政策逆噴射の兆候で日本経済に暗雲広がる
日本経済の先行きに再び暗雲が広がり始めている。
日本経済は深刻な不振にあえいでいる。
昨日、12月14日に発表された日銀短観2015年12月調査で、企業の業況判断が先行き大幅悪化するとの見通しが示された。
大企業製造業の業況判断DIは前回調査の12から横ばいだったが、3月に向けての見通しはプラス7へと5ポイント悪化する。
非製造業の業況判断DIは、前回調査の25から横ばいだったが、3月見通しはプラス18と7ポイント悪化する。
メディアが、ベノミクスが成功しているかのような虚偽情報を流すから、国民は真実を知ることが難しい状況にあるが、現実に日本経済は深刻な低迷を抜け出せていない。
GDP成長率の推移を見ると、全体としては、緊縮財政で日本経済を超低迷させた野田佳彦政権の時代と大差がない。
とりわけ、安倍政権が消費税増税を強行実施した2014年度には、日本経済は過去に類例を見ない転落を示した。
在庫と外需の影響を取り除いた、内需ベースの経済成長率は、年率-16%という未曽有の落ち込みを示した。
あのまま、2015年10月の消費税再増税に突き進んでいたなら、日本経済は奈落の底に転落したはずだ。
ギリギリのところで、安倍政権は消費税再増税を延期し、そこに、日本経済にとっては天佑となる原油価格急落というギフトが外から与えられて緩やかな浮上を実現できたのである。
それでも、日本経済の浮上は極めて限られている。
2015年も4-6月期の成長率はマイナスを記録した。
ゼロ近辺で超低迷を続けているというのが、日本経済の実情である。
この日本経済を立て直すには、経済政策の基本を大転換するしかない。
アベノミクスの失敗を明確に認めたうえで、新しい経済政策の基本方針を示すことが必要不可欠だ。
その路線転換を示さず、さらに2017年4月の消費税再増税に突き進むなら、日本経済は間違いなく再崩落する。
この点の確認が求められている。
日銀短観で、企業の先行き見通しが大幅に悪化した事実を軽視するべきでない。
報道で伝えられる企業の業況判断は、大企業のものだ。
大企業の業況判断は、2015年11月の段階で、
製造業がプラス12、非製造業がプラス25だ。
水準としては高いが、このような良好な業況判断が観測されているのは、大企業に限られている。
中小企業の業況判断は製造業がプラスマイナス0、非製造業がプラス5であるが、3月見通しは製造業がマイナス4、非製造業がプラスマイナス0に悪化する。
景気の先行き警戒感が強まっている最大の理由は、安倍政権の経済政策が、再び緊縮の方向に転換していることにある。
安倍政権は3.3兆円規模の2015年度補正予算を策定したが、この規模の政策では日本経済の再浮上は実現しない。
そこに、2016年に入って加わるのが、2017年度消費税再増税決定がもたらす景気抑圧効果だ。
日本経済がゼロ成長近辺で低迷するなかで、超緊縮の財政政策運営を前面に掲げれば、経済心理が一気に冷え込むのは必定だ。
現在、日本の10年国債利回りは約0.3%。
他方、東証第1部上場企業の株式益利回りは約6%である。
株式はリスクの大きな資産であるから、株式の益利回りが債券利回りよりも高いのは順当だが、その利回り格差が6%近くにまで拡大しているのは不自然である。
株式の益利回りが4%水準にまで低下する場合、これを日経平均株価で表現すると約29000円ということになる。
つまり、日本経済の先行きに対する見通しが堅調になるなら、株価水準が29000円程度にまで上昇してもおかしくはないのである。
ところが、現実の株価は20000円の壁に突き当たり、再び19000円割れの水準に低迷している。
経済の先行き見通しに対する警戒感が極度に強まっているということなのである。
12月15日の日経平均株価は18565円まで下落した。12月1日には2万円を回復したが、2週間で1500円、約8%の調整を演じたことになる。
このような局面で大事なことは、経済の心理を支えることである。
経済政策として、日本経済の改善、回復を優先する方針を明示するべきである。
財政の健全化も、経済の回復なくしては成立しえない。
経済あっての財政であって、財政あっての経済ではない。
過去何度も繰り返してきた過ちを、今回、再び繰り返すべきではない。
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