2017年の回顧と2018年への展望1日本政治
2017年を回顧し、2018年を展望したい。まずは、政治情勢についてである。2017年の最大のハイライトは10月に衆院総選挙が実施されたことだ。安倍政治を退場させることが最大の焦点であった衆院総選挙が実施されたにもかかわらず、これを実現できなかった。この原因を探求するとともに、次の総選挙に向けて抜本的な対応策を構築しなければならない。主権者の多数が「安倍政治を許さない!」と考えている。しかし、この主権者の声、意思が現実の政治状況に反映されていない。その原因を究明し、是正することが必要である。
2018年2月17日の衆院予算委員会で森友学園疑惑についての野党から追及が行われた。時価10億円相当の国有地が、安倍首相夫妻が昵懇にしていた籠池泰典氏夫妻が運営する森友学園に実質200万円で払い下げられていたことが明らかになった。情実による国有地不正廉売疑惑であり、重大な国政上の問題になった。これに追い打ちをかけたのが加計学園疑惑である。安倍首相が「腹心の友」と公言する加計孝太郎氏が経営する加計学園が獣医学部の新設を求めていた。これを安倍首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議が適正ではない手続きで加計学園の獣医学部を新設したとの疑惑が浮上した。さらに、加計学園の獣医学部校舎建設に際しては、工事費が水増しされて補助金が詐取された疑いも指摘されている。森友・加計学園疑惑は政治腐敗の典型的な事例であるとの批判を生んできた。さらに、安倍首相が昵懇にしてきた元TBS社員の山口敬之氏が、準強姦容疑で逮捕状を発付されたにもかかわらず、菅義偉官房長官の秘書官を長く勤め、警視庁刑事部長の職位にあった中村格氏が逮捕執行を中止させていたことも発覚した。これも政治的な背景での捜査妨害ではないかとの指摘を生んでいる。2017年の国内政治は「山かけもりそば疑惑」に始まり「山かけもりそば疑惑」で終わったと言っても過言ではない。
国会は安倍政権のこうした政治腐敗疑惑を追及し、真相を解明する責務を負っている。行政権力の不正を正すのが立法府国会の責務でもある。森友学園問題では疑惑核心に位置する安倍首相夫人の安倍昭恵氏による説明が必要不可欠である。野党はすべての国会審議を止めてでも、安倍昭恵氏による国会での説明を求めるべきであった。主権者国民は野党が安倍昭恵氏による説明が行われるまで、すべての国会審議に応じないとの強い姿勢を示しても、これを容認したはずである。野党の主張に理があるからだ。森友学園問題では加計学園理事長の加計孝太郎氏の説明が必要不可欠である。公明正大でなければならない行政が、私的な関係、私的な利害によって歪められたのなら、当事者である安倍首相の責任が厳しく問われなければならない。さらに、刑事司法への行政権力の介入、捜査妨害は言語道断である。米国ではロシアゲート疑惑に対するFBI捜査について、大統領がこれに言及しただけで大問題として報じられている。警察が請求して裁判所が発付した逮捕状の執行を警察幹部が中止させたことは異例中の異例であり、その真相を究明することは必要不可欠である。中村格氏に国会での説明を求めることも当然に必要だ。
ところが、これらの説明は、何ひとつ実現していない。その背景のひとつは、与党がこれらの説明機会設置を拒絶したことにあるが、真相が究明されて窮地に追い込まれると見られる与党が拒絶するのは当然のことであると考えられる。証人喚問、参考人招致が実現しなかった、いまひとつの背景は、野党の要求が不十分だったことだ。野党が結束して、与党が国会での説明に応じないなら、すべての審議を拒否するとの強い姿勢を示していれば、これらの説明機会が設置されていただろう。国会は審議の場であり、野党といえども審議拒否はするべきでないとの声があるが、与党が数の力で必要な説明機会設置に応じないなどの横暴な議会運営をする場合には、主権者国民にその横暴さを知らせるために、野党が審議拒否などの対応を示すことは認められる。国会は国権の最高機関であり、行政権力は国会での真摯で丁寧な説明をする責務を負っている。
安倍政権は通常国会末尾に共謀罪新設法案を強行採決によって強引に可決・成立に持ち込むとともに通常国会を一方的に閉幕した。野党は森友・加計学園疑惑の解明が不十分であるとして臨時国会召集を要請した。安倍政権は日本国憲法第53条の規定により、臨時国会の召集を義務付けられていたが、9月末まで国会を召集しなかった。その安倍政権は9月28日にようやく臨時国会を召集したものの、その冒頭で国民の異論を無視して、衆院解散を強行した。所信表明演説も代表質問もなく、野党が要求した「森友疑惑」や「加計疑惑」の審議を一切行わない前代未聞の暴挙に突き進んだ。そして、10月22日の衆院総選挙で与党が3分の2議席を確保したことから、すべての問題に蓋をしてしまう対応が示されている。これが2017年国内政治の概要である。
衆院総選挙で、安倍政治が主権者国民によって全面的に支持されたのなら、問題不問は国民の意思であると言ってもよいだろう。しかし、選挙結果の議席配分と主権者国民の投票状況に深刻な「ねじれ」がある点を見落とすわけにはいかない。安倍政権与党は衆院議席の3分の2を占有したが、主権者国民の投票で圧倒的支持を得ていない。比例代表選挙での自公の得票は、全主権者の24.6%に過ぎない。野党4党の得票率25.2%を下回っている。与党が多数議席を獲得したのは、小選挙区で与党が候補者を一人に絞ったのに対して、野党陣営が複数候補を擁立し、与党候補が漁夫の利を得た結果なのである。つまり、主権者多数に支持されて安倍政権与党が勝利したわけではないのである。重要なことは、主権者国民の声を正当に国会議席数に反映させることであり、そのための方策を講じることが重要で、最優先されるべきである。2018年は、この問題の是正を確実に実行しなければならない。
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