賞味期限3日日銀政策と安倍政権の下り坂
1月30日付ブログ記事およびメルマガ記事
「政治支配下日銀のマイナス金利政策賞味期限」
「黒田日銀のマイナス金利導入政策に関する考察」
に、
「マイナス金利導入で、目先は局面の変化があり得るが、弥縫(びほう)策の域を出ない」
と記述した。
安倍政権が甘利明経済相の「政治とカネ」スキャンダルに伴う閣僚引責辞任で根幹が揺らぐなかで、安倍政権支配下に置かれている日銀が政治的に動いた。
安倍政権が起用した日銀政策決定会合のメンバーだけが賛成して、マイナス金利導入を決めた。
極めて筋の悪い政策決定である。
その政策決定による円安誘導・株高誘導の効果は3日しかもたなかった。
賞味期限3日の悲惨な政策決定になった。
1月30日記事に記述したように、事態を打開するには、安倍政権の経済政策路線の根幹を転換する必要がある。
第二次安倍政権は3年の時間を経過して長期政権となっているが、政権発足以来の「登り坂」はすでに終焉している。
昨年6月から8月が頂点で、すでに「下り坂」に転じている。
この「下り坂」がいつか「まさか」に転じることになる。
振り返って見て、「登り坂」から「下り坂」への明確な転換点を形成したということになると思われるのは、
昨年9月19日の戦争法制=安保法制の強行制定ということになるだろう。
日経平均株価は政権発足の事実上の起点である衆院解散決定の2012年11月14日が8664円。
これが、2015年6月24日に20868円、8月10日に20808円を記録した。
ドル円レートは、政権発足時点が1ドル=78円で、これが2015年6月に1ドル=125年台をつけた。
政権の「登り坂」は、
ドル円が1ドル=78円から1ドル=125円へとドル高に推移し、
日経平均株価が8664円から20868円に上昇した時期と重なることになる。
このドル円と日経平均株価が、昨年6月から8月を境に方向を変えた。
ドル円は1ドル=115円へ、日経平均株価は16000円に反落している。
政権運営の暴走が頂点に達したのが昨年9月19日である。
憲法の内容を憲法改定によらず、憲法解釈の変更によって変えてしまうという、「立憲主義の否定」=「憲法の破壊」に突き進んだのである。
2月5日、米国の1月雇用統計が発表された。
非農業部門の雇用者増加数は15.1万人にとどまった。
巡航速度での経済成長が維持されている際の雇用者増加数を20万人と考えると、米国経済も減速傾向を強めつつあることが改めて確認された。
1月29日に発表された米国の2015年10‐12月期GDP成長率は年率0.7%となり、7-9月期の2.0%から急減速した。
米国では昨年12月に、ついに利上げに着手されたが、このころから景気の減速が鮮明になり始めているのである。
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
では、昨年6月以降、ドル円でのさらなる円安進行の可能性が低いことを指摘してきた。
そして、他通貨に対する日本円の変動を見る限り、
「もはや円安ではない」
状況に移行していることを指摘してきた。
安倍政権の政権発足後の「登り坂」は、円安と共に存在したのである。
その円安の一部は、安倍政権が推進した金融緩和によっても促されたものであるが、主因は米国の金利上昇にあった。
米国金利上昇によるドル高=円安という「波」に上手く乗ることができたことが、安倍政権の「登り坂」を支えたのであるが、ドル円は購買力平価をはるかに超えて円安に振れた。
陽極まれば陰に転ず、
そして、
陰極まれば陽に転ず
のが世の常である。
為替の基調は「円安」から「円高」に転換している。
このことを明確に認識して経済政策を運営しなければ、日本経済の健全な運営は不可能である。
たそがれのアベノミクス。
根本を変えなければ「下り坂」は止まらない。
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