正義も公正もない米外交にただ隷従する安倍政権
国連本部で開かれていた5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が5月22日、「核なき世界」への道筋を決める最終文書を、米国などの反対で採決できずに閉幕した。
交渉が決裂した大きな原因は二つだ。
一つは、中東の非核化提案に対する米英の抵抗だ。
中東ではイスラエルが核を保有していると見られている。
表向きは核保有を明示していないが、イスラエルが核を保有していることは間違いないと見られている。
このイスラエルはNPTに加盟していない。
アラブ諸国がイスラエルの脅威を主張するのは当然のことである。
ところが、イスラエルを擁護する米英がイスラエルの核保有を追及しない。
そして、イスラエルを含む中東の非核化の提案に対して米英が後ろを向いているのだ。
そのために交渉が決裂した。
もう一つの理由は、非核保有国が提唱する核兵器禁止条約に対する温度差の表面化である。
「核のない世界」を構築するためには「核兵器禁止条約」が必要になるが、現在の核保有国が反対して交渉全体が決裂した。
「核のない世界」を構築するために先頭に立つべき日本は、核兵器そのものを否定できない。
日本は米国の支配下にあり、核兵器を保有する米国の意向に逆らえないからだ。
日本自身が核武装の意向を潜伏させているという事情もある。
NPT自体が究極の不平等条約である。
第二次大戦の戦勝国にのみ核保有を独占的に認める仕組みなのだ。
米ロ英仏中
の5ヵ国に核兵器保有を認めて、他の国の保有を認めない。
しかし、NPTに加盟せず、あるいは脱退して核開発を進め、核兵器保有国になった国がいくつもある。
イスラエルの核保有は公然の秘密である。
NPTの枠外で核兵器保有国になったのが、
インド、パキスタン、北朝鮮、そしてイスラエルである。
NPTで核保有を認められているのが戦勝国の米ロ英仏中の5ヵ国であり、NPTは核保有国以外の核保有を認めないという不平等条約なのである。
ところが、この制約を振り払って核保有国になった国がある。
それが、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルである。
米国はイラクが大量破壊兵器を保有している、あるいは核開発を意図しているなどとして、イラクに軍事侵攻した。
しかし、その中東でイスラエルが核開発し、核兵器保有国になっていることに対しては何の行動も取っていない。
世界の現実を知るもっとも分かりやすい事実である。
表向きの建て前、大義名分と現実がまったく違う。
そもそも、5大国だけが核兵器を独占保有して構わないという理屈は、
「正義と公正」
の基準からは生まれてこない。
要するに、現代の世界は、第二次大戦の戦勝国が戦勝の体制をそのまま維持するための仕組みなのである。
国連を日本は
「国際連合」
と表現して、日本のその重要参加国だと勘違いしているが、実情はまったく違う。
「国際連合」は
United Nations
の日本語訳であるとされているが、普通に翻訳すれば
「連合国」
である。
連合国とは第二次大戦で日独伊の枢軸国と敵対した国家連合のことなのだ。
国連憲章にはいまも「敵国条項」が残されている。
第53条と第107条だ。
敗戦後、日本はサンフランシスコ講和条約によって独立を回復した。、
サンフランシスコ講和条約は独立を回復する日本から米軍が速やかに撤退することを規定した。
ところが、この条約に但し書きが書き加えられ、その例外規定に基づいて日米安保条約が定められ、米軍は日本の敗戦から70年が経過するいまもなお、日本駐留を続けている。
そして、日米安全保障条約第6条に基づいて「日米地位協定」を定めて日本の主権を制限し続けているのである。
私たちは米国が支配する日本の現状を知らねばならない。
そして、いまの安倍政権がその米国に隷従する姿勢を貫いていることをも知らねばならない。
その上で、私たち日本の主権者は、すべての矛盾を取り払う方向に現実を変えてゆかねばならない。
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