株価上昇でも市民の生活実感は不況そのもの
4月10日、日経平均株価が一時2万円の大台に乗せた。
2012年11月14日の終値は8664円だった。
この日、野田佳彦氏と安倍晋三氏の党首討論があり、衆議院解散の判断が示された。
あれから2年半の時間が経過して、株価は2.3倍の水準に上昇した。
私が執筆している
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
では、本年2月12日執筆の2月16日号で株価見通しを「中立」から「上昇」に変更し、3月12日執筆の3月16日号で日経平均株価の目標水準を22500円と提示したから、予測通りの株価上昇が生じている。
「年末にかけての掉尾の一振」
と
「年初からの株価下落基調」
を予測し、5月12日号で、
「下落」から「上昇」への転換の予測
を提示した。
10月14日号で見通しを
「上昇」から「中立」に転換し、
この2月16日号で「上昇」に転換した。
予測通りの市場推移が続いている。
朝日新聞は株価上昇を、
「熱気なき株2万円 消費に慎重、好景気「ぴんと来ない」」
http://www.asahi.com/articles/ASH4B5HSLH4BUTIL04J.html
のタイトルで報道している。
市民に景気回復の実感はない。
株価上昇に「ぴんと来ない」と感じるのは実態に即していると言えるだろう。
それでも株価は上昇している。
その理由はどこにあるのか。
大きな理由が三つある。
第一は、2012年11月時点の株価が不当な安値であったこと。
野田政権の経済政策により、株価が不当に安い価格に抑圧されていたのである。
第二は、2012年11月以降、為替レートが大幅円安に振れたこと。
過去10年、日本の株価は為替レートに完全連動して推移してきた。
円安が株高、円高が株安をもたらしてきた。
急激な円安が進行したことで株価上昇が生じたのである。
輸出製造業の企業収益の為替感応度が高いことが大きな要因になっている。
そして、第三は、直近の株高の要因であるが、原油価格の大幅下落である。
世界的に株高が強まる現象が広がっているが、その背景として、世界的な金融緩和基調の強まりに加えて、原油価格急落の影響が大きいことを、実は無視できないのである。
『金利・為替・株価特報』2015年4月13日号には、この点についての分析も示されている。
私はこれを「原油安の配当」と表現している。
株価は基本的に企業収益動向を反映するものである。
市民に景気回復の実感がないのに、株価が上昇するのは、株価が市民の景気実感を反映するものではなく、企業収益動向を反映するものだからなのである。
現代の経済政策における最重要のテーマの一つは、間違いなく
「分配」
の問題である。
フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が
『21世紀の資本』
で分配の問題に焦点を当て、この問題が一躍脚光を浴びることになった。
私は2012年に上梓したジャーナリストの斎藤貴男氏との共著書
『消費税増税「乱」は終わらない』(同時代社)
に、経済政策の主要課題が、
「成長」と「分配」
であることを指摘している。(66ページ)
経済政策上、「分配」の問題がおろそかにされていることを批判し、「分配」問題こそ、現代経済において、経済政策が最重要視すべき問題であることを主張した。
株価が上昇すること自体は、決して悪いことであると言わないが、問題は株価が上昇しているにもかかわらず、社会の主人公である「市民」の生活が改善されていないことである。
これは、「生産」の結果として生み出される果実である「所得」の「分配」に歪みが生じているからなのである。
株価が上昇するのは「果実」の収穫が増えているからなのだが、その「果実」を「労働」と「資本」に「分配」する部分に、大きな「歪み」が発生している。
経済政策が光を当てなければならないのは、この「分配」のあり方なのである。
続きは本日の
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