高速代・燃料代込み報酬支払いの形態だったのか
バス事故の原因究明が進められている。
前途有望な若者が尊い命を失い、また、多くの若者が負傷を負った痛ましい事故である。
亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方の一刻も早い回復を祈念する。
事故現場から250メートルほど手前を猛スピードで走行するバスの映像も公開された。
ブレーキランプが点灯したままであること、
ブレーキに異常が発見されていないこと
などが報じられている。
原因の究明は、今後の捜査を待つ必要があるが、本ブログ、メルマガでは、規制緩和の行き過ぎ、市場原理主義の行き過ぎが、労働条件の悪化をもたらし、これが事故の遠因になったのではないかとの見解を示してきた。
夜間のバス運転は極めて過酷な労働である。
条件が一定であるなら、走行が容易な高速道路を走行せずに、一般道路を走行することは考えにくい。
とりわけ、事故発生地点は交通の難所のひとつとしてよく知られる碓氷峠を通過した直後の地点である。
平坦な道路状況の良い個所で高速道路ではない一般道路を通行することなら、さほど不自然ではないが、一般道路と高速道路の走行状況に大きな隔たりがあるこの箇所で一般道路を通行した理由は分かりにくい。
会社が高速道路料金を負担して、どちらを選択しても、運転手の賃金に差が生じないなら、普通は高速道路通行を選択するだろう。
ところが、このバスの運転手は一般道路を選択した。
バス会社は、高速道路料金は会社が負担するので、一般道を選択した特別の理由はないとの見解を示しているようだが、実態をもう少しよく調べる必要があるだろう。
公開された映像では、猛スピードで走るバスが、ブレーキランプを点灯したままであったことを示している。
運転手がバスのクラッチを切って走行すると、車は傾斜地の場合、重力によってエンジンブレーキがかからない状況で走行する。
エンジンブレーキがかからない状況であるから、当然のことながら加速し、猛スピードが出る。
スピードを抑制するにはブレーキを踏むしかない。
通常はエンジンブレーキを利かせて、できるだけブレーキを踏まずに走行することが安全運転の鉄則だ。
ブレーキを踏み続けると、ブレーキが利かなくなってしまう事態が発生しやすいからである。
仮に、クラッチを切った状況でバスを運転していたとするなら、その理由は何か。
考えられるのは、ガソリンの節約である。
下り坂でクラッチを切ると、重力でバスは速い速度で走行する。
しかし、下るエネルギーは重力であるから、ガソリンはほとんど消費しない。
アイドリングの状況と変わらぬ程度しかガソリンを消費しないのである。
これはあくまでも仮説であるが、運転手に対する支払いが、高速道路代、ガソリン代込みで支払われていたとするとどうか。
運転手は高速道路代とガソリン代を節約すればするほど、自己の収入が増えることになる。
このようなシステムが採用されているなら、
走行が楽な高速道路を選択せずに、一般道路を選択すること
も
下り坂でクラッチを切って運転することも考えられることになる。
あくまでも仮説にすぎないが、このバス会社の運転手への支払い方式をチェックしてみる必要はあると思われる。
過当競争で優良な人材を確保することが難しい。
そうしたなかで、このような「インセンティブ」を付与する方式が編み出されたとの推理を一笑に付すことができないのではないか。
会社が一般道路の走行を規定することは恐らくできないだろうから、高速道路代、ガソリン代込みの報酬体系にして、運転手の自主判断に委ねて、実質的な運転手の手取り金額を増やす余地を作ったとの推理も、あるいは、考えられるような気がする
いずれにせよ、背景にあることは、
過当競争
と
そのなかでの
労働条件の悪化
があることは間違いな。
国民の生命を守るためには、命にかかわる業務について、必要十分な規制を設けることが必要不可欠だ。
真相究明がまずは求められるが、そのうえで、行政の責任が厳しく問われる必要がある。
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