人手不足でなく規制緩和の行き過ぎがバス事故原因
バス事故に関連して、
「人手不足」
の言葉が流布されている。
介護の現場でも、しばしば
「人手不足」
の言葉が使われる。
しかし、これは、問題の本質をすり替える、
責任隠ぺいの論議であるから十分な注意が必要だ。
問題の本質は「人手不足」ではなく「労働条件の悪さ」なのだ。
ツアーバスの運転手の仕事でもいい。
介護の仕事でもいい。
たとえば、給料を2倍にしてみるがいい。
たちまち人手不足は解消するはずだ。
応募者が殺到するだろう。
極端な例を考えれば、物事の本質が見えてくる。
給料を10倍にしてみよう。
もっとはっきりと求職者が増加するはずである。
つまり、問題の本質は、過酷な労働に対して、正当な対価、正当な賃金が提供されていないところにある。
介護の現場も、常に人手不足が叫ばれている。
それは、国が介護の仕事の賃金水準を人為的に抑制しているから発生している現象で、過酷な労働に見合う正当な賃金を設定すれば、たちどころに解決する類の問題である。
介護の仕事も、深夜のツアーバスの運転の仕事も、いずれも極めて過酷な労働である。
しかし、現状では、これらの過酷な労働に対して、十分に正当な賃金が支払われていない。
ツアーバスの場合には、競争促進の市場原理至上主義の経済政策、規制撤廃政策が推進されてきた結果、過当な価格競争が生じ、安全確保のための対応がおろそかにされてきたのである。
ドライバーの安全、確実な業務遂行を実現するには、さまざまな取り組みが必要である。
一言で言えば、優良なドライバーを採用できるほどに、ドライバーの仕事への求職者が存在することが必要である。
十分に納得のゆく賃金を支払う。
ドライバーの健康状態に問題が生じないための、勤務状況を確保することも必要だ。
正当な休息、十分な睡眠を確保しなければ、安全な乗客輸送など実現しようがない。
また、冬の凍結期のバスツアーであるなら、交通の難所として知られる、碓氷峠旧道である一般道を走行するようなコース選定などあり得ない。
高速道路ではなく一般道を走行して事故が発生したが、一般道を走行した理由は、経費の節約以外には考えられないのである。
現実には、経費を節約するために一般道を走行したと考えられる。
また、大型バスの運転経験の少ないドライバーを雇用することになった背景には、この企業が提示する条件で求人に応じた労働者が少なかったことが考えられる。
もちろん、事業者に責任がなかったなどと言うつもりはない。
乗客の生命を預かる仕事である以上、規制がどのように設定されているのであれ、そのような制約条件とは関わりなく、乗客輸送の絶対安全を確保するための行動を確実に取ることは、企業の社会的責任の範疇に入ることだ。
今回の事故を引き起こした企業の責任は厳しく問われなければならない。
しかしながら、このような事故が発生した背景に、政府の大きな責任があることも、また、紛れもない事実なのである。
人の命にかかわる仕事であるのだから、安全に対する絶対的な規制基準が必要である。
ドライバーとして勤務する労働者の処遇についても、一定の基準を設定しなければ、上記したような理由で、十分な人材確保が不可能になる。
こうした規制基準を設定せずに、十分な人材を確保できず、事故が発生したときに、これを
「人手不足」
の一言で片づけるわけにはいかない。
新自由主義経済政策=効率至上主義経済政策
の推進によって、日本社会に大きな歪みが生まれていることを、私たちは認識しなければならない。
そのうえで、効率至上主義の市場原理主義、規制撤廃至上主義の闇を明らかにして、その是正を図らなければならない。
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