米国のポチだけがTPP早期批准を目指す
臨時国会が召集された。
会期は11月30日までの66日間。
冒頭で補正予算が審議されるが、安倍政権が最優先事項に位置付けるのはTPPである。
TPPは12ヵ国で最終合意をまとめ、本年2月4日に署名された。
署名から2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効する。
しかし、2年以内にこうした手続きを終えることができない場合、12ヵ国のGDPの85%以上を占める、少なくとも6か国が手続きを終えると、その時点から60日後に協定が発効する。
12ヵ国のGDP合計額に占める比率は日本が17.7%、アメリカが60.4%であり、この2ヵ国のいずれかが批准手続きを終えない場合、残りの国がすべて批准手続きを終えてもGDP比85%に届かない。
TPPは流れることになる。
また、日米が批准手続きを終えても、他に4ヵ国以上が批准手続きを終えなければTPPは発効しない。
TPP発効には日米両国の批准が必要不可欠であるが、最重要国である米国の批准見通しが立っていない。
オバマ大統領は任期中のTPP批准を目指すし姿勢を崩していないが、非現実的な願望の域を出ない。
米議会下院のマコネル共和党上院院内総務は、8月25日に、
「TPPにはいくつかの深刻な欠陥があり、年内は動かない」
と述べるとともに、
「次期政権がTPPの内容を修正する可能性がある」
と指摘した。
さらに、共和党の実力者であるライアン下院議長もTPPの内容を修正しない限り審議には応じないとの方針を示している。
つまり、オバマ政権下での米国のTPP批准は絶望的な状況にあり、大統領選後に米国がTPPを承認することがあるとすれば、必ず、TPP最終合意文書が修正されてからということが想定されている。
TPPが日本にとって大きなプラスを与える内容であるならともかく、大多数の日本の主権者は日本のTPP参加を求めていない。
この状況下で、日本が先行してTPPを批准する必要はない。
「必要がない」というよりも、正確に表現するなら、「日本はTPPを批准するべきでない」ということになる。
なぜなら、TPPは日本の主権者に
百害を与え、
一利を与えない
からである。
自民党は2012年12月の衆院総選挙に際して、6項目の公約を掲げた。
「わが党は、TPP交渉参加の判断基準を明確に示します」
TPP交渉参加の判断基準
1 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
2 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
3 国民皆保険制度を守る。
4 食の安全安心の基準を守る。
5 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
6 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
日本政府が署名したTPP最終合意文書は、上記の自民党公約に全面的に反するものである。
1.農林水産物について、重要5品目が明示され、「聖域」として関税を守ることが公約に示されたが、TPP最終合意では1品目も「聖域」として関税撤廃の除外項目にはならなかった。
2.TPP交渉に参加する前に行われた日米事前協議で、日本は自動車輸入等について数値目標を明示した。
3.「いつでも、だれでも、どこでも」必要十分な医療を受けることができる現在の国民医療保険制度が崩壊する可能性が極めて高い。
4.食の安全安心の基準は崩壊する。
5.国の主権を損なうISD条項が盛り込まれている。
6.政府調達において外資への全面市場開放が行われ、金融サービスにおいては外資を優遇するする措置がすでに採られている。
これが現実であり、TPPは安倍自民党の政権公約に全面的に反するものになっている。
また、米国では共和党の大統領候補であるトランプ氏がTPP拒絶を明確にしており、クリントン氏も現時点ではTPP反対を表明している。
日本の国民に不利益を与えるTPP。
米国が批准することがあるとすれば、現在の最終合意とは異なる修正後のものへの批准になる。
日本がいま批准してしまうと、米国による修正後のTPPへの参加を検討する機会を失う。
これは日本の主権者の利益を損なうことだ。
臨時国会でのTPP批准は絶対に許されない。
TPP批准を阻止するには、主権者が動かなければならない。
安倍政権のTPP暴走を絶対に止めなければならない。
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