「判決に従う」辺野古和解条項効力はすでに消滅
10月16日に新潟県知事選が投票日を迎える。
臨時国会では補正予算審議が終了し次第、TPP関連法案の審議が始まる。
他方、沖縄では高江のヘリパッド建設が強行され、辺野古米軍基地建設も進められている。
重大問題が同時進行し、息をつく暇もない。
原発、憲法、TPP
基地、格差
という5大問題で、安倍政権が暴走を続けているのだ。
安倍暴政を止めるには、この5大問題で安倍政治に対峙する主権者、政治勢力、市民運動が連帯して対応することが必要である。
既存の政治勢力のうち、民進党などの「あいまい勢力」を分断して、
旗幟を鮮明にさせる
ことが必要不可欠である。
原発、TPP、基地のいずれの問題も極めて重大であるが、今回は米軍基地問題に焦点を絞る。
そのカギを握るのは翁長雄志沖縄県知事である。
翁長氏の公約は
「辺野古に基地を作らせない」
ことだ。
そして、翁長氏は
「あらゆる手法を駆使して基地を作らせない」
方針は不変であるとしている。
この方針を踏まえると、問題になるのは本年3月4日の国と沖縄県との「和解」の内容である。
和解条項第9項に次の記述がある。
9 原告(国)および利害関係人(沖縄防衛局)と被告(沖縄県)は、是正の指示の取り消し訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文およびそれを導く理由の趣旨に沿った手続きを実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する。
3月9日付の琉球新報は、この和解条項第9項について、
翁長知事は和解が及ぶ範囲について
「裁判所の判決には行政として従うと話したが、承認取り消しに伴う2件の訴訟の和解だ。
今後、設計変更などいろいろあるが、法令に従い適正に判断する。
今日までの(新基地建設反対の)姿勢を持ちつつ対処していきたい」
と述べたと伝えている。
ところが、この「和解」成立後に状況が大きく変わった。
「和解」の第3項は「係争委への審査申出」を定めている。
沖縄県はこの条項に従い、係争委への審査申出を行った。
「和解」は、
「同委員会が是正の指示を違法でないと判断した場合」(第5項)、
「同委員会が是正の指示が違法であると判断した場合」(第6項)
に、国と県がそれぞれ「取消訴訟を提起する」とし、
その判決(主文および理由)に両者が従う(第9項)
ことを定めた。
しかし、「国」と「沖縄県」の「争い」を審査していた国地方係争処理委員会が6月17日に、どちらの主張に正当性があるかの判断を放棄してしまった。
そして、安倍政権は7月22日に承認取消を取り消すことを求める国による是正措置に従わない沖縄県の不作為が違法であることを確認する訴訟を起こした。
その高裁判決が9月16日に示された。
国の訴えを認める判断だった。
つまり、安倍政権は7月10日の選挙までは「和解」で紛争を一時停止しておき、選挙が終わると直ちに委員会の審査を打ち切り、訴訟に打って出て、裁判で勝利して辺野古米軍基地建設を強行しようとする姿勢を強めているのである。
「和解」に「判決に従う」ことが書かれており、仲井真知事による埋立承認に瑕疵がないと裁判所が判断すれば、辺野古基地建設を強行できるとの読みでこれらのプロセスが誘導されたものと言えるが、こうした国主導のプロセスを容認していたのでは、とても「辺野古に基地を作らせない」の公約を実現することはできない。
国地方係争委が判断を放棄した時点で、3月4日の「和解」は効力を失っている。
国と県が真摯に協議することが和解の核心であり、その協議が放り出された時点で翁長知事は和解の効力が消滅したことを宣言しなければならなかった。
これまでの対応では、翁長知事の対応の「不適切さ」が浮き彫りになっている。
上記のことがらに限っても、
1.「判決に従う」という「和解」は、「あらゆる手法を駆使して辺野古に基地を作らせない」公約の重大な支障になり、この「和解」条項そのものに重大な欠陥がある。
2.係争委が判断を放棄した時点で、翁長氏は和解の効力喪失を宣言する必要があった。
3.違法確認訴訟で国の訴えが認められる可能性が高いことを踏まえて、埋立承認の「撤回」を行うことが必要である。
の3点を指摘できる。
本当に「辺野古に基地を作らせない」公約を守る考えを有するなら、「埋立承認撤回」に進む必要がある。
翁長氏の「本気度」を厳しくウォッチしなければならない。
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