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2015年10月30日 (金)

補償を受けられる傾斜マンション住民裏側の苦悩

三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市都筑区の高層マンションが傾いた原因が基礎工事の手抜きにあったことが発覚して大きな騒ぎになっている。


杭打ちの基礎工事を担当したのは旭化成建材で、杭が固い地盤に到達していないのに、これを放置した。


また、杭を固定するセメント投入量に関するデータにも不正があったことが明らかにされている。


現場責任者は当該企業内部の調査において、杭が固い地盤に達したとの認識を持っていると説明していると公表されているが、この供述が真実であるのかどうか、まだ判明していない。


データの不正は広範に及んでおり、波紋が広がっている。


また、旭化成建材が担当した工事で、この現場責任者ではない別の人物が担当した工事においてもデータの流用などの事実が発覚。


さらに、別の企業の工事においてもデータ流用の事例があることなどが判明しつつある。


「砂上の楼閣」


という言葉がある。


しっかりした基礎の上に立っていない建造物は価値がないことを示す言葉だが、地震の多い日本で、基礎工事に不備のある建造物は危険極まりない。


一つのマンションが傾いたために、大きな波紋が広がっている。

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旭化成広報室長の山崎真人氏は広告代理店のインタビューで


「グループ力、ブランド力の向上を図るため、「人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する」という当社グループの企業理念の訴求していくことが決まった」


と発言していた。


「人々の“いのち”と“くらし”に貢献する」


ことは貴重なことだが、高層マンションの基礎工事で、杭が固い地盤に到達していないのでは、「人々の“いのち”と“くらし”」を守ることはできない。


問題は、現場責任者が、杭が固い地盤に到達していないことを認識していながら、これを放置したのかどうか、という点である。


専門家は、杭が固い地盤に到達していないのに、到達したと認識することは考えられないとしている。


もし、杭の未到達を認識していないのに、これを放置したということになると重大である。


さらに問題は、この企業が、こうした事実の存在を認識していたのかどうか、あるいは、似たような事例が、社内で横行していたのかどうか。


そして、さらに言えば、業界全体に、現場における工事の不正、あるいは、手抜きというような事例が他にも存在するのかどうかということが問題になる。

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基礎工事などは外からは見えない。


しかし、建造物の構造上は、最重要の基幹を成す部分である。


消費者は、目に見えぬものであるだけに、売り手や作り手の「信用」を何よりも重んじる。


この意味で、企業にとっての


「信用」


は、まさに企業価値の核心をなす。


9月10日に集中豪雨で鬼怒川などが氾濫し、大きな水害被害が広がった際、旭化成のへーベルハウスが濁流にも耐えて、倒壊、流出しなかったことが絶賛された。


ところが、今回の事案では、旭化成の子会社が実施した工事で、致命的な問題を引き起こしてしまった。


企業価値、ブランドに与える影響は測り知れない。


売り手や作り手が巨大企業であり、強固な財務基盤が存在するなら、問題マンションに対する必要十分な補償も成り立つと思われる。


購入者の精神的、経済的損失は測り知れないが、高度な水準での補償は成り立ち得ると考えられる。


しかし、売り手や作り手に巨大な財務基盤がない場合には、きわめて深刻な事態が発生し得る。


今回のマンションについては、隠されていた不祥事を表面化させるとともに、購入者に対する補償がとり行われて、今後への教訓が生み出されて、一定の着地を見るのかも知れない。


しかし、この問題を発火点として広がる可能性のある問題のマグニチュードは甚大であると考えられる。


建築現場における「不正」問題が、この問題をきっかけに大きく噴出する事態も想定され、今後の動向から目を離せない。



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