真の公約は「辺野古に基地を造らせる」だった?
沖縄県の翁長雄志知事が菅義偉官房長官と首相官邸で会談し、仲井真弘多前知事による辺野古埋め立て申請承認についての有識者委員会が
「法的な瑕疵がある」とする報告書をまとめたことについて、
「これをベースにしながら議論したい」
と伝えたと報道されている。
メディアは、翁長知事がこれを根拠に8月中にも承認を取り消す意向を示唆していると伝えるが、この報道では問題の核心はまったく伝わらない。
「辺野古に基地を造らせない」
公約を実現するためには、
国による本体工事着工を阻止することが必要不可欠である。
辺野古問題の「核心」は、国が本体工事に着工することを、翁長知事が阻止できるかどうかにかかっていると言って過言でない。
その理由は、本体工事が進捗してしまうと、法廷闘争で辺野古基地建設阻止の訴えが認められる確率が著しく低下するからである。
巨大な国費が投入されてしまい、建設が進捗してしまうと、建設を阻止する訴えについて、
「訴えに利益なし」
との裁判所判断が示される確率が高まるのである。
したがって、
「辺野古に基地を造らせない」
と叫びながら、
「辺野古に基地を造る」
ことを黙認するためには、
埋め立て申請承認の撤回または取消を、国による本体工事着工のあとまでずれ込ませることが必要になる。
国による本体工事が着手されてしまえば、その後に、
「埋め立て承認取消」
などの行動を県が示しても、
「辺野古に基地を造る」
ことは実現する可能性が著しく高くなる。
翁長知事の行動を見ると、この路線を狙っているように見える。
翁長知事が、今後、
「埋め立て承認の取消」
に進むとして、それが本当に
「辺野古に基地を造らせない」
ための行動になるかは、極めて疑わしい。
なぜなら、国が本体工事に着工する条件が整ったあとで
「埋め立て承認を取消」
しても、
「辺野古に基地を造らせない」
公約を実現することは極めて困難になるからである。
「辺野古に基地を造らせない」
の公約を実現するためには、国による本体工事着工を阻止することが絶対に必要なのである。
本来は、ボーリング調査も阻止する必要があった。
それを実現できる唯一の方策は、
早期に「埋め立て承認の撤回および取消」を実行すること
であった。
知事がこの行動を取ってしまうと、基地建設を実行するためのプロセスが進捗しないことになる。
本体工事で言えば、「事前協議」を行えないことになる。
翁長知事は7月29日、沖縄防衛局が沖縄県に提出した事前協議書について、
「今回提出のあった協議書の取り下げを求める」と、
受理した上で取り下げを要求すると発表した
と伝えられているが、質の悪いコメディとしか言いようがない。
「受理」したうえで「取り下げを求め」て、国が「取り下げ」に応じると考えているのか。
国が「取り下げない」ことを前提に、「受理した」というのが真相である。
沖縄県が「受理した」以上、沖縄県が協議に応じなくても、国は一定期間が経過すれば、必ず本体工事に入るだろう。
翁長氏の行動は、本体工事着工を、しっかりと「アシスト」するものなのである。
本体工事が着工されてしまえば、あとは、
「堂々と」基地建設反対の行動を取ることができる。
「埋め立て承認取消」
を実行する可能性も高い。
しかし、これは、
「辺野古に基地を造らせない」
ための行動にはならない。
「辺野古に基地を造らせない」という公約を守っているというアリバイを作るための行動
にしかならないだろう。
国に対しては実体として「辺野古米軍基地建設容認」の行動になるのである。
「正体」がばれなければ、国にとって「グッドジョブ」ということになるだろう。
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