米国大統領選を正しく理解するためのABC
米国の大統領選まで1ヵ月を切った。
2度のテレビ討論が実施されたが、世論動向を誘導しているのは「情報戦」である。
クリントンを支援する側が手持ちの情報を大統領選直前にリリースしている。
そして、マスメディアは総力を結集してトランプ氏選出を阻止しようとしている。
通常の大統領選とはまったく様相が異なっている。
その理由は単純である。
トランプ氏が米国の支配者の傘下にはない候補者だからである。
トランプ氏にはこれまでに多くのアプローチがあったはずだ。
そのアプローチを受け入れて「支配者」との「取引」に応じていれば、選挙は通常の段取りで実施されたと考えられる。
しかし、トランプ氏はそれを拒絶したと見られる。
その結果として、メディアが総力を挙げてトランプ潰しに動いている。
これが米国政治の実態であることを私たちはしっかりと認識しておく必要がある。
米国は自由と民主主義を重んじる国であるとの建前は維持されている。
しかし、その「自由と民主主義」は巧妙に構築された箱庭のなかの造作物であって、制約のない、普遍的な「自由と民主主義」ではない。
米国の大統領は民主党、共和党の統一候補からしか選出されない。
ここに重要なトリックがある。
民主党と共和党の党内手続きを経て選出された統一候補でなければ、大統領選の本選で勝利することができない。
そのプロセスのなかで、米国の支配者が容認する候補者がノミネートされて両党の指名候補者となる。
この手続きが順調に実現すれば、後は「自由投票」に委ねればよい。
しかし、その党内手続きに失敗する事例が生じ得る。
それが今回の大統領選である。
そもそも、共和党の統一指名候補にトランプ氏はノミネートされていなかった。
そのトランプ氏がよもやの大統領候補に指名されたのである。
正規の党内手続きを経てトランプ氏が選出された以上、これを破壊することには無理がある。
民主党ではバーニー・サンダース氏が巨大権力の支配下にはない候補だった。
しかし、クリントン氏は大統領候補指名権を有する特別代議員の票を早期にまとめてしまっていたから、サンダース氏が統一候補に指名される「リスク」は限定的であった。
クリントン氏は本選で当選を果たすには、サンダース支持票を獲得する必要があり、そのために、「TPP推進」の本音を覆い隠して、表面上は「TPP反対」の旗を掲げたのである。
党の指名選挙に敗れたサンダース氏が、どのような経緯でクリントン候補を支援するに至ったのかは明らかでないが、クリントン氏をTPP反対に留め置くためにサンダースがクリントン候補を支持し、大統領選後のクリントン氏の行動を監視しようとの判断を保持した可能性が高い。
サンダース氏のこれまでの言動からは、サンダース氏がクリントン氏との「取引」に応じたと推察することは難しいからだ。
トランプ氏とクリントン氏の主張の相違点のうち、とくに重要なのが次の2点だ。
第一は、クリントン氏が本音ではTPP推進であるのに対してトランプ氏がTPP拒絶であること。
第二は、クリントン氏が、世界の警察としての米国の役割を維持しようとしているのに対して、トランプ氏が明確に内向き指向を示していることだ。
この二点は、いずれも米国を支配する巨大資本の利害の琴線に触れる事項である。
米国を支配する巨大資本が、目の前の果実として呑み込もうとしているのが
「TPPによる日本完全収奪」
である。
そして、米国を支配する巨大資本にとって、最重要の食材は年間50兆円を超える米国の軍事支出なのである。
トランプ氏は、目の前にあるご馳走の載ったテーブルをひっくり返そうとしている。
その判断から、巨大資本が総力を結集してトランプ大統領誕生阻止に動いていると考えられる。
巨大資本に余裕がなくなっている。
誰の目にも分かり得る「工作」が多様に展開されている。
この傾向は2001年9月11日から極めて顕著になっている。
こうした視点から米国大統領選を眺めておかないと、本質を見誤るのである。
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