米国大統領選とTPPと安倍政権拙速の愚
米国大統領選挙は本年11月8日に投票日を迎える。
バラク・オバマ大統領が2期8年を務めたあとの米国大統領に誰が就任することになるのか。
バラク・オバマ大統領は民主党の所属しているが、第2次大戦後の米国で同一政党から3期12年大統領を輩出したことは一度しかない。
1981年から1992年にかけて、ロナルド・レーガンとジョージ・ブッシュが3期12年を務めたときだけである。
現在、米国の上下両院は共和党が多数を握っている。
2008年の大統領選でオバマ氏が格差是正を掲げて大統領に選出された。
それから7年の時間が経過したが、期待通りの成果は得られていない。
米国国民の不満は蓄積しており、格差問題も一向に改善の姿が見えていない。
政党の性格からすれば、格差是正をより強く唱えているのは民主党であるが、民主党のオバマ政権が格差是正に十分有効な対応を示すことができなかったことから、米国国民が変化を求めていることも推察される。
また、ワシントンのエスタブリッシュメントが米国政治を支配することに対する反発も強まっている。
「反エスタブリッシュメント」
も今回の米国大統領選を占うひとつのキーワードである。
この二つのことがらが、ドナルド・トランプ氏の躍進を支えているのだと思われる。
民主党では当初から優勢を伝えられていたヒラリー・クリントン女史が、バーニー・サンダース氏の猛追を受けている。
サンダース氏は格差是正を前面に掲げる、自称民主社会主義者である。
若者層がサンダース氏を強く支持している。
問題は、サンダース氏が74歳と高齢であること。
サンダース氏が50代であれば、支持の広がりがまったく違ったのではないだろうか。
共和党のトランプ氏も、格差問題を重要視し、ウォール・ストリートの巨大金融機関に対する課税強化などの政策提案を掲げている。
トランプ氏は、反移民、反自由貿易、反ウォール・ストリートの主張を掲げて、経済的苦境に直面する中低所得者層の支持を広範に集めている。
民主党に期待した格差是正がオバマ政権下で十分な成果を上げなかったことが、この点を引き継ぐ姿勢を示すトランプ氏の支持につながっているとも言える。
トランプ氏のイメージは、1981年の選挙で大統領に選出された元俳優のロナルド・レーガン氏に重なる部分がある。
政治の専門家、ワシントンのエスタブリッシュメントではない人物が、全米の広範な支持を得たケースである。
トランプ氏が大統領選当選を意識して、当選に支障が出るような過激な部分を表面化させない戦術を採る場合には、トランプ氏が選出される可能性も浮上する可能性があると思われる。
格差拡大が進行する米国で、いわゆる反エリート、反エスタブリッシュメントの市民感情が強まっている。
大統領選でのひとつの特徴として浮上してきたことがある。
それは、TPPに対する批判的な論調の強まりである。
共和党の主流派は自由貿易を推進し、したがって、TPPには基本的に賛同する者が多い。
しかし、共和党右派とも言えるリバタリアンは徹底して経済活動への政府の介入を嫌う。
TPPは自由貿易を謳いながら、経済活動のさまざまな側面で、政府による規制、政府による介入を強化する側面を持つ。
また、ISDS条項は政府による決定をTPPという枠組みが国家の外から破壊するものである。
この点に対する批判も強い。
トランプ氏は反ウォール・ストリート、反自由貿易の主張と受け止められる主張を展開しており、その骨子は民主党候補ではないかと見まごう部分がある。
民主党候補のヒラリー・クリントン女史は、TPPに為替条項が盛り込まれなかったことを重視してTPP反対の考えを表明した。
クリントン氏は、日本や中国が自国の輸出が有利になるように自国通貨の下落を誘導しており、このような為替操作を禁止する条項を盛り込んでいないTPPには反対するとの意向を示したのである。
大統領選の候補者のなかでTPPに前向きな姿勢を示しているのは、共和党のマルコ・ルビオ氏くらいのものになっている。
米国のTPP批准協議は本年11月の大統領選以降にずれ込む可能性が高い。
その状況下で、日本がTPP批准を急ぐ理由は皆無だ。
TPPの影響評価すらできていない。
影響評価ができていないのに、TPP対策の予算が計上されること自体がおかしい。
これは、単なる参院選向けの買収資金予算であると言わざるを得ない。
日本のTPP拙速批准を何としても阻止しなければならない。
続きは本日の
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