安倍首相は独でなく日の超緊縮財政を是正すべし
安倍首相はゴールデンウィークに外遊し、5月26-27日の伊勢志摩サミットでの政策合意形成を目論んでいる。
ドイツのメルケル首相との会談では、ドイツによる財政出動の合意を得ることを目指していることを表明している。
主要国による政策協調を安倍首相がリードするとの思い入れがあるのだとメディアは伝えている。
ところが、安倍政権の足元にある日本経済は、とても他国に範を示すどころの状況ではない。
第2次安倍政権は2012年12月にスタートして、3年半の時間を経過したが、「アベノミクス」の掛け声が虚(うつ)ろに響くだけで、その実績は惨憺(さんたん)たるものである。
そして、安倍首相は伊勢志摩サミットで主要国による財政出動の政策合意を形成しようと意気込んでいると仄聞(そくぶん)されるが、当の日本の財政政策そのものが、全体として超緊縮になっていることが、あまりにも皮肉である。
つまり、安倍首相は日本の経済政策の現状さえ正確に把握することなく、他国に行って、他国の経済政策に注文をつけるという失態を演じているのである。
さらに、日本では2017年4月の消費税再増税の旗をまだ降ろしていない。
消費税10%見送りを、サミットで発表するために温存している可能性はあるが、日本の財政政策が全体として超緊縮の状況にありながら、他国に積極財政を求めるのは、あまりにもぶざまと言わざるを得ない。
他国の経済政策に注文をつける前に、アベノミクスを総括し、根本的な反省をすることが先決である。
2012年末にスタートした「アベノミクス」は
1.金融緩和強化によるインフレ誘導
2.財政出動による日本経済回復
3.成長戦略による成長の誘導
の三つの方針を明示した。
しかし、
1.インフレ誘導は結局のところ、失敗に終わった。
2.財政政策は2013年に積極策が実施されたが、2014年以降は超緊縮に転じ、日本経済を不況に逆戻りさせた。
3.成長戦略とは、資本の利益の成長であって、主権者国民の所得の成長を目指すものでなかった。
要するに、アベノミクスの評点は
ゼロ
に近い。
2012年11月から2015年6月にかけて、
円安が進行し、日本株高が実現した。
一般的には、これがアベノミクスの成果だとされるが、本質は違う。
米国金利が上昇して円安が生じ、この円安が日本株高をもたらしただけである。
2015年6月を転換点にドル円レートは円高に転じた。
これに連動して日本株価も下落に転じた。
こうなると、安倍政権にはなす術がない。
円高が進行して日本株価が下落に転じて、日本経済が最悪の状況に移行しつつある。
事態悪化を食い止めるには、日本の財政政策を「超緊縮」から「中立」ないし「積極」に転換する必要があるが、安倍政権はその政策転換の方針すら示していない。
国の財政政策を示す一般会計の推移を調べると、2016年度は強度の緊縮財政を示しており、この緊縮を是正するには7兆円規模以上の補正予算編成が必要である。
安倍政権は熊本地震に対応して、急遽、補正予算を編成する方針に転じたが、その補正予算の規模は1兆円程度であり、この程度の補正予算編成では、2016年度の超緊縮財政政策運営は変化しない。
主要国に財政出動を求めるなら、日本が率先して範を示す必要があるが、その姿勢はまったく示されていない。
「財政出動」の言葉を聞くと、直ちに「利権支出バラマキ」、「コンクリート投資=公共事業バラマキ」を連想する人が多いが、その発想を転換する必要がある。
財政支出が求められているのはプログラム支出=社会保障支出なのだ。
「保育所落ちた」の声が日本中に響き渡っている。
所得の少ない世帯の大学生の多くが多額の奨学金による多重債務者に追い込まれる現実がある。
1人親世帯の子どもの貧困はOECD加盟国のなかでも最悪の状況にある。
日本の主権者の生活最低保障水準を引き上げるために、積極財政を展開するべきなのだ。
他方、利権支出=天下り関連予算=利権公共事業予算は徹底的に切り込むべきなのだ。
日本の経済政策が零点の状態にあるのに、他国の経済政策に注文をつけるのは100年早い。
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