週末に第2のヤマ場迎えるギリシャ債務問題
ギリシャへの金融支援が合意を見なかったことでグローバルに金融市場の動揺が広がっている。
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
2015年6月29日号(6月23日執筆)
に次のように記述した。
「6月に入りギリシャのデフォルトリスクが強く意識されてきた。
6月30日にギリシャは現行の救済プログラムの失効と国際通貨基金(IMF)への返済期日を迎える。
6月25日のユーロ圏財務相会合では合意に至らず、結論を持ち越した。
本誌が発行日を迎える29日には方向が明確になっている可能性が高いが、最終段階まで決着が見通せない状況が続いている。
6月24日に日経平均株価が2000年高値を更新したのは、ギリシャ問題で合意が成立するとの楽観論が広がったためだが、その後の揺り戻しが生じている。
この問題の決着が当面の金融市場動向を決定する最重要ファクターだ。」
「ギリシャと債権団との交渉決裂の場合、金融市場は大きな混乱に見舞われる。ユーロは急落し、他のユーロ加盟国の金融市場が揺さぶられる。
グローバルに株価の大幅調整が生じると考えられる。
逆に、金融支援再開合意が成立すれば、ユーロが上昇し、グローバルに株価が上昇傾向を強めると考えられる。
正反対の金融市場の反応が生じると見込まれるから、まずは、交渉の着地を見定める必要がある。」
「双方の主張が対立したまま最終期限の6月末に近付いている様相は、チキンゲームにたとえられる。
2台の車を対面して発車させて、衝突コースから先に離脱した側を負けとするゲームだ。双方が譲らなければ衝突事故が起こる。
両者のスタンスを見るとギリシャの側の覚悟が強いように見える。
ギリシャ政府は最悪の場合には、交渉決裂、デフォルト発生をも辞さない覚悟で交渉に臨んでいる可能性がある。」
「ギリシャへの金融支援中止はギリシャ国債のデフォルト、ギリシャのユーロ離脱につながる可能性が極めて高いために、債権団の側が譲歩せざるを得ない客観情勢が存在していると見ることができる。
この客観情勢がギリシャ政府の強硬姿勢をもたらしている面があり、債権団サイドがこの点を不快に思い、交渉決裂の道を選択する可能性が生まれる。」
「金融市場では欧州金利反転上昇を背景にユーロが反発し、ドイツ株価が調整したが、ギリシャ楽観論が広がり株価が小反発した。
その後の交渉難航の影響は株価、為替には強く表れていない。金融市場は最終的には交渉成立を前提として動いているように見えるから、想定が覆された場合の反応は大きくなる。」
以上が、6月23日時点で、ギリシャ情勢について『金利・為替・株価特報』に記述した内容の一部である。
金融市場では、
ギリシャと債権団との交渉で合意が成立する
あるいは
合意が成立しなくても各種手当が施されているから大きな混乱を引き起こさない
との楽観論が支配していたが、『金利・為替・株価特報』では、合意が成立しない可能性の高さを指摘し、その場合に、かなり大きな混乱が生じる可能性を指摘した。
現実は、強調したリスクが顕在化するものになっている。
『金利・為替・株価特報』の投資戦略の節で指摘したが、
「リスクが顕在化する局面で柔軟にリスク回避体制を採ることが重要」
である。
グローバルに金融市場は連動し、ひとつの問題が他に波及する
コンテイジョン=伝染
現象は、現代金融市場の一つの特徴にもなっている。
ギリシャ問題について、グローバル強欲巨大資本側の報道は、
「ギリシャが悪い」
とするものがほとんどだが、ものごとの考察に必要なことは、多面的な思考である。
こちら側から見る状況と、あちら側から見る状況とがまったく違うことは少なくない。
ユーロの統合で最も利益を得てきたのがドイツであることは明らかである。
その利益を念頭に入れれば、ユーロという一つの統合体を維持するための、ドイツなどの負担は、その利益に対するひとつのコストなのである。
ギリシャに対して、財政再建の中身にまで口を差し挟み、政権を崩壊に追い込もうとする行為は、明らかに「内政干渉」である。
「弱肉強食」よりも「共生」を重視するチプラス政権を、グローバル強欲資本が敵視するのは十分に理解できるが、強欲資本の論理を押し通すことが、やがては、自分たちに大きなしっぺ返しをもたらすことを、強欲資本の側は十分に理解していないように見える。
この週末にかけて、ギリシャ問題は第二のヤマ場を迎える。
強欲資本の側が何らかの譲歩を迫られる可能性が徐々に拡大している点に留意が必要になるだろう。合意が成立すれば、金融市場の情勢は逆に一変する点に留意が必要だ。
続きは本日の
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