景気後退に逆戻りしている日本経済の真実
8月の鉱工業生産統計が発表された。
生産指数が2ヵ月連続の低下を示した。
より重要な変化は在庫率である。
季節調整済指数で、8月の鉱工業製品在庫率指数が
119.1
に跳ね上がった。
2011年5月以来、4年半ぶりの高水準を記録したのである。
2011年5月というのは、あの東日本大震災の直後である。
最終需要が一気に冷え込んで出荷が落ち込み、売れ残りが大量発生した。
このときに記録した在庫率指数が120.3.
これ以来の高水準を記録したのである。
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
に記述したように、この短観調査結果は要注目である。
日本経済を取り巻く環境が激変しているのだ。
2012年11月から本年6月までは、経済全体の推移は比較的順調だった。
日経平均株価は8600円の水準から20800円の水準にまで上昇した。
企業の利益が増えると、滴り落ちる利益のおかげで労働者の所得も増えるという
「トリクルダウン」
効果が現れるというのは、根も葉もないガセネタだったが、企業利益だけは増大した。
背景には円安の進展があった。
円安で輸出製造業の利益が急増し、これが企業間でトリクルダウンした。
企業の利益は増えて株価は上がった。
しかし、労働者への分配はほとんど増えなかった。
他方で格差は拡大する一方であった。
したがって、大多数の一般庶民に景気回復の恩恵はほとんど回っていない。
これが2012年11月以来の日本経済である。
ところが、頼みの綱の円安傾向に変調が生じているのである。
大きな転換点になったのは、
8月11日の中国による人民元切下げ措置だった。
『金利・為替・株価特報』では8月11日執筆の8月17日号で、株式市場について、
「警戒警報」
を発令した。
「為替市場に、投機的な資本移動が大規模に発生するリスクが高まる。通貨が下落する余地のある国が投機のターゲットとされて、大規模な資本逃避=株価急落の連鎖が生まれる危険がある。グローバルな金融市場の連鎖に当面は最大の警戒を払う必要がある。」
と記述した。
これ以降、「警戒警報」を発令したままの状況が続いているが、日本経済を取り巻く環境に重大な変化が生じている点についての洞察が重要になっている。
三つの重大な問題を指摘できる。
第一は、円安傾向に重大な変化が生じていること。
第二に、世界第二位の経済規模を誇る中国経済が急減速している可能性が浮上していること。
第三は、このなかで安倍政権が消費税再増税の計画を捨てていないことだ。
『金利・為替・株価特報』に詳述したが、為替市場では重大な変化が進行中である。
「円安傾向持続」の見方が一般的であるが、現実は違う。
企業収益の拡大は、円安傾向持続に連動するものだった。
為替市場での円安基調に変調が生じることは、日本企業の収益環境に激変が生じることを意味する。
明日発表の日銀短観における製造業業況判断利の現状と先行き見通しの変化に最大の注視が必要だ。
中国経済が急減速しているなら、その影響も軽視できない。
そして、極めつけは日本の巨大増税計画だ。
消費税率10%は最終的に断念せざるを得ない。
しかし、断念するまでは、強い警戒感が残存する。
日本経済再失速リスクの浮上を十分に警戒しなければならない局面だ。
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