実は窮地に追い込まれている安倍政権
安倍政権の進退窮まる事態が生じている。
問題は立憲主義という、日本の国家のあり方の根幹に関わる事項であり、マグニチュードが極めて大きい。
安倍晋三氏はこれまで二度、年金問題でつまづいてきた。
年金未納問題が広がった2004年。
小泉純一郎首相は、
「人生いろいろ。会社もいろいろ。社員もいろいろ」
と、主権者を愚弄する発言を示したが、直後の参院選で大敗北した。
幹事長職にあった安倍晋三氏は辞職を迫られた。
「消えた年金」問題が広がった2007年。
安倍政権は参院選で大敗し、安倍首相は首相の職を放り出した。
そして、今国会では公的年金の個人データが大量に外部流出したことが明らかにされた。
国会で政府の責任が厳しく追及されることは必定である。
このことだけでも政権に激震が走っているのだが、それよりもはるかに深刻な事態がいま生まれている。
それが憲法問題である。
安倍政権は昨年7月1日に、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。
今国会にはそれを法律案にして提出した。
しかし、この行為には重大な問題が内在している。
それは、こうした閣議決定および立法行為が、憲法違反である疑いが濃厚であることだ。
日本国憲法第99条に次の定めが置かれている。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
国務大臣、国会議員に憲法尊重擁護義務が課せられている。
この条文こそ、「立憲主義」を具現化したものである。
国政を行う権限、すなわち行政権は内閣に属する。
しかし、内閣にフリーハンドが与えられているわけではない。
国務大臣は憲法尊重、擁護義務を負うのである。
つまり、国政の基本には憲法が置かれるのであり、内閣といえども、憲法の前には従順でなければならないのだ。
これは、政治権力の暴走を防ぐための手立てである。
そして、憲法に対しても防御壁が設けられている。
憲法改定のハードルが高く設定されているのである。
憲法は国の基本であるから、この基本を大切に取扱い、政治権力が暴走して憲法を勝手に改変しないように、備えているのである。
安倍首相は当初、憲法を改定して集団的自衛権行使を容認する考えを示していた。
集団的自衛権行使容認に反対する主権者は多いが、この道筋を辿って憲法を改定し、集団的自衛権行使を容認するなら、それは許容される政治行動である。
ところが、憲法改定のハードルは高い。
そう簡単に憲法改定は実現しない。
憲法が安易に改定されないように、高いハードルが設定されたのだから、あたり前のことだ。
この意味で、憲法を守る仕組みは有効に機能していると言える。
話はここで止まるのが順当である。
安倍首相は憲法改定に向けて、必死にもがく。
しかし、主権者の賛同は、そう簡単には得られない。
これが順当な姿なのである。
この事態に、安倍晋三氏は驚くべき行動を示した。
憲法を改定せずに、憲法の内容を改定してしまう暴挙を思いつき、その方向に大暴走を始めたのである。
欲しいものが手に入らずに、道路の真ん中に大の字になって泣き叫ぶ精神的未熟児の姿を彷彿させるものである。
集団的自衛権行使について、歴代政権は憲法解釈を明確に定めてきた。
誤解の余地はない。
自国が攻撃されたときに自衛権を発動することは、最小限度認められるが、他国が攻撃されたときに自衛権を発動することは、憲法の規定により許されない、というのが唯一の憲法解釈である。
自民党が推薦して国会で意見を陳述した憲法学者も、安倍政権の立法行為を違憲であると断じた。
安倍政権は法案を撤回する以外に道はない。
撤回しない場合には、日本の主権者は、安倍首相を退陣に追い込む必要がある。
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