲法改定が発議されると、賛成、反対の両陣営ともに、メディアを使った情報流布活動が自由になる。改憲勢力は資金力を武器に情報空間を占拠する戦術を採用するだろう。この情報空間の選挙によって主権者が洗脳されてしまう危険もある。
2018年の重要テーマとして憲法改定阻止を改めて明確に掲げておかねばならない。国会の議席攻勢を見ると、憲法改定を阻止することは困難であると錯覚してしまいやすい。しかし、国会議席構成は主権者の意思の分布とは大きくかけ離れている。「民意と議席配分」に大きな「ねじれ」が存在しているのだ。
この点を踏まえると、憲法改定は発議されても国民投票で否決される可能性が高い。この可能性を踏まえて、憲法改定案を否決するべきである。このことは憲法改定を全面否定するものではない。内容が打倒であれば憲法改定を否定する必要はない。正しい方向に憲法を変える「改正」であるなら憲法改定をためらう必要はない。憲法には一切手をつけてはいけないということではない。「改正」ではない「改悪」を認めるべきでないということだ。
2014年12月総選挙、2017年10月総選挙の比例代表選挙で自公の与党勢力が獲得した投票は、いずれも全有権者の24.6%だった。
自公の与党が国会議席の3分の2以上を占有しているが、すべての主権者のなかで自公に投票している者は全体の4分の1に過ぎない。これに対して、野党勢力に投票した者は、2014年12月も2017年10月も自公への投票者を上回っている。このことを踏まえると、自公が提案する憲法改定が国民投票で可決される可能性は高いとは言えないのである。
安倍政権が目指す憲法改定の筋が悪すぎる。とりわけ、緊急事態条項を創設することだけは絶対に阻止しなければならない。そのために、主権者国民に憲法改定案の内容を十分に理解してもらう情報の流布、周知が必要だ。そして、すべての主権者の基本的人権にも関わる内容であるから、すべての主権者が国民投票には参加する必要性も訴えなければならない。
これを確実に実行するなら、憲法改悪は必ず阻止できるはずだし、阻止しなければならない。
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