G7サミットより重要性高いG20サミットのゆくえ
昨年来、世界の金融市場は大きく動揺してきた。
その激動の震源地は中国だった。
中国の代表的な株価指標である上海総合指数は2014年7月の2000ポイント水準から2015年6月の5178ポイントへ、1年間で2.6倍の大暴騰を演じた。
いわゆる「バブル」が発生したわけだが、このバブルが2015年6月以降に弾けた。
上海総合指数は2016年1月に2638ポイントにまで下落した。わずか半年で半値水準に暴落したのである。
中国の株価急落に連動して2015年8月以降、世界の株価が急落した。
上海総合指数は8月にかけて3000ポイント割れにまで急落したあと、11、12月にかけていったんは3700ポイント近くにまで反発したが、12月から1、2月にかけて2600ポイント近くにまで再反落した。
米国株価は昨年8月に一時的な急落を演じたほかは、総じて堅調に推移したが、日本や欧州の株価は中国株価に連動するかたちで激しい変動を演じたのである。
昨年末から本年前半にかけては、
「中国メルトダウン」
の言葉が一世を風靡した。
この種のタイトルの著書も数多く刊行された。
エコノミストの多くが中国メルトダウンと世界金融危機の再来を予測したのである。
これに対して私は、逆に中国経済の底入れ可能性を指摘し続けた。
「メルトダウン」の断定は時期尚早であることを指摘し続けたのである。
現実には上海総合指数は本年1月の2638ポイントを底に、その後は堅調な推移をたどってきた。
7月以降は3000ポイント上回る水準で推移している。
また、6月23日に英国の国民投票がEU離脱の意思を示した際にも、金融市場は動揺し、やはり「世界金融危機」の到来を唱える者が続出したが、この英国国民投票ショックも、これまでのところ一時的な影響しか示していない。
「金融危機到来」はキャッチ―なコピーであり、本を売るにはうってつけの言葉かも知れないが、そんなに頻繁に金融危機に到来されても困る。
2016年は世界金融危機の年とされてきたが、少なくとも、現時点までの期間においては金融危機は到来していない。
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
においては、本年2月26‐17日に中国の上海で開催された
G20財務相・中央銀行総裁会議
が極めて重要な意味を有したと指摘し続けてきた。
本年5月末には伊勢志摩サミットが開催され、安倍晋三氏はこれを懸命にアピールしたが、伊勢志摩サミットでは政策合意は形成されなかった。
安倍氏が述べた「リーマン危機時と類似している」の指摘はサミット参加首脳から否定され、安倍氏が取りまとめようとした財政政策発動も他国の首脳に受け入れられなかったのである。
これに対して、2月開催のG20会合では、声明において
「世界経済の下方リスクと脆弱性が高まっている。世界経済の見通しが更に下方修正されるリスクへの懸念が増大している」
ことが明記され、
「世界経済の成長という共通の目的を実現するため、更なる行動が必要であることに合意する」
と記述された。
さらに、この認識の上に、
「成長、投資及び金融安定の強化の目標を達成するため、すべての政策手段‐金融、財政及び構造政策‐を個別にまた総合的に用いる」
とも明記された。
世界経済の潮流は本年2月のこのG20会合を転換点に、緩やかな転換点を形成している可能性がある。
私はこの可能性を指摘し続けてきた。
日本のメディアは意図的に大きく取り扱わないが、この9月4日から中国の杭州でG20首脳会議が開幕した。
こちらが本当の意味でのサミットである、。
G7サミットは以前はG8でロシアが参加していたが、ロシアも排除された。
G20にはロシアも中国もブラジルもインドも南アフリカも含まれる。
韓国、オーストラリアもメンバーである。
世界経済全体の方向を考えるなら、もはやG7ではなくG20が重要である。
そのG20の首脳会議が中国で開幕した。
5日に採択される首脳宣言では持続的な成長の実現に向けて、各国が「金融・財政、構造政策といった全ての政策手段を活用する」との決意が盛り込まれる見通しである。
日本の経済専門紙と呼ばれる媒体はG20サミットを詳しく報じないが、世界経済動向を洞察する上では、G7サミットよりもG20サミットを重視するべき時代になっている。
こうした視点の遅れが経済の洞察力を失う原因になっている。
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