景気後退に逆戻りしてしまった日本経済
11月16日、2015年7-9月期のGDP統計が発表された。
実質経済成長率は年率換算で-0.8%のマイナス成長となった。
4-6月期に続いて2四半期連続のマイナス成長となった。
米国の定義では、2四半期連続のマイナス経済成長に陥った場合、
リセッション=景気後退
としている。
日本経済は、再び不況に戻ってしまった。
日本経済は2014年に不況に突入している。
2014年4-6月期、7-9月期にマイナス成長に陥った。
昨年10-12月期、本年1-3月期にはプラス成長を記録したが、その後の4-6月期、7-9月期が再び2四半期連続のマイナス成長に陥ったわけだ。
年率換算の経済成長率は以下のように推移している。
2014年4-6月期 -7.7%
2014年7-9月期 -1.1%
2014年10-12月期 +1.2%
2015年1-3月期 +4.6%
2015年4-6月期 -0.7%
2015年7-9月期 -0.8%
そして、2014年度の実質経済成長率は-0.9%だった。
メディアは「アベノミクス」を絶賛し続けてきたが、アベノミクスの実績は明らかに落第点なのである。
2012年11月14日は金融市場の変節点である。
この日、野田佳彦氏と安倍晋三氏による党首討論が行われた。
この日を境に金融市場が流れを変えた。
円安、株高が進行し、アベノミクスが絶賛された。
1ドル=78円、日経平均株価8664円が、半年後の2013年5月22日に1ドル=103円、日経平均株価15627円に上昇した。
この相場変動で第二次安倍政権が軌道に乗り、3年間に及ぶ長期政権に転じてしまった。
円安が進行した理由は、アベノミクスの第一の施策である金融緩和策強化が一因ではあったが、主因は米国長期金利の上昇だった。
米国10年国債利回りは2012年7月に1.38%の最低値を記録したのち、上昇トレンドに転じた。
この米金利上昇こそ、円安=ドル高進行の主因だった。
そして、為替レート変動に連動した推移を示してきた日本株価が円安に連動して跳ね上がった。
この金融変動のために第2次安倍政権の支持率が高まり、2013年7月参院選での与党勝利をもたらし、安倍独裁政治を招いてしまったのである。
アベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略を三本柱とするものだとされた。
政権発足当初は、金融緩和政策強化の方針が示されるとともに、13兆円の補正予算が編成され、この財政金融政策の発動が日本株価上昇をもたらしたとも言える。
前任の野田義彦政権が財務省主導の超緊縮財政政策を実施していたため、日本株価は理論的妥当値よりもはるかに低位に押し下げられていた。
この安くなり過ぎていた株価が財政政策スタンスの修正により、適正な水準に回帰し始めた。
このことが、株価急騰の背景であり、安倍政権はその幸運をそっくり手中に収めたのである。
しかし、財政政策の方針は2014年度に180度転覆された。
消費税大増税が強行されたのである。
その結果、日本経済は大不況に陥った。
このことが、2014年4-6月期から7-9月期の2四半期連続のマイナス成長にくっきりと表れたのである。
窮地に追い込まれた安倍政権は、2014年末に、消費税再増税延期の方針を決定した。
そこに、原油価格暴落という幸運が日本経済に提供された。
日本経済は奈落に転落することを免れて、緩やかな景気改善の道筋に入りかけた。
しかしながら、2015年4-6月期、7-9月期のGDP統計が示すように、日本経済は再び不況に逆戻りしてしまった。
安倍政権の経済政策には根本的な誤り、構造的な欠陥がある。
この欠陥を是正しない限り、日本経済の本格浮上はあり得ない。
株価は上昇したが、日本経済は浮上しない。
そのメカニズムを解明しなければならない。
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
の11月16日号を以下の内容で発行している。
「中国崩落説・FRB利上げ・国内政治の行方」
<目次>
1.【概観】アベノミクス相場始動から丸3年
2.【米国】イエレン流「利上げの作法」
3.【日本】景気が回復しない理由
4.【為替】円安の終わりの始まり
5.【株価】株価は崩落するのか
6.【中国】周小川総裁が述べたバブルの意味
7.【政局】野党連合より主権者連合
8.【原油・金】米利上げ後を思案する原油・金
9.【投資戦略】小刻みな「逆張り」「利食い」の継続の方針
ご関心のある方には、ご購読を検討いただきたく思う。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
http://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第1295号「国民の幸福追求しない政権を支持できない」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:525円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.com までお願い申し上げます。
|
安保法制の落とし穴 価格:1,512円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の奈落 (TRI REPORT CY2015) 価格:1,728円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
日本の真実 安倍政権に危うさを感じる人のための十一章 価格:1,620円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射- 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:ビジネス社 |
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う! 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:日本文芸社 |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 価格:2,100円 通常配送無料 出版社:早川書房 |
アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪 価格:1,575円 通常配送無料 出版社:講談社 |
鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ) 価格:1,470円 通常配送無料 出版社:飛鳥新社 |
金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く 価格:1,785円 通常配送無料 |
消費税増税 「乱」は終わらない 価格:1,470円 通常配送無料 |
国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る 価格:1,470円 通常配送無料 |
![]() |
消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! 価格:1,000円 通常配送無料 |
日本の再生―機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の独立 価格:1,800円 通常配送無料 |
売国者たちの末路 価格:1,680円 通常配送無料 |
知られざる真実―勾留地にて― 価格:1,890円 通常配送無料 |
消費税のカラクリ 価格:756円 通常配送無料 |
戦後史の正体 価格:1,575円 通常配送無料 |
日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 価格:798円 通常配送無料 |
![]() |
日米同盟の正体~迷走する安全保障 価格:798円 通常配送無料 |
検察崩壊 失われた正義 価格:1,365円 通常配送無料 |
検察の罠 価格:1,575円 通常配送無料 |
![]() |
「主権者」は誰か――原発事故から考える 価格:525円 通常配送無料 |
![]() |
原発のカラクリ―原子力で儲けるウラン・マフィアの正体 価格:1,680円 通常配送無料 出版社:鹿砦社 |
« 『米国が隠す日本の真実』刊行イベントの開催 | トップページ | 「いのちよりカネ」条約=TPPを絶対阻止する »
「金利・為替・株価特報」カテゴリの記事
- 政策修正に追い込まれた日銀(2023.11.02)
- ヤマ場通過した日米欧金融政策(2023.07.31)
- 世界経済軟着陸は可能か(2023.07.18)
- 東証株価指数が33年ぶり高値(2023.05.17)
- 米国雇用統計と今後の金融政策(2022.02.06)