辺野古阻止が本気なら会談でなく撤回・取消断行だ
琉球新報が4月2日付紙面で、菅義偉官房長官への単独インタビューの内容を掲載した。
目新しい内容は皆無である。
菅氏の主張の骨格は、
仲井真弘多前知事から得た
「埋め立て承認」
があるから、これに基づいて、辺野古米軍基地建設を粛々と進める
というものである。
安倍政権は対米隷属政権である。
米国には服従する政権なのである。
分かりやすく言えば、日本の主権者の意思と米国の命令が異なるときに、米国の命令に従う政権なのである。
「日本の主権者が第一」
ではなく、
「日本の宗主国米国の命令が第一」
の政権なのである。
「主権国家日本を代表する政府」
ではなく、
「米国の植民地日本を代表する政府」
でしかない。
菅義偉氏の発言内容がこのことを如実に示している。
沖縄県知事の翁長雄志氏が、この考えを首尾一貫して示している菅義偉氏と会談して得られるものは何もないだろう。
メディアは、翁長雄志氏と菅義偉氏との会談、翁長雄志氏と安倍晋三氏との会談を大ニュースとして報道する準備を進めているが、それは、安倍政権による米軍基地建設強行を側面援助するためのプロモーション活動に過ぎない。
何よりも注意しなければならないことは、翁長雄志氏が
「辺野古に基地を造らせない」
という公約を闇に葬る方向に、これらのイベントを利用しないように監視を強化することである。
米国の植民地政府としての側面を鮮明に示す安倍晋三政権が基準に置いているのは、日本の基本法である日本国憲法ではなく、植民地日本の基本法である日米地位協定である。
日米地位協定では、米国と日本国が合意すれば、米国が日本国内のどこでも、地元住民・地方自治体の意向にかかわらず、日本国土を米軍基地として提供させることに制限がない。
この規定は、日本が独立国ではなく、日本が米国の占領地、米国の植民地であることを意味するものである。
米国は、最終的に日本国内の民有地の強制使用もできる。
安倍政権は日本国憲法の規定に則って行動しているのではなく、日本が米国の植民地である「地位」を明示する「日米地位協定」に則って行動しているのである。
つまり、安倍政権は、沖縄県の主権者が、
「辺野古に基地を造らせない」
ことを、すべての選挙を通じて、明確に意思表示しているのに、この主権者の意思を無視して、辺野古に米軍基地を建設することを強行している。
安倍政権が依って立つ基盤は、日本国憲法ではなく、日米地位協定なのである。
その、安倍政権が、米軍基地建設を強行するうえで利用する、唯一の日本国憲法基準の拠り所が、
「沖縄県知事による埋め立て申請承認」
である。
この「埋め立て承認」は、前知事の仲井真弘多氏が出したものだ。
安倍政権はこの承認を唯一の拠り所として、主権者の意思を踏みにじる辺野古米軍基地建設を強行している。
しかし、この
「埋め立て承認」
自体が、いわば
「偽造小切手」
のような代物なのだ。
仲井真氏は2010年の知事選で、普天間の県外移設を公約として掲げて再選を果たした。
「辺野古に基地を造らない」
というのが、仲井真氏の選挙公約である。
その仲井真氏が、県民を裏切って出したのが、
「埋め立て承認」
なのである。
この経緯を菅義偉氏も安倍晋三氏も知っている。
つまり、小切手が偽造されたものと知りながら、その小切手を受け取り、小切手の権利を行使しようとしているのだ。
「辺野古に基地を造らせない」
ためにはどうすれば良いのか。
現状での選択肢はひとつしかない。
知事権限で、まず、「埋め立て承認」を「撤回する」ことだ。
知事選の結果を根拠に「埋め立て承認」を「撤回する」ことは法的解釈として可能であると専門家も断言している。
そのうえで、検証委員会の結果を受けて「埋め立て承認」を「取り消す」ことだ。
もちろん、これで「辺野古に基地を造らせない」ということが確定するわけではない。
言ってみれば、これが「辺野古に基地を造らせない」という公約を守るための出発点になる。
そこから、国とのし烈な法廷闘争が始まるのである。
埋め立て承認を「撤回」もせず、「取り消し」もしなければ、何も始まらない。
菅氏は、「埋め立て承認」がある限り、粛々と米軍基地建設を進めると明言しているのだから、これ以外に、現状では方法がない。
ここに踏み込まないということは、「翁長氏が県民を騙している」と批判されても、反論の余地がないということになる。
菅氏と会談して、菅氏の考えを変えることができるなら意味がある。
しかし、その可能性はゼロパーセントではないのか。
官房長官との会談、首相との会談、の話題を過剰に取り上げることは、
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